“タブレットPC”からペン機能を備えた“普通のノートPC”の1モデルへ──日本HPの新タブレットPC戦略を聞くインタビュー(1/3 ページ)

ピュアタブレットとしても、通常のノートPCとしても使用できる斬新なギミックで高い評価と人気を得ていた日本HPのタブレットPC。だが、新モデルの「HP Compaq tc4200 Tablet PC」ではそのギミックに別れを告げ、ある意味ポピュラーなコンバーチブル型機構を採用した。その理由は何か。日本HPのキーパーソン2名に話を聞いた。

» 2005年11月08日 10時30分 公開
[池紀彦,ITmedia]

販売対象をノートPC市場全体に広げる

 日本HPから新たに登場したタブレットPC「HP Compaq tc4200 Tablet PC」(以下、tc4200)は、コンバーチブル型機構を採用した意欲的なモデルだ。だが、同社製のタブレットPCというと、ピュアタブレット型の本体に付属のキーボードユニットを合体させるとノートPCとしても使用できるトランスフォーム型の「HP Compaq Tablet PC TC1100」(以下、TC1100)がまず頭に浮かぶユーザーも多いのではないだろうか。

 日本HPはなぜピュアタブレット型をベースにするのをやめてしまうのか。今後どのようなタブレットPC戦略を展開していくつもりなのか。日本HPモバイルビジネス本部長の挽野元氏と同モバイルビジネス本部プロダクトマネージャーの山上正彦氏に話を聞いた。


ITmedia これまで日本HPはピュアタブレット型(がベース)のタブレットPCを販売し、高い評価を得てきたわけですが、ここに来て急にコンバーチブル型のタブレットPCを発売することにしたのはなぜなのでしょうか?

ノートPC、デスクトップPC、ピュアタブレットの3つのスタイルで使用できる「HP Compaq Tablet PC TC1000/1100」は、斬新なコンセプトとギミックで高い評価と人気を得ていた

挽野元氏(以下、挽野) 私たちはTC1000、TC1100と、これまで3年間に渡ってタブレットPCを販売してきました。その過程で、お客様のニーズや市場の状況もいろいろと分かってきました。

 当初は在庫管理など、いわゆる「現場」で使うための機器としての要望があったので、それを満たすためにピュアタブレット型のTC1000/1100を開発しました。従来であれば、受発注や在庫管理用の専用端末を開発し、それに合わせてアプリケーションも別途開発する必要があったので、莫大なコストがかかっていました。そのため、専用端末の代わりに汎用製品を使用し、かつアプリケーションもWindows上で動作するものがそのまま使えれば、というのが当初のタブレットPCのお客様の中心でした。

 もちろん今でもそういったお客様からの満足度は非常に高いのですが、この分野だけでは市場規模が小さいので、売れる台数にも限りがあるのです。

ITmedia 特定業務向けの市場はそれほど小さいものなのですか?

挽野 決して小さくはありませんが、それでも一般的なノートPCの市場と比べると10分の1程度ではないでしょうか。対象がノートPC市場全体に広がると、その中に眠る潜在顧客層も増えます。これを掘り起こすことができれば、タブレットPCの市場は一気に広がります。


パーソナルシステムズ事情統括モバイルビジネス本部本部長 挽野元氏

 この3年の間に、お客様の求めるものはより幅広い使い方ができるタイプの製品へと移行してきました。タブレット機能に特化するのではなく、タブレット的な使い方もできるノートPCという位置付けの製品が求められているとの判断から開発したのがtc4200なのです。

ITmedia タブレットPCを一般的なノートPCの市場に向けて販売していこうということなのですね。しかし、一般ユーザーがタブレットPCを正しく理解しているかというと、まだまだのように感じるのですが。

挽野 それは確かに感じます。ですから逆に、「タブレットPC」という言葉を表に出さないようにするのもいいのではないかと思います。「ペン機能が使えるようになったノートPC」という新たなスタイルを提案していく、という発想ですね。実際の使い方を見てみても、さっと図画を描いたりメモを書いたりといった用途においては、ペンの方がキーボード+マウスよりも優れています。新たにペン機能が使えるようになったノートPCとして販売すれば、必ず需要はあるはずです。

ITmedia しかしそれでは、せっかくTC1000/1100で積み重ねてきたHP製タブレットPCの製品イメージを崩してしまうことにはなりませんか?

挽野 TC1000/1100はトランスフォーム型のタブレットPCなので、付属のキーボードを装着すればコンバーチブル型で使えるし、キーボードを外せばピュアタブレットとしても使用できます。しかし、お客様を見ていると、やはりキーボードを付けたまま使っている方が圧倒的に多いんですね。お客様の使い方を見てきた結果として今回のtc4200が生まれたという次第です。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年12月31日