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2005/05/02 09:30 更新

インタビュー
デジタルクリエイター教育におけるTabletPCの可能性──デジタルハリウッド杉山学長インタビュー

デジハリEXは、TabletPCを使ったデッサン入門講座を6月に開講する。なぜTabletPCを教材に採用したのか? クリエイティブツールとしての可能性・将来性は? 日本のデジタルクリエイター教育の先駆者であるデジタルハリウッド大学・大学院の杉山知之学長に話を伺った。

TabletPCをデッサン入門講座の教材に採用

 「学びの専門店街」をコンセプトとするデジタルハリウッド大学併設のエクステンションスクール「デジタルハリウッド大学エクステンションスクール」(以下、デジハリEX)では、バラエティに富んだ幅広いジャンルの講座をゴールデンウィーク明けより続々と開講する。

 そのうちの1つとして6月7日より全8回の構成で開講するのが、「初心者でも安心! TabletPCを使ったデッサン入門講座」(以下、デッサン入門講座)だ。デッサン入門講座は、基礎的な画力を身につけたい人や、TabletPCで絵を描くコツをマスターしたい人を対象としたもの。TabletPCの操作方法を身につけた上で、TabletPCを使って手や花、動物といった本格的なデッサン表現を学んでいくという(関連記事参照)。

 ところで、なぜデッサン入門講座の教材にTabletPCを採用したのか。デジタルデッサンを学ぶのが目的なら、通常のPC+タブレットでもよいのではないのか。TabletPCを採用した経緯やクリエイティブツールとしての可能性・将来性について、デジタルハリウッド大学・大学院の杉山知之学長に話を伺った。

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TabletPCを前にインタビューに応えるデジタルハリウッド大学・大学院の杉山知之学長


ITmedia デッサン入門講座の教材になぜTabletPCを採用されたのでしょうか。TabletPCの導入に至った経緯を教えてください。

杉山知之学長(以下、杉山) デジハリはデジタルばかりをやっていると思われがちですが、デッサンはグラフィックスの基本だということで、昔から力を入れてやってきました。もちろんTabletPCも2年半前の登場時から知っていますが、強い関心を持って見るようになったのは、ロサンゼルス在住のデッサン講師、グレン・ビリップさんの影響が大きいです。

 グレンさんはハリウッドの映画産業で働くCGクリエイターなどにデッサンを教えている方なのですが、立体がきちんと表現されているデッサンの描き方を教えるのがとてもうまい先生で、デジハリのアメリカ校で講師を務めてもらったり、授業で使う教科書を作ってもらったりしていました。グレンさんが作った教科書は翻訳・改良して日本のデジハリでも使っていましたし、講演にも年に2度ほど来てもらっていました。

 そのグレンさんが、TabletPCが出たらすぐに使い始めたのです。最初は紙と鉛筆/木炭も併用していたのですが、それがあっという間にTabletPCだけを使うようになった。そして、TabletPCはすごくいいから、これからはTabletPCでデッサンするやり方をみんなに教えたいとおっしゃるようになって。もういい年齢の方なのですが、使いこなしレベルもすごかった。それで僕らもTabletPCに興味を持って、ずっとウォッチするようになったというのが元々のきっかけです。

ITmedia グレン・ビリップ氏はTabletPCの可能性や将来性をすぐにピンと感じられたのでしょうか。

杉山 そのとおりです。それにはもっともな理由がありました。彼には自分のデッサンスタイルを後世に伝えたいという望みがあったのですが、描いた絵だけだと、どういう順番に描いていったのかというその流れは残らない。ところがTabletPCで描いた場合は、描画の過程を逐次保存することによって、そのプロセスがすべて残ります。つまり、自分のテクニックのすべてを後世に伝えることができるわけで、だからこそすごく興奮されたし、TabletPCがメインになったわけです。これはアナログには真似できない。

 また、解析的に見てもTabletPCは、これはタブレットでも同じですが、筆圧が数値として残るので、巨匠のテクニックを解析できるようになります。そういう意味でも非常に価値があると思います。

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ロビーでデジタルハリウッド大学の学生達と

デジタルとアナログの相互乗り入れがうまくできたデバイス

ITmedia デッサンをデジタルに置き換えるということだけで考えれば、通常のPC+タブレットでもいいような気がするのですが、なぜTabletPCだったのでしょうか。

杉山 TabletPCは見ている場所に直接描いていくことができるので、フィードバックがうまくかかります。だから、見る場所と描く場所が異なるタブレットよりもTabletPCの方が上手に描けます。

 デバイスがばらけないので、いろんなところに持って行ってデッサンするのに向いているというのもあります。まさにデジタルなスケッチブックですね。通常のPC+タブレットは机上でないと使えませんが、TabletPCにはそういう制約がない。

 また、これはTabletPCに限った話ではありませんが、アナログではいろんな画材を揃えないと表現できないことが、デジタルでは手軽に表現できる。マーカー60色とか、色鉛筆128色とか、いろんなタイプの筆とか、現実の世界でそれを揃えようとすると、ものすごくお金がかかります。それを考えたら、TabletPCの方が断然安いわけです。

 デジタルで絵を描けば、紙を消費したり、水を汚したりといった環境への負荷もありません。高級な絵の具ともなると、体に悪い成分が使われていることもありますし。

 だから子供達にもTabletPCを使ってほしい。それにデジタルなら、親がちょっと気をつけてあげれば、本当に小さなときからのすべての絵が残ります。アナログだと、よほど几帳面でまめな親でない限り、そうはいきません。そしてその子供が大人になったとき、自分自身が描いた絵を見ていろんなことを感じるでしょう。そういったことも含めて、TabletPCのようなPCが生活の一部として転がっている状態はすごく面白くていいなと思います。

 僕は、PCは1人1台から1人数台の時代になりつつあると思っています。ヘビーな処理をこなすためのデスクトップPCがあり、仕事や勉強などで持ち歩くノートPCがある。コミュニケーションやWeb検索に使う携帯タイプがあり、クリエイティビティや楽しみのために持つTabletPCのようなPCもある。そういうタイプの異なるPCを使いこなす時代になってきていると思います。

ITmedia 人間のクリエイティビティを開発したり発揮させるためのツールとして、TabletPCは非常にいいということなのでしょうか。

杉山 昔から僕たちは、アナログとデジタルを分ける必要はないと言ってきました。TabletPCはアナログのクリエイティビティとデジタルのクリエイティビティの相互乗り入れがとてもうまくできているデバイスだと思います。

ITmedia デッサン入門講座はどんな人に受講してもらいたいのでしょうか。

杉山 エクステンションスクールですから、いろんな方に来てほしいです。例えば、リタイアして時間ができたので絵を描く気になったという方にもぜひ来てもらいたいです。油絵でも何でもそうですが、アナログで絵を描くのは、画材を揃えたり、家の中でそれを広げたりと、実は絵を描き始めるまでの準備がとても面倒です。でもTabletPCなら、描きたいと思ったらすぐに描き始められる。

ITmedia 絵を描くことに対する敷居がぐっと低くなるわけですね。

杉山 そのとおりです。しかもそれに加え、いろんなツールを活用することで、誰もがみんなびっくりするほど上手に絵が描けます。お気に入りの作品ができたら、カラープリンタで印刷して額縁に入れて飾ったり。そうすれば自分の家が自分のアートでいっぱいになるじゃないですか。楽しいですよ。それが大切なんです。

ITmedia デジハリやデジタルハリウッド大学で行っている授業などへのTabletPCの導入についてはいかがでしょうか。

杉山 プロのクリエイター向けの授業にTabletPCをどう取り入れていくかという点に関しては、僕たちはまだ経験値が足りないと思います。TabletPCを使った授業のやり方や教え方などのノウハウをデジハリEXで積み、それがある程度貯まった段階で、デジハリやデジタルハリウッド大学でも徐々に取り入れていきたいと考えています。

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[栗田昌宜,ITmedia]

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