ITmedia キヤノンのデジタル一眼レフカメラ対応のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」(以下、DPP)と、PIXUS同梱の簡単印刷ソフト「Easy-PhotoPrint」(以下、EPP)によるRAWデータのダイレクトプリント機能は、プロの目にはどう映りましたか?
諏訪 DPPとEPPを組み合わせると、TIFFやJPEGといったデータに変換することなく、RAWデータをダイレクトにプリントすることが可能になります。操作も簡単ですので、RAWデータで撮影しているユーザーにとっては見逃せません。
しかも、途中にほかのアプリケーションソフトを介在させず、RAWデータをDPPからEPPに直接手渡せるため、煩雑なカラーマネジメントの設定を行う必要もありません。だから、これまでカラーマネジメントの設定が面倒だったAdobeRGBの画像でも、簡単な設定を行うだけで、カメラが捉えた広い色空間を忠実にプリントすることができます。
入力から出力まで同じ色域のまま忠実に再現できる、100%実用的なシステムと言えるでしょう。同一メーカーが入力(デジタル一眼レフ)と出力(プリンタ)の両方のデバイスを作る強みが出ていますね。
ITmedia 話は少し変わりますが、現在インクジェットプリンタは、染料インクを使ったものと顔料インクを使ったものの2タイプが主流です。一般のユーザーに対して、諏訪さんはどちらのタイプのプリンタをお勧めしますか?
諏訪 顔料と染料にそれぞれ長所・短所があるのが現状ですね。巷でもよく言われていますが、やはり顔料インクは保存性に勝り、逆に染料インクは発色の点で有利です。とは言うものの、観賞用の写真をプリントしようと考えているなら、染料インクのプリンタで出力しても良いのではないでしょうか。プリントした写真を額縁などに入れて保存しておけば、染料インクでもほとんど色褪せることがないからです。特にiP9910で新たに採用された新型インク*2であれば、かなりの長期間にわたって鑑賞し続けることができます。
ただ、これは染料インク、顔料インクともに言えることなのですが、プリント直後に額縁に入れたり、紙を何枚も重ねて放置したりすると、インクの定着が悪くなるので気をつけてください。プリント後は湿度の低い部屋で1日ほど紙を乾燥させ、インクがしっかりと定着させる必要があります。
*2 PIXUS iP9910が採用する新型インク(「BCI-7」シリーズ)と5種類の純正写真用紙(プロフェッショナルフォトペーパー/スーパーフォトペーパー/スーパーフォトペーパー・シルキー/エコノミーフォトペーパー/キヤノン光沢紙)を組み合わせることによって、アルバム保存100年、さらにプロフェッショナルフォトペーパーにおいては、フォトフレーム保存30年、室内保存10年を可能とする(各耐久年数はキヤノン測定条件によるもので、実際の保存・展示状況によっては異なる場合があります)
ITmedia 現状では、インクジェットプリンタはA4が主流ですが、いわゆる大判プリントの魅力とは何ですか?
諏訪 当然ながら、写真を大きくプリントできるという点ですね。大きくプリントできれば、それだけ写真に迫力が出て楽しさが増します。また、写真を大きく引き伸ばすと、その写真のアラも大きく見えてきますから、写真を学ぶのにも適していると思います。A3ノビで大きくプリントして、自分の写真を突き詰めていく。そのような試行錯誤ができるという点で、A3プリンタはアマチュアのカメラマンにとっても十分に役立つツールと言えるでしょう。
A3ノビで質の高いプリントをするには、できれば800万画素以上の画像データがほしいところですが、600万画素クラスのデジタル一眼レフでも十分な解像力が得られます。デジタル一眼レフを使っているのならば、ぜひiP9910を使ってA3ノビプリントの楽しさを知ってほしいですね。
諏訪光二 Kohji Suwa
1968年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科を中退後、フリーの写真家に。各種雑誌での作品発表、写真教室講師などを行う。主に自然写真をモチーフとし、銀塩・デジタル双方の作品を発表。作品展、著書多数。また、作家のオリジナルプリントを販売する「写流プロジェクト」を設立。
諏訪光二オフィシャルサイト「Kohji Suwa PhotoART Gallery」
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