「気軽に高機能複合機」を実現――「Lexmark P4350」

» 2005年09月26日 18時53分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

 「Lexmark P4350」(以下、P4350)は、実売で約1万3000円〜1万5000円前後と比較的安価ながら、なかなか高機能なフォト複合機だ。メモリカードスロットと1.7インチのカラー液晶モニタを備え、デジカメ直結規格のPictBridgeにも対応する。なお、従来モデルの「Lexmark P6250」は2.5インチのカラー液晶モニタを搭載していたが、P4350では1.7インチになった。

画像

画像

 インクシステムは4色と6色の交換式だ。ヘッド一体型のCMYカラーカートリッジが常に固定となり、同じくヘッド一体型のブラックカートリッジ(4色モード)と、フォトカートリッジ(6色モード)を使い分ける。カートリッジを交換すると、液晶モニタにヘッド調整を促すメッセージが表示され、普通紙をセットして実行すると自動で完了する。

画像

 フチなし印刷にも対応し、L判からA4のサイズで全面フチなし印刷が可能だ。用紙種類と印刷品質の自動判別機能があるので、コピーやPC印刷時の設定を省力化できる。ただし、CD/DVDレーベル印刷には対応していない。

画像
本体の上部を持ち上げると、インクホルダが中央に移動してくる。右側が常に固定のCMYカラーカートリッジで、左側は4色モード用の顔料ブラックカートリッジと6色モード用のフォトカートリッジを使い分ける。フォトカートリッジの内容は、染料ブラックと低濃度シアン/マゼンタだ
画像
メモリカードスロットに直接セットできるのは、SDメモリーカード、マルチメディアカード、コンパクトフラッシュ、マイクロドライブ、スマートメディア、メモリースティック、メモリースティックPRO、xDピクチャーカードだ。MiniSDカード、メモリースティックDuo/PRO Duoは、アダプタ経由で使用する。PCと接続した場合は1つのリムーバブルドライブで認識されるため、複数のメディアを同時に使ったり、メディア間のコピーはできない
画像
ある程度まとまった枚数の用紙をセットしておかないと(特にA4普通紙)、斜めに給紙されたり紙詰まりが発生しやすい。給紙フィーダに小物が落ちるのを防ぐドロップガードは良い配慮だ
画像
原稿台の原点は右下で、原稿カバーを開けると青色に光る。イメージセンサーは光学解像度が1200×2400dpiのCISだ。入出力階調は、入力が48ビット(RGB各色16ビット)、出力が24ビット(RGB各色8ビット)。フィルムスキャンには対応していない

スタンドアロンコピーとメモリカードダイレクト印刷の機能は必要十分

 スタンドアロンのコピー機能は、多機能とまではいかないが、必要十分といってよい。カラーコピーとモノクロコピーは、それぞれのボタンで使い分ける。定型倍率/任意倍率の拡大縮小コピーと、1枚の原稿を縮小して1枚の用紙に複数割り付ける(4/9/16枚)繰り返しコピーが可能だ。

 用紙や部数の設定も、カラーの液晶モニタなので分かりやすい。4方向ボタンの上下で用紙サイズ、左右でコピー部数を設定する。拡大縮小には専用ボタンがあり、このボタンを押してから4方向ボタンの上下左右で倍率を決定する。原稿サイズ、コピー品質、用紙種類は、デフォルトでは自動設定になっているが、手動による指定も可能だ。これらの設定を手動で決め打ちすることで、はがきやL判のフチなしコピーが行える。

 液晶メニューの設定は、メニューボタンでメニューの呼び出し、4方向ボタンで項目と設定の選択、設定ボタンで決定、ストップ/クリアボタンでキャンセルだ。メニュー階層は1〜2階層なので、複雑さはまったく感じない。インク残量の確認やヘッド調整、ノズルクリーニングも可能だ。

 メモリカードダイレクト印刷の機能は、インデックス印刷、すべての写真を印刷、任意の写真を任意の枚数で印刷の3通りだ。任意印刷は、印刷したい写真を液晶モニタで確認しながら選んでいく。写真Aを1枚、写真Bを2枚、写真Cを3枚といったように、写真ごとに印刷枚数を設定できる。フチなし印刷する場合は、用紙サイズと用紙種類、印刷品質(写真設定)、写真サイズ(拡大縮小の設定で用紙サイズと同じにする)を手動で設定する。この点は少し面倒だ。

PC接続で使うときのランチャー。「Lexmarkイメージスタジオ」

 P4350をPCに接続すると、プリンタ、スキャナを単独で使えるようになる。付属ユーティリティーには、「Lexmarkイメージスタジオ」と「Lexmark AIOナビ」がある。Lexmarkイメージスタジオは、目的に応じた機能を呼び出すランチャー的なソフトだ。多くの場合、Lexmark AIOナビの各種機能を、Lexmarkイメージスタジオから起動するようになっている。

 LexmarkイメージスタジオとLexmark AIOナビは、低価格な複合機の「Lexmark X2350」とほとんど同じだ。画面や機能などは、X2350のレビューを参考にしてほしい。P4350ではLexmarkイメージスタジオのアイコンが多いが、X2350と異なるのは「メモリカード」くらいだ。「写真プリント」や「アルバムプリント」といったアイコンも、X2350のLexmarkイメージスタジオでは用意されていないが、実際に操作する画面と機能は共通である。

画像
P4350の付属ユーティリティー「Lexmarkイメージスタジオ」
画像
同じく付属ユーティリティーの「Lexmark AIOナビ」。画面左のタブで「スキャンとコピー」か「保存済み画像」を選択すると、画面右に表示される項目が変わる。「Lexmarkイメージスタジオ」の各アイコンは、対応するLexmark AIOナビの機能を直接呼び出す仕組みだ
画像
プリンタドライバの画面も、Lexmark X2350と同じだ

高画質で印刷するには工夫が必要

 4色モードで普通紙を使ったコピーや文書印刷、Web印刷なら、特に不満は感じない。評価が難しいのは、6色モードでフォト用紙を使った写真印刷だ。デフォルト設定で印刷すると、明度が高くなってイエローが強めに出るほか、人物の髪の毛といったシャドウ側でトーンジャンプが発生しやすい。フォトレタッチソフトから印刷するようにして、あらかじめ印刷画像の明度を下げて出力すると、デフォルトよりも良好な結果が得られる。付属ユーティリティからの出力やドライバデフォルト設定の出力でも、もう少し発色のバランスを調整してほしいところだ。粒状感については、普通に手に持って眺める距離なら気にならない。

 また、印刷する画像によっては、フチなし印刷で用紙の下側に横筋が発生しやすい点が気になった。その部分で色の変化が大きい画像なら目立たないが(それでも多少の横筋は見られる)、青空のような少ない色数となだらかなグラデーションの画像だと、横筋が目立ってしまう。今回使ってみた限り、用紙の厚みで横筋の発生具合が異なるようだ。厚手の用紙よりは、少し薄手の用紙のほうが横筋は発生しにくかった。

 筆者の経験談になってしまうが、レックスマークのプリンタ製品は、用紙の下側で横筋が発生する場合が多い。ただ、用紙や画像で変わるほか、製品の個体差だったこともある。ヘッド調整やクリーニングを行ったり、用紙を変えて印刷してみて、それでも横筋がひどいようなら、メーカーサポートに相談することをおすすめしたい。

印刷例

  • フォト用紙写真印刷(6色モード)
画像
コニカミノルタのインクジェット写真用紙「光沢/超厚手」(最高グレード)を使ったサンプル。明度が高く、イエローが強い。シャドウ側の階調表現が苦手なようだが、中間調からハイライトにかけてはまずまずだ
  • 普通紙Web印刷(4色モード)
画像
ドライバの印刷品質を「標準」で出力したもの。発色が若干薄いが、にじみは少なく、十分な画質だ

スキャン例

画像
反射原稿(プリント写真)のスキャン例。少し彩度が高い点を除いて、原稿色の再現性は高く、シャドウからハイライトまで階調性も優れている

動作速度

  • A4普通紙コピー(4色モード)
画像
カラーコピー、モノクロコピーとも、「標準」が常用設定だ。「高速」は色が薄すぎて、「写真」は時間が延びるわりに画質向上が少ない
  • 印刷時間
画像
印刷時間はそれほど速くない。はがきフチなし印刷の4色モードと6色モードの速度差は、印刷データで大きく変わる。今回は全面写真のデータを出力したため、カラーインク数が多い6色モードのほうが高速に印刷された。A4普通紙のWeb印刷は、ITmedia +DのトップページをInternet Explorerから1ページだけ印刷したときの時間だ
  • スキャン時間
画像
全面プレビューの時間は、プレビューを始めてCISが戻りきるまでの時間だ。PCとの接続はUSB2.0 Full-Speed(USB1.1相当)だが、高解像度スキャンでもそこそこのスピードが出ている

コストパフォーマンスのよい複合機

 冒頭でも述べたように、P4350の魅力は値段の割に多機能なことだ。印刷速度がもう少し速いとよかったが、印刷画質の潜在力はある。本体のダイレクト印刷やドライバのデフォルト色設計がいまひとつ成熟していないものの、ユーザー側の工夫で改善できる。導入コストを抑えつつ、できるだけ多機能な複合機を探している人に注目してほしい複合機だ。

 ちなみに、今回使ってみてCMYカラーインクの消費が大きいように感じたので、予備のインクカートリッジは常備しておきたいところ。近所のショップで買えればよいのだが、レックスマークのインクカートリッジはメーカー直販を利用する人が多いと思う。使用中のインクが十分に残っているうちに、注文するように心がけたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月19日 更新
最新トピックスPR

過去記事カレンダー