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2004/02/05 20:57:00 更新

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る:
第14回 「太陽系シミュレーター」協調作業を促進するファイルメーカーPro

科学的に検証された膨大なデータとシナリオ。太陽系の天体をシミュレートするソフトウェアをとりまとめたのは、ほかならぬファイルメーカーProだったのです。

 宇宙、そこは人類に残された最後の開拓地である……。2003年、5万7000年ぶりの大接近を果たした火星により、宇宙への興味は大きく高まりました。数々の困難を乗り越え、宇宙開拓を進めるためには、まずは身近な天体を知らなければなりません。そのための最適なソフトウェア+解説書、「太陽系シミュレーター」が講談社ブルーバックスから発売されています。この書籍は、Sssim Projectが制作している、太陽系空間の天体現象シミュレーションソフトウェアシリーズの最新のものです。そして、その監修・制作にあたっては、ファイルメーカーProが大活躍しているのです。

 この「太陽系シミュレーター」は、実は2代目で、初代の「太陽系シミュレーター」は「太陽系大紀行」という名称で、2000年10月に発売されました。現在の「太陽系シミュレーター」で使われているソフトウェア、太陽系大紀行2は、このデータ、システムを大幅に改訂し、WindowsだけでなくMac OS Xにも対応させたもので、2003年9月20日に発売されたばかり。


「太陽系大紀行2」の画面

 「太陽系シミュレーター」とファイルメーカーProとの関わりは、CD-ROM書籍として発売された最初のバージョンにさかのぼります。このソフトウェアは、天文学会から6人の監修者が中心となり、細かな修正を行っていきました。監修者の方々は、日本の各地にちらばっており、会合を持ちながら検討していくことは困難で、制作期間も半年と限定されています。SssimProjectのディレクター、SIHOさんは頭を抱えました。

 監修に関する議論は、メーリングリスト上で行っていくことが決まりましたが、その流量がすさまじい上に、メッセージ一通当たりのテキスト分量が非常に多く、カバーするトピックも多岐にわたります。結局、半年の期間でメッセージは1000通以上にのぼりました。これだけの分量を整理し、適確に内容へ反映させていくには「5人いても終わらないと思います」とSIHOさん。それが可能になったのは、ファイルメーカーProで管理を行ったからなのです。

 太陽系シミュレーターは、長編15本、短編約340個ものトピックから構成され、それぞれで異なったシミュレーションが行われます。つまり、355の異なるシナリオがあるようなもので、メーリングリストでの議論はこのすべてのトピックに関連する可能性があるわけです。これをフォローするのは並大抵のことではありません。あるトピックに関するコメントがあったら、「1.対応を検討→2.対応決定→3.類似箇所検索→4.担当に修正を指示→5.出来を確認→6.データ反映→7.監修に確認依頼→8.監修OK」と行いつつ、さらに全体としての整合性にも配慮しなければなりません。これをメールソフトの中だけでやっていたら、漏れは出てくるでしょうし、「言った」「言わない」の問題も出てきます。

 そこで考えた仕組みは、メッセージをファイルメーカーProに取り込み、最小単位である「コマ」別にレコード化し、そのコメント内容を入力。そのコメントに対するレス(反応)、処理の進捗状況を書き込めるようにしました。その後、この情報を、HTML形式のホームページとしてファイルメーカーProで自動生成し、ウェブに公開します。これにより、インターネットでいつでもどこでも、トピックに対するコメントの流れや作業の状態を一覧でき、管理者のみが参照するだけでなく、出張に出た監修者が世界中のどこからでも確認できるようになっています。


メーリングリストに投稿されたメッセージはファイルメーカーProでレコードとして入力され、その処理結果はHTMLに出力され、ウェブブラウザで確認することができる


ファイルメーカーから出力した、ストーリーボードや未処理箇所一覧など。毎日、メーリングリストの指示を反映しては更新された


長篇トピック「月紀行」のストーリーボード。「コマ」ごとにテキストと画像がならぶ。監修の要望からテキストの一覧性を優先し、画像は別ウインドウで開くしくみ。こういった要望に素早く対応できるのもファイルメーカーProならでは


監修向けのトピック部分の未処理一覧画面。コマは「テキスト・画像・シミュレーション映像」で構成されるため、「いずれの箇所なのか、問題点は?」など細かい指示が及ぶ。また、結論に至るまで議論が続くこともしばしば。それらを時系列で確認することができる


制作担当者側向けのすべての未処理一覧画面。半年の制作期間の中では優先順位をつけ確実に決着をつけていかないとまとまらない。制作側は常に残りの作業量を計る必要がある。担当、作業内容でソートして出力することで、各人の残作業を把握できる


上記のHTMLファイルを書き出すための大本となる、ファイルメーカーProのシステム

 このファイルメーカーProのシステムは見事にその責を果たしました。最初は監修者から「(膨大な流量なので)メールは全部を読まなくてもいいから」と言われていたが、このシステムを手に毎日作業を続け、「5人いても終わらないと思う」ような作業を無事に終えることができました。製品版と同じバージョンであるゴールドマスターが出来上がる2日前まで修正が入るくらいの、チェックに次ぐチェックだったわけですが、最終的には「監修者の方々にも満足してもらえた」とSIHOさん。

 1回目でがんばった甲斐あって、2回目(太陽系大紀行2)は内容の修正はほとんどありませんでした。衛星の数が増えたりといった新しい事実が加わったりしましたが、これはファイルメーカーProを検索して修正すればすむので、非常に簡単だったそうです。そのぶん、プログラムエンジンの修正に力を入れることができ、エンジンをActiveXからShockwave Xtraに入れ替え、対応プラットフォームを大幅に増やすことができたのです。

 ファイルメーカーProは、SIHOさんにとって武器です、とはっきり言い切ります。「ディレクターには全工程を把握しつつハンドリングすることが要求されます。しち面倒な『記憶・整理』はシステムに任せ、そこから抽出した情報から問題点を見極め、先手を打つんです」とSIHOさん。ファイルメーカーProは、そういうことを可能にするソフトなのです。

 SssimProjectでは太陽系を飛び越えて、銀河系ナビゲーターも制作中だとか。プロジェクトのさらなる飛躍を期待しましょう。


「ファイルメーカーProは、私にとって武器です」と語るSIHOさん

[松尾公也,ITmedia]

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