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コラム

豊島園在住記者を叩き起こした深夜のTBS発「らんちき騒ぎ」──Twitterトレンド席巻、住宅街に真っ赤な渋滞の異常事態騒音、混乱、大渋滞

TBSがとしまえんに芸人を拘束する番組を企画。オールナイトで入園無料にしたことから深夜に番組視聴者がとしまえん周辺に殺到し、混乱を極めた。

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混乱から一夜明け、イベント中止の案内をするとしまえん=12月27日記者撮影

 12月27日午前1時過ぎ。このくらいの時間であれば、普段は1時間に数えるほどしか車が通らない豊島園通りに、あふれんばかりの車、車、人、人、車。空転するエンジン音、笑い声、車内から漏れる音楽、時折り鳴らされるクラクションが、通り沿いに住む記者の安眠を妨害した。

 若者らしき声やエンジン音が聞こえることから、最初は暴走族か何かの集会でもあるのかと思った。しかし、窓から様子を眺めてみると、それにしては歩く人々の年代が幅広く、家の前に停まっている車も族車ではなく一般的な外装だ。

 だからといって初詣にはまだ数日早い。

 事前に、街として何か深夜イベントをするというアナウンスも特に聞いていなかった。警察なら何か知っているだろうか──治安上も良くないと思い、練馬警察署に電話を掛けたが、コール音が鳴るばかりで人が出そうな気配はなかった。

 この異常事態なら自分の他にも気付いている人はいるだろう。そう思い、Twitterを開いて検索窓に「としまえん」と入力してみると、「としまえん 行く」「#としまえん」といった検索候補が表示される。というか、既に「としまえん」がTwitterトレンドに入っていた。

「としまえん」トレンド入りの理由

 検索結果を見てみると、「水曜日のダウンタウン」というTBSのバラエティー番組がとしまえん(遊園地)に芸人を拘束し、オールナイトで入園を無料開放する企画を行っていることが分かった。

 検索で出てくるユーザー投稿の写真や動画を見ると、午前0時を回っているにもかかわらず、としまえんの広場に人が詰めかけ、自動販売機を踏み台にしたり、柵を乗り越えようとして壊したりと半暴徒化している様子だった。自動車を横転させるに至った、今年の渋谷ハロウィーンのようだとツイートする人もいた。

 芸人を見るために、静岡県や群馬県から車で来たという人も見かけた。それほど遠方でないにしても、時間的に既に終電を過ぎているため、車で来た人が多いのだろう。午前2時過ぎにGoogle Mapで交通状況を確認すると、豊島園通りは帰省ラッシュの幹線道路のような渋滞の様相を呈していた。


午前2時過ぎの豊島園付近のGoogle Mapの交通状況

 豊島園を遊園地としてしか知らない人からすれば、多少騒ぎになっても問題ないくらい商業施設が立ち並ぶ街を想像したのかもしれない。しかし実のところ、周囲にある施設といえば映画館とおもちゃショップと温泉くらいで、すぐ近くには閑静な住宅街が広がる。そんな場所に大量の車が集まればどうなるのか、おのおのもう少し想像力を働かせてほしかったと思う。

 あまりの殺到ぶりに自主的な判断を下したのか、警察から指導が入ったのかは分からないが、番組の公式Twitterアカウントは午前1時10分にイベントのいったん中止、午前2時36分にイベントの終日中止を発表した。

 結局、目視とGoogle Map上で渋滞が解消されたのは午前3時ごろ。その後もぱらぱらと人が通っては話し声が室内まで聞こえ、それも止むのは午前4時半ごろまでかかった。

 記者は問題となった番組を見たことがないので、どんな制作意図だったかは伝聞をググる程度でしか分からない。しかし、TBSの企画に乗ったとしまえんの運営は、豊島園がどんな街であるかくらいは分かっていたはずだ。

 街とともに長くある(開園は大正にまでさかのぼる)遊園地だからこそ、今回のお騒がせ企画は残念でならない。

 混乱の夜が明けて午前10時、記者がとしまえんを通り掛かると、テレビカメラが1台ある他は普段の静けさを取り戻していた。とはいえ年末らしく、西武豊島園駅からは親子が何組も降りてきて、としまえんの入り口に並んでいた。

 日中に活気付く分にはそれほど文句も出ないだろうに──そんなことを思いながら、記者は覚めない頭をもたげて電車に乗った。会社には遅刻した。

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