では肝心の液冷キット部分をチェックしていこう。
SAN ACE MC Liquidは、ポンプとラジエーターがセットになっていることで、ユニットの厚さが7.5センチほどに抑えられており、マザーボードの基板そのものから8センチ程度余裕がある。
マザーに搭載するパーツのうち、比較的背が高く厚みのあるものとしてはグラフィックスカードやPCI増設カード、CPUクーラーなどがある。そのうち本体はマウントの構造上、グラフィックスカードやPCIスロット部分を覆わないようになっている。メモリは4センチほどの高さであるため大丈夫、背の高いCPUクーラーのかわりにSAN ACE MC LiquidのCPUブロックを用いるため、何かのパーツと干渉するといったことはほとんどないだろう。
本体からCPUブロックまでのチューブの長さはやや短い気がする約20センチ。ただし、対応システムとして挙げられているmPGA478ないしLGA775の環境を、OWL-612-SLT/WCに載せる場合であればほぼ対応可能としている。これも専用設計ならではと言える。
今まで使用していたケース+リテールファン搭載のシステムと、OWL-612-SLT/WCに装着した場合とで、Superπの1677万桁計算直後のCPU温度を比較してみた。条件と結果は以下の通り。
テスト環境 | |
CPU | Pentium 4/2.40B GHz |
マザーボード | AOpen「MX4GER」(Intel 845GE) |
メモリ | 512Mバイト(256Mバイト×2) |
HDD | 120Gバイト×1、80Gバイト×1 |
従来使用ケース | OWL-612-SLT/WC | |
アイドリング時の温度 | 35.5度 | 35.2度 |
Superπ1677万桁計算直後の温度 | 48.0度 | 41.5度 |
テスト環境としたシステムは、熱に厳しいというほど高スペックのものではないが、高負荷時の結果はかなりの差を示した。なお計算直後からアイドリング時の温度に戻るまでの時間も、当然ながらOWL-612-SLT/WCへ装着したシステムの方が早かったことは言うまでもない。
騒音レベルは、ファン回転数1300rpm時+ポンプ2000rpm動作時で約28デシベル。リテールCPUクーラー用ファンと比べるとより体感できるが、本体のラジエータ用12センチファンはかなり静かだ。液冷システムはファン以外にもポンプ駆動音という騒音源もあるわけで、耳を近づけると確かに駆動音は聞こえる。ただし、SAN ACE MC Liquid用マウントとOWL-612-SLT/WCのかっちりとした造りによるものなのか共鳴音がないため、通常設置時にはほぼ聞こえないことだろうと思われる。
最後に気になるのはその価格だ。
アキバでの平均価格は、電源なしモデルながら5万円強となっている。ケースを多めに見積もって2万円とすると、この液冷システム一式が約3万円という計算となる。
これが高価か否かはユーザーの判断に任せるが(……といいつつもやはりちょっと高いよなぁ)、ケース背面へ出っ張りなどもなく、後付け感もまったくないほど自然に搭載されるその液冷システムは、価格を忘れてしまえば非常に魅力的であることは間違いない。
OWL-612-SLT/WCは、SAN ACE MC Liquidを搭載する現在唯一の専用ケースであり、外見ではなく内面に大きなこだわりを持つ、いわばステレオタイプの江戸っ子のような粋な製品なのである。
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