エプソンカラーイメージングコンテスト2002でグランプリを獲得。そして2003年の写真新世紀展(キヤノン主催)でもグランプリ受賞に輝いたアーティスト、内原恭彦氏。独学で写真を習得して4年半。内原氏の撮影スタイルは、日に数百枚の写真を毎日取り続けることだという。
デジタルだからこそ実現できたという大量撮影の継続は、まさしくデジタル写真時代の技術習得の王道といえるだろう。しかし写真は、撮影技術さえ身に付ければいいものでないことは言うまでもない。
これまでに複数のCGや写真のコンテストでグランプリを受賞してきた内原恭彦氏は、芸術の天分に恵まれたデジタルクリエーターとして各方面で認知されている。この内原氏を取材すべく、横浜市内の自宅へ押し掛けてみた。
「ちょっと散らかっててすみません。3カ月ほど、写真を撮りにタイへ行ってたもんですから……」
そう私に語りかける内原氏の部屋はほんとに散らかっていた。飾らない人柄なのだろう。氏の愛機・ニコンD100が無造作に、混沌とした作業机の上に置かれていた。付いているレンズはSIGMA COMPACT HYPERZOOM 28-200mm F3.5-5.6だった。
「いいレンズ、いろいろ欲しいんですけどね。でも高いですよね、いいレンズって。いまはとりあえずコレ1本で、とにかく数だけは撮ってます」
内原氏はもともと、ブックカバーのデザインといったCG制作を生業とするクリエーターだった。デジタルカメラとの出会いは1999年。CGのテクスチャー作りのためにコンパクトな機種を購入したのが始まり。ファーストデジカメは単焦点のCyberShotだった。
「すぐに、手放すことができない存在となりましたね。それ以前はフィルムカメラで撮ったものをスキャンして、といったこともやりましたが、デジカメの手軽さは驚異的(笑)。そして撮った結果がその場でわかる楽しさ。写真の世界にのめり込みました」
2002年にエプソンカラーイメージングコンテストでグランプリ。続く2003年の写真新世紀展(キヤノン主催)でもグランプリを獲得した内原氏は、CG制作の仕事に決別。写真一本で生きていこうと人生設計を塗り替えた。
「やっぱり賞を獲ってから、写真に対して“本気”になりました。写真以外のことはやりたくなくなってしまったというか。CyberShotを買った日から、きっと徐々にモチベーションは高まっていたと思うんです」
写真はまったくの独学。好きな写真家のひとり、森山大道氏の「とにかく量を撮れ!」ということばを実践しているだけ、と語る内原氏。現在は日に約200枚を撮影しているが、500枚撮影していた時期もあったという。
「まちを切り取ったスナップがほとんど。移動手段には電車やバスも使いますが、自転車や徒歩でということも多いです。バスは視点が高く取れるので、歩行者よりも引いた写真が撮れて楽しい」
内原氏のサイトは、日々更新される大量の写真ギャラリーがメインコンテンツであり、約200枚の作品を毎日入れ替えている(2004年2月現在。インタビュー後、サイトはリニューアルされ、数年続いていたこの形態は変わった)。
「僕は、デジタル写真とWebは切り離せない関係にあると思っています。撮った写真をすぐに自分のサイトにUPして、他者の目に触れさせることができる。個人が作品を発表する場としてWebは非常に優れています」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.