Intelに対抗できるか? 中国産CPU「Godson-2」(1/2 ページ)

» 2005年08月02日 19時22分 公開
[IDG Japan]
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 中国産プロセッサが、いつか世界マイクロプロセッサ市場におけるIntelの支配を脅かすことになるだろうか?

 これは最近のIn-Statの報告書をめぐる報道で提起された疑問の1つだ。この報告書は、中国のGodson-2プロセッサについて詳説し、MIPS TechnologiesのMIP命令および「R10000」のアーキテクチャとの類似に焦点を当てている。

 Godson-2は中国科学院傘下のInstitute of Computing Technology(ICT)の研究チームが開発した64ビットプロセッサ。中国語版の名前から、「Dragon」プロセッサと呼ばれることもある。Godson-2とその先行版は、中国の国産プロセッサの設計・販売に向けた取り組みの一環だ。

 ICTはGodsonの設計を担当し、販売とマーケティングはICTからスピンオフしたBLX IC Designが行う。BLXの責任者は、元Intel幹部のエディー・ゼン氏だ。

 Godsonファミリーの最初のメンバーである32ビットのGodson-1は、2002年に発表された。クロックスピードは266MHzで、受託製造業者のTaiwan Semiconductor Manufacturing Co.(TSMC)が製造にあたった。

 このファミリーの最新版Godson-2は、上海のSemiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)が製造し、400MHz版と500MHz版が提供される。いずれも180ナノメートルプロセスで製造され、ICTとBLXが「MIPSライク」と称する命令セットに基づく。

 Godson-2の量産は今年に入って始まったが、このプロセッサ自体は新しいものではない。同プロセッサに関する概要は昨年初めから出回っていたが、In-Statの報告書のリリースが西側業界誌の注目を集めるきっかけとなった。

 In-StatのMicroprocessor Report誌の上級アナリスト、トム・ハーフヒル氏が記したこの報告書は、7月25日に発表された。プレスリリースでは、「Godsonアーキテクチャは米国のMIPS TechnologiesのMIPSアーキテクチャの無許可のバージョンだ」と主張している。

 同社はこのプレスリリースの中で、Godson-2とMIPSアーキテクチャおよびR10000との類似が「知的財産の問題を引き起こす可能性がある。MIPS TechnologiesはGodsonと何のつながりもなく、Godson設計者に何の技術もライセンスしていないからだ」とまで述べている。

 これらの主張はデリケートな問題に触れている。知的財産問題は、米国と中国の間で以前から政治的な摩擦のもとになっているからだ。しかしハーフヒル氏の10ページの報告書は、Godson-2がMIPS Technologiesの知的財産を侵害しているとは主張していない。

 「Godson-2が実際にMIPSの知的財産を侵害しているのかは分からない」とハーフヒル氏は電話取材に応えて語った。

 Godson-2の主任設計者でICT教授のウェイウー・フー氏は、このプロセッサはMIPS Technologiesの知的財産を基にはしておらず、R10000のコピーではないと語る。Godson-2はMIPS Technologiesが特許を取得している技術の代わりに、別の命令を使う修正版のMIPS命令セットを採用しているという。

 Godson-2のアーキテクチャの詳細は、中国計算機学会とICTが監修する英語の学術誌Journal of Computer Science & Technologyに3月に掲載された「Microarchitecture of the Godson-2 processor」という論文で解説されている。フー氏も執筆に参加したこの論文は、Godson-2の命令セットは「MIPSライク」だとしているが、特有の洗練された機能も概説している。

 「アーキテクチャの観点から言うと、Godson-2はMIPS R10000とは全く違う」とフー氏は語り、MIPS TechnologiesはGodson-2に対して何ら知的財産の懸念を持っていないと付け加えた。

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