VAIOに何が起こったか――type U篇(2/3 ページ)

» 2004年05月31日 19時35分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 バイオUを見て、かつてVAIOブランドで販売していたインフォキャリーの、江戸の敵を長崎でみたいな話を以前書いたことがあるが、つまりは「もうバイオUのキーボードんとこ取っちゃったら?」というアイデアに対する回答でもあるように思えるのだ。

「キーボードレスPC=究極のマルチブラウザ」の方程式は成り立つか?

 そうなのだ。これは、PCアーキテクチャーを使った究極のマルチコンテンツブラウザであり、PCとしても使えるというのは、あくまでもサブ的要素なのだ。なんか無理矢理そう思い込もうとしているんじゃねえのとか、うすうす感付いた人もいるかもしれないが、気のせいなのだ。

 そんなマシンだから、マルチAVコンテンツ再生アプリケーションである「Do VAIO」の存在は必須である。いやむしろtype Uは、元々のバイオUの方向性に、Do VAIOの方向性を重ねたところがポイントであり、「ポータブルDo VAIO機」として捉えるべき存在なのである。

 この考え方は、これも以前書いた話につながってくる。「あなたに必要なのは『専用機化するPC』か、『PC化する専用機』か」というコラムで述べた論旨がそうなのだが、要するにパソコンを使っているといっても、AV機能ばかりを使っているユーザーにしてみれば、コンピュータ全体の能力の、ほんの一面しか使っていないことになる。あとはインターネットとメール、やったとしてもせいぜい年賀状印刷ができれば、もうだいたいの用途はOKだろう。

 画像処理もできず、ネットワークにもつながらなかった昔、もともとパソコンがやっていた作業というのは、一体なんだったっけ? と思い出してみて欲しい。もはや読者諸氏が思い出すような用途は、自腹で買うパソコンでやっていないのではないだろうか。

 クリエイターの中には、パソコンをクリエイティブツールとして使う人は沢山いる。そういう人には、拡張性に富む、ノーマルなパソコンが必要だ。だがパソコンをコンテンツビューワーとして使う一般の人には、ノーマルなパソコンである必要がもはやなくなってきている。

 むろんtype Uはその形状から、モバイルマシンとして見られて当然だろう。だがそのモバイル、すなわち出先で使う用途が、従来イメージのモバイラーのそれとは完全に違う。

 type Uのターゲットユーザーは、東京ビックサイトから原稿書いてデジカメ写真をトリミングしてWiFiで送ったりしない人たちであり、アキバの路地でWebからHDDの相場を調べたりしない人たちであり、公園のベンチで昼飯のサンドイッチに噛みつきながら「いつもお世話になっております。例のオリエンの件ですが、来週の水曜日14時に弊社会議室ではいかがでしょうか。よろしくお願いいたします。」とかオニのようなイキオイでタイプしたりしない人たちだ。

モバイルPCのステレオタイプではtype Uは語れない

専用機的操作性

 PC系レビューではほとんど黙殺に等しい扱いを受けているのが、右上の十字キーである。

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