大成功ではない、だが敗者でもないTablet PC

» 2005年08月31日 16時21分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 3人の業界アナリストがほぼ同時に下した「Tablet PCの売上予測を大幅に引き下げる」という決定からは、次の2つの結論が導き出せるかもしれない。

1. Tablet PCは市場における真の敗者だ。決して受けることのないまずいアイデアだ。

2. このアナリストたちは売上予測を立てたときに麻薬を吸っていた。

 この結論はどちらも真ではない。Tablet PCが明らかに世間を沸かせていなくてもだ。今にして思えば、このアナリストたちは予測を立てたときに幻覚を見ていたに違いない。その原因は麻薬ではなく、Microsoftの「現実湾曲フィールド」だった可能性が高い。とは言え、賭けてもいいが、Microsoftの社内予測が社外のアナリストの予測と一致したためしはない。

 このアナリスト予測の問題は、全ノートPCにタブレット機能が搭載されるほどTablet PCが主流にならなければ、Tablet PCの売上は予測に近いところまでいかないというところにある。そのような状況にはならないだろうし、その予測が外れて驚いているのは3人のアナリストだけだと思う。

 このアナリストたちはTablet PCの誇大宣伝に巻き込まれるままに、その喧伝に大いに貢献してしまった。彼らが「自主的に」とんでもない予測を立てたことは、共謀の証拠というよりはむしろ集団ヒステリーだ。

 今、Tablet PCプラットフォームは苦しんでいる。とんでもない予測に沿えなかったからだ。アナリストたちが予測を修正したために、Tablet PCは真の敗者のように見える。だがそれは公平ではない。

 Tablet PCが大成功だったと言っているわけではない。だが、絶望的な失敗というわけでもないのだ。

 Microsoftは顧客に、Tablet PCが欲しいと思える理由を与えなかった。手書き認識は、ユーザーがタブレット型コンピュータのことを考えるときに望むものだ。彼らは自分の殴り書きをきれいなテキストに変える機能を求めている。悲しいかな、これはMicrosoftのTablet PCにはできないことだ――少なくとも、大衆が十分信頼できるツールと思えるほどにうまくはできない。もしこれができれば、アナリストの予測はある程度の意味を成したかもしれない。

 Microsoft Officeやその他アプリケーションへのタブレット機能の統合はまだあり得ることではない。そしてMicrosoftのTablet PC向けキラーアプリ「OneNote」は、莫大なハード売上をもたらさなかったようだ。

 こうした筋書きを考えると、売れ行きが鈍いことは予測されたはずだった。わたしはどのアナリストにも、予測が大きく外れた理由を聞いたことはなかった――同僚のメアリー・ジョー・フォリーを除いては。考えられる説明は2つしかない。何か不幸な災難が起き、わたしがそれを見逃したのか、あるいは予測が地球から飛び出すほど的外れだったのかだ。

 明らかに後者だと思う。このアナリストたちが最初の予測を弁護して、難を逃れようとしなければいいのだがとわたしは思っている。常識的に言って、彼らの予測が実現する可能性はない。彼らは1年前に予測を修正するべきだったのだ。

 わたしは、ユーザーがタブレット機能を求めているからという理由でTablet PCが大量に売れるとは予想していなかった。優れた手書き認識のないTablet PCは、平均的なユーザーにとってはあまり魅力がない。そして今の時点で、ほかの理由でタブレット機能が必要だと感じているユーザーの数は、巨大な市場にはならない。

 Tablet PCは「迷わず買い」なものにならなければたくさん売れないだろうというのがわたしの予想だった。今もそう予想している。「迷わず買い」になるには、(ノートPCからの)割り増し価格が50〜75ドル――多くの顧客が気づかないか、気づくとしてもたやすく納得できるレベル――に下がる必要がある。そうなりつつはあるのだが、そのペースはわたしが望むよりも緩やかだ。

 タブレットのフォームファクターには、おそらくまだやらなくてはならないことがあるだろう。今なおその購入決定には常に、高くつく機械的な故障が起きる大きな可能性が伴うようだ。

 こうした課題を解決すれば――わたしは解決されると信じている――Tablet PCは、ほとんどの人が本当に必要だと思っていなくても売れるだろう。タブレットは図や署名を描いたり、マークを付けたりするのに便利だ。特にノートPCが機能の割に安いと思える時には、50ドルの割増料金は高すぎるものではない。

 そしてプロの予言者がTablet PCの現実に気づいたからといって(彼らの発表には影響力があるものの)実際には何も変わらない。多くの人はわざわざそれを解析しないだろうし、問題は(Tablet PC)プラットフォームよりもアナリストにあると気づくだろう。

 Tablet PCは、ユーザーが購入をためらわないようになるか、Microsoftが手書き認識を十分なものにしなければ、たくさんは売れない。後者の前に前者の状況が実現し、最終的には多くの――あるいはほとんどの――ノートPCユーザーがタブレット機能のついた新しいマシンを買うようになるだろう。それまでには2〜3年かかる。

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