次に、南伊豆で撮影した桜の写真を見てほしい。この時は全天が薄い雲に覆われていたため、通常の設定で撮影すると、「PHOTO 4」のように背景の山が暗く、また、桜の花びらもやや青っぽく写ってしまう。
これでは桜の鮮やかさが物足りないので、やや暗めの部分を明るめに調整し、全体の青みを抑えて桜と背景の菜の花の彩度を強めたものが「PHOTO 5」の写真だ。ピンクと黄色の彩度を上げたことで、色鮮やかで濃厚な川津桜の色合いが再現できた。
しかし、ここでもう一つ加味したい要素がある。それは「季節感」だ。春といえば、暖かくてのどかなイメージがあるのではないだろうか。そこで、写真全体のコントラストをやや低くし、中間調が明るくなるように現像したのが「PHOTO 6」である。これによって明るくてほのかな、春らしいイメージに仕上げることができた。
写真とは表現である。そこに撮影者の観念や意図を吹き込むことによって、初めて作品としての質が向上する。自分が思い描く表現を手にするために、筆者はRAWモードによる撮影をお勧めしたい。
Photo:萩原俊哉
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