FinePixシリーズの中でもっとも「カメラらしいスタイルのカメラ」であり、「ハイエンドコンパクトらしさにあふれた」FinePix Fシリーズに新顔が登場した。「FinePix F810」(以下、F810)である。
ここでまず復習を。
富士写真フイルムのオリジナルCCDである「スーパーCCDハニカム」の特徴はいまさら繰り返すこともないと思うが、ハニカム(八角形ですな)状の画素を斜めに並べることで、CCD状の1画素の面積を大きくすると同時に、斜めに並べた画素からマトリックス状の画像を生成するため倍の解像度が得られる(ただし、縦横の解像度は高いが斜め方向は劣る)という特徴があった。
具体的にはCCD自体は300万画素だけど得られる画像サイズは600万画素相当で、ISO感度も高め、という感じだ。見た目の解像感は600万画素相当といえるほどではないが、300万画素よりはちょっとよいかなというのが正直なところだけれども、ISO感度が高いのはありがたいのだった。
それが第4世代になって「SR」と「HR」に分かれた。どちらも1/1.7インチサイズで600万画素に画素数を増やしてきたのだが、HRは単純に1画素あたりのサイズを小さくすることで高画素を目指したものであるのに対し、SRは従来のひとつの画素の中に、小さなS画素と大きなR画素の性質が異なる画素を埋め込み、両画素のデータを合体することで、ダイナミックレンジを広げるというユニークなものだった。S画素が高輝度部分を担当するのである。
そして日本で発売されているコンパクト機で、唯一スーパーCCDハニカムIV SRを搭載していたのが、2004年春に登場した「FinePix F710」(以下、F710)であり、今回のF810は高解像度版の「スーパーCCDハニカムIV HR」を搭載した機種なのである。
スーパーCCDハニカムSRの思想には非常に共鳴するが、F710/810というカメラに限っては、HRの方が向いていたように思う。
最初に比較しておこう。F710とF810の違いはどこにあるのか。基本的なユーザーインタフェースや機能に関してはまったく同じだ。違うのはCCDとそれに伴う内部のちょっとしたスペックだと思ってよい。
F710はSRだったため、実質的な画素数は300万画素相当で、内部処理によって600万画素相当の画像サイズを得ていた。このためか、どうしても600万画素と呼ぶにはディテールが甘いのは否めないのだった。
特にF710の持つワイドモードは、フィルムカメラのパノラマモードと同様に、上下をトリミングして横長にしただけの代物であるから、ただでさえ競合機種に比べて解像感は低いのに、トリミングして画像サイズを落としてしまう結果になっていたのだ。
その点F810はF710に比べるとISO感度が低いものの(F710はISO200からスタートして最高ISO1600だったのに対し、F810はISO80からのスタートで最高ISO800だ)、実質600万画素レベルで、出力解像度は1200万画素相当と非常に解像感が高いため、ワイドモードで撮っても解像感が落ちた気がしないし、ISO感度を低めに設定したおかげでノイズも少なくなっている。
実際にはISO200でも実用的な画質で撮影でき、感度を落としたことでより画質を上げられるようになったという感じだ。
また、F710/810は約32.5ミリとやや広角気味のレンズを持つ。レンズが広角であればあるほど風景などを撮ったときの情報量が増えるので、画像サイズが大きくないとディテールが甘く映る。そういう点からも、このシリーズにはF810の方が向いているのではないかと判断したのだ。
もちろんこれは一般論であり、F710の持つダイナミックレンジの広さや感度の高さは非常に魅力的だし、ISO800でこれだけノイズが少ないコンパクトデジカメは他にはない。特に大きな画像サイズを求めない人(300万画素レベルでOKという人)なら、F710の方がより幅広く楽しめるだろう。
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