キーボードにこだわる理由を考える(2/3 ページ)

» 2004年07月26日 09時39分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 筆者がキーボードデビュー?したマシンは、米国製のビデオ編集システム、今はなき米オロックス社のCMX 340xだ。筆者が使い始めたとき既に導入から数年、多くのエディタが入れ代わり立ち代わりほぼ24時間フルに叩かれ続けても、まったくへこたれなかったこのキーボードは、とてつもなく上質なものであった。

 キートップにある球状のエグレ具合が大きく、指を自然にセンターに導いてくれる。キーを押すときにはさほど力を入れなくてもスッと沈み、深めのストロークのあと、コツンと底にあたる。キーを上げるときは、指の力を抜くだけでキーが勝手に指を持ち上げてくれる。

 押すときと戻るときのバランスが、絶妙なのである。この底にある堅いものに当たる感じは、後継機種のCMX 3400xで失われてしまい、底に一枚ゴムラバーが挟まっているようなタッチになってしまったのは残念であった。

 なにせ20代そこそこで、これだけ良いキーボードを当たり前のように数年間使い続けていたので、次に使ったSONY BVE-9000のなんともお粗末なキータッチにがくぜんとしたものだ。1000万円もする編集システムのキーボードだが(そういう意味ではCMXはその3倍もするのだが)、今比較すればおそらく、1500円程度のキーボードにも劣る。ここで初めて筆者は、キーボードには、良いものと悪いものがあることを知ったのである。それ以降、筆者はキータッチに異様な執着を燃やすようになった。

 今から数年前になるが、筆者はこのCMXに似たタッチのキーボードを入手した。米DATALUXのSpace Saver Keyboard、「Model MURUW」である。なにせ省スペースを目的として作られたキーボードなので、キー配列がかなり特殊でキートップも小さいが、キーを押したときに底に当たる堅さが、かなり近い。ただそれも、他のものに比べれば一番近いというだけで、CMXのそれはもっとタッチが軽く、キートップはそれ自体にしっかりした重みのある、もっと高い部材を使っていたようだ。

レンズがゆがんでいるわけではない。奥が起きあがるように湾曲しているのだ
Enterキーが一段高くなっているなど、キーボードとしてはかなり異端

 DATALUXを購入して、一時期原稿書きに使ってみたことがある。だがそのときに感じたのは、喜びよりもむしろ「文字を入力するキーボードとコマンド実行用キーボードは方向性が違うのではないか」という疑問だ。

 文章を書くときは、さすがに母音のキーはよく使うものの、それでもアルファベット部分をほぼ全域に渡って使う。またホームポジションもあり、広範囲のキーを、指が一連のフレーズを弾く感じで動く。

 だが編集機などの専用システムの場合、文字そのものを打つわけではなく、実行コマンドのショートカットになっているキーを単発で押す、という操作が中心になる。したがってよく使うキーに偏りがあり、ホームポジションは、そのときの作業によって違う。

 また全部の指を使って流れるように操作するという感じでもない。ヘタすれば、左右の指一本でカマキリ拳法(うわ、知ってる人少ないだろうな)のように打っても、全体の作業スピードにはあまり関係がない。要するに純粋なスイッチの集合体なのである。

 CMXやDATALUXは、おそらくこのような専用システムに向いたキーボードなのだ。ショートカットキーで一つ隣のキーを打ち間違ってしまった被害は、文字のそれとは比べものにならないほどマズイ結果になる場合もある。それだけに一つ一つのキーがしっかり指先を捉え、ストロークも深め、キーギャップも広めで、1キーを間違いなく確実に押せるようになっている。

 だが文字をタイプしていて楽なキーは、この方向性とはちょっと違う。キートップが指をしっかり捉えるよりも、むしろ縦や横方向にきれいに指先を逃がしてくれるもののほうが、望ましいのではないか。

東プレの新しいキーボード?

 筆者は今までIBM enhanced 101に代表されるような、ガッシリした手応えのフルキーボードにこだわってきた。海外取材などの折はノートPCでも原稿を書くが、それはテンポラリ的な状況だと割り切っている。だが最近になって、その考え方もちょっと変わってきた。

 実は先日、偶然東プレの業務用キーボード、「キャパシティブ・コンパクトキーボード」を入手したのである。Realforceシリーズとは違い、ほとんどコンシューマーには流通しないモデルで、限定生産だという。

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