キャプチャーユニットはハードウェアMPEGエンコーダを搭載し、CPUに負担をかけずに録画可能。外部インタフェースにはビデオ入力、Sビデオ入力、アンテナ兼ヘッドフォン端子といった3つの入力コネクタが用意されている。
視聴用ソフトとしてTVfunSTUDIOとG-GUIDER for Windows Systemが用意されている。どちらも富士通のテレパソモデルでおなじみのもので、FMVラインアップの使い勝手を実現している。
アンテナ兼ヘッドフォン端子に添付のケーブルを介してアンテナ(Fコネクタ)を取り付ければ、鮮明なテレビ視聴が可能となる。ただし、これはアンテナ端子のある屋内での使い方。
富士通が、2005年春モデルの一番のポイント、という「モバイルテレビ」の本領を発揮するのは自宅ではなくむしろ外出先だろう。外部アンテナのないところでは標準添付の「ヘッドホンアンテナ」が活躍する。
これは1メートルほどのアンテナ付ヘッドホン延長ケーブルのようなもので、ヘッドホンユニットはその先に取り付ける。ヘッドホンユニットを付けない状態で、音声は本体スピーカーから流れるようになる。
実際に、自宅のベランダから街中を歩き回り、周囲の目を気にしつつ寒空の中検証してみたが、残念ながら屋外利用に過大な期待はしてはいけない、といわざるをえない。
というのもヘッドホンアンテナは簡易的なもので、 もちろんブースター機能などは持っていない。このアンテナでは十分な画質を維持できる入力感度は得られないだろう。
ポータブルTVやカーTVでお分かりのように、本格的なアンテナを取り付けていない状態では、どうしてもノイズまみれの表示になってしまう。検証は編集部のある赤坂、みんなの大好きな秋葉原の路上、筆者自宅のある中野のベランダ、そして気持ちのいい郊外の多摩で行ったが、いずこも画像はノイズまみれだった(音声はおおむね良好だが)。
ただ、ノイズにまみれていようと、音声も聞こえるのでそれなりに番組の進行は分かる。しかし、受信感度よりも、実は画質を考慮したツヤのあるスーパーファイン液晶パネルが「モバイルテレビ」では意外と問題になることに気が付いた。
このテカテカの液晶ディスプレイは外光のある状況ではコーティングを施していても外光に負け、日中は見づらいものになってしまうのだ。アンテナの感度を少しでも上げるために開けた場所にいくと日光で表示が見えず、日光を避けるために日陰に持ち込むと感度が落ちてノイズが増す、というジレンマに陥ってしまう。
プレスリリースでも「屋外でのテレビ視聴・録画が可能となるが、利用場所や電波受信状況により、映像や音声が乱れたり、受信できない場合があります」と書かれている。「場合があります」ということだが、少なくとも筆者の行動範囲ではすべて不適だった。
そもそもアナログTV放送は画像をAM変調で送信しているためノイズや干渉に弱い。簡易アンテナでは十分な感度が得られないためTV視聴は難しい。
モバHO!(http://www.mobaho.com/)や地デジの移動体利用のようにデジタル放送の利用も考えられているが、録画に関する問題など解消すべき問題は多いため、これらがモバイルノートで活用できるかは不透明でもある。
「モバイルノートにもテレパソ機能を」というチャレンジは評価できるが、現実問題として外出先で録画できるほどの画質は得られない。自宅で使っているテレビと同じようなことが屋外でもできる、という過大な期待はしないほうがよいだろう。
LOOX T70K/Tは「モバイルテレビ」というコンセプトで携帯重視ノートPCでは従来なかったテレパソ機能を搭載したが、実際には屋内でアンテナを接続して利用するのが現実的だ。
だが、屋内で利用すると決めてしまえば、小さな筐体でテレビを楽しめるT70K/Tの利用範囲とその楽しみかたは格段に広がる。「プラネテス」で机の片隅に置かれたPCでテレビを見るシーンに憧れてしまったあなたや、旅行や出張の多いユーザーには、とても気になる製品になるはずだ。
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