バイオUを見て、かつてVAIOブランドで販売していたインフォキャリーの、江戸の敵を長崎でみたいな話を以前書いたことがあるが、つまりは「もうバイオUのキーボードんとこ取っちゃったら?」というアイデアに対する回答でもあるように思えるのだ。
そうなのだ。これは、PCアーキテクチャーを使った究極のマルチコンテンツブラウザであり、PCとしても使えるというのは、あくまでもサブ的要素なのだ。なんか無理矢理そう思い込もうとしているんじゃねえのとか、うすうす感付いた人もいるかもしれないが、気のせいなのだ。
そんなマシンだから、マルチAVコンテンツ再生アプリケーションである「Do VAIO」の存在は必須である。いやむしろtype Uは、元々のバイオUの方向性に、Do VAIOの方向性を重ねたところがポイントであり、「ポータブルDo VAIO機」として捉えるべき存在なのである。
この考え方は、これも以前書いた話につながってくる。「あなたに必要なのは『専用機化するPC』か、『PC化する専用機』か」というコラムで述べた論旨がそうなのだが、要するにパソコンを使っているといっても、AV機能ばかりを使っているユーザーにしてみれば、コンピュータ全体の能力の、ほんの一面しか使っていないことになる。あとはインターネットとメール、やったとしてもせいぜい年賀状印刷ができれば、もうだいたいの用途はOKだろう。
画像処理もできず、ネットワークにもつながらなかった昔、もともとパソコンがやっていた作業というのは、一体なんだったっけ? と思い出してみて欲しい。もはや読者諸氏が思い出すような用途は、自腹で買うパソコンでやっていないのではないだろうか。
クリエイターの中には、パソコンをクリエイティブツールとして使う人は沢山いる。そういう人には、拡張性に富む、ノーマルなパソコンが必要だ。だがパソコンをコンテンツビューワーとして使う一般の人には、ノーマルなパソコンである必要がもはやなくなってきている。
むろんtype Uはその形状から、モバイルマシンとして見られて当然だろう。だがそのモバイル、すなわち出先で使う用途が、従来イメージのモバイラーのそれとは完全に違う。
type Uのターゲットユーザーは、東京ビックサイトから原稿書いてデジカメ写真をトリミングしてWiFiで送ったりしない人たちであり、アキバの路地でWebからHDDの相場を調べたりしない人たちであり、公園のベンチで昼飯のサンドイッチに噛みつきながら「いつもお世話になっております。例のオリエンの件ですが、来週の水曜日14時に弊社会議室ではいかがでしょうか。よろしくお願いいたします。」とかオニのようなイキオイでタイプしたりしない人たちだ。
PC系レビューではほとんど黙殺に等しい扱いを受けているのが、右上の十字キーである。
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