第5回 温度制御ができるファンコントローラーを作ってみよう自作PCユーザーのための夏休み工作教室(1/3 ページ)

» 2004年09月03日 15時29分 公開
[小林哲雄,ITmedia]

「PWM」による回転制御

 ファンの回転を制御するのに前回は電圧を変化させる方法を使用したが、これはファンの定格を外した使い方だ。モーターのトルクが落ちるので、低回転ではファンが止まる可能性もある。さらに余計な電圧をICで吸収させているため発熱があり、あまり省電力ではない。そこで登場するのが「PWM」(Pulse Width Modulation)だ。

 大昔の電車はモーターの速度をコントロールするのにでっかい(≒大電力に耐えられる)抵抗を使っていたという。つまり、前回説明したようにモーターと抵抗を直列に接続してパワーをコントロールしていたのだ。この場合はパワーの切り替える数に限度があり、もちろん抵抗が余計な電力を消費する。

 これに対して、最近使われているのが「サイリスタチョッパ制御」やさらに発展させた「VVVF」だが……話が脱線するので詳しくは電車系のWebページを検索してもらうとして、回転制御を直流モーターでも行う方法のひとつがPWMだ。

 早い話が、モーターの手前にスイッチをつけたもの、と思ってほしい。スイッチを入れればモーターは回り、切れば惰性でしばらく回っているが、そのうち止まる。で、止まる前にもう一度スイッチを入れたらまた回転速度を上げる。このスイッチ動作を高速で繰り返し、スイッチを入れる比率を変えれば速度も変わるわけだ。これが大ざっぱなPWMの説明だ。

 スイッチを入り切りする時間をものすごく速くすれば、出力される電圧はガクガクした部分がなくなるが、モーターに対してはここまで速くするのは問題があり、手でスイッチを高速で「パチパチパチパチ」とやるぐらいの速度でよいという。

 一方、スイッチをオンにする時間とオフにしているタイミングの比は「デューティー比」と呼ばれており、デューティー比0%ならモーターは回らず、100%なら定格どおり回る。で、50%にすれば回転数が50%……とは行かないまでも中間の速度で回るだろう。この辺は市販のファンコンも同じだ。

 スイッチに相当する素子は色々あるが、今回は「FET」(Field Effect Trnsistor:電界効果トランジスター)というものを使う。FETにも色々あるが、今回使う「NチャネルMOS FET」を簡単に説明すると、ゲートという端子に正電圧をかけるとドレインからソースに電流が流れるというものだ。今回は手持ちがあったのと、オン抵抗が低い(公称14mΩ)ということで「2SK2886」(千石電商で170円)を使った。

FET「2SK2886」

 データシート(データシートのPDFファイル)を見るとモータドライブ用となっており、用途にぴったりだ。フツーのトランジスタと違うのは(ベース)電流ではなく、(ゲート)電圧で制御し、電流がほとんど流れない、ということだ。ただし、今回使用したのは簡略化した回路なので、ロスのある方法だ。

 スイッチに相当するのがFETで、スイッチを操作する手に相当するのが無安定マルチバイブレーター回路となる。今回は定番中の定番IC「NE555」(通称:ゴーゴーゴ)を使う(データシートのPDFファイル)。NE555の出力でモーターを回すにはパワーが足らないので、NE555の出力でFETをコントロールするというわけだ。今回は手持ちのCMOS版「LMC555」(データシートのPDFファイル)を使った。

↓ki_kousaku05_02.jpg,,「LMC555」 ↓l_ki_fig01.gif,,LMC555の概要

 NE555の無安定マルチバイブレーター回路の基本は図1のようになっている。コンデンサは電圧が低いとVsからRa+Rbを通じて充電され、Thresh端子が2/3Vs以上になるとDischがオンとなり、Rbを通じて放電に転じる。そしてThresh端子が1/3Vs以上になるとまたDischはオフとなり充電されるようになる。

図1■NE555による無安定マルチバイブレーター回路

 コンデンサの精度が高ければ十分安定した発振となり、そのためにはフィルムーコンデンサーを使うというのが電子回路の初歩だが、今回は精度を要求しないので小型で安い積層セラミックコンデンサを使う。

 この回路を変形するとデューティ比50%の回路ができる。出力信号にRを繋ぎ、これでCを充電する回路だと、充放電ともにRのみになる。この場合の周波数は

f=ln(2)/RC≒0.69/RC

となる。

 デューティー比の変更をどうするか考えていたのだが、これはCの出力電圧をコンパレーターに通すことで実現しよう。コンパレーターは入力の+と−の電圧の差が正ならプラス、負ならマイナスの電圧を出す回路だと思ってほしい。今回は汎用オペアンプ「LM358」を使う。

汎用オペアンプ「LM358」

 Cの出力電圧は1/3Vccから2/3Vccの間を行ったり来たりしているので、半固定抵抗と同じ抵抗値の固定抵抗でVccを分圧すれば、半固定抵抗からは1/3〜2/3Vccが取り出せる(図2)。これとCをコンパレーターに通せば可変デューティー比の出力信号が取り出せ、これをFETのゲートに加えればよい。

図2■Cの出力電圧

 あと、分かりやすいようにインジケーターもつけておこう、FETのソースとGNDの間にLED(と電流制限抵抗)をつけておけば動作確認が容易になる。ここまでの回路を一応載せておく。

回路図その1

警告温度感知型で作ろう

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