取材する先々では、秋葉原が存続するためのビジョンも同時に聞いた。各ショップ・各店員で意見が分かれており、1つにまとめるのは難しいが、いくつかの共通するキーワードは導き出せた。
第1回で表したアンケートで、順位こそは低いながらも10人近くの人が選んだものとして「IT産業の拠点」と「サブカルチャー」がある。この2つが、ショップの考える将来の秋葉原のカギになっているように思う。
いくつかのショップは、アキバが「IT産業の拠点」になることを強く望んでいる。IT関連企業が現在よりも密集すれば、法人需要も確実に見込める。安定した収入を得つつ、個人向けの販売も今まで通り進めていけるという。都が考える「産学連携」といった計画に準じてというわけではないことは、民間実店舗当事者の声であるためと思われる。
「秋葉原駅前再開発地区が早く完成して欲しいですね。現在は工事中のビルもありますが、本格的に稼働し始めたらPCパーツショップの需要も増えると期待できます」(某ショップ)
いっぽうある程度縮小しつつも、より濃い「サブカルチャー」の1つとして残るという声だ。
アンケート結果を見たうえで某ショップは「今はアニメ関係の勢いが飛び抜けています。中央通りも少し進めばアニメ系一色。これは自然な流れで、それはよいことと思っています。アキバは昔からサブカルチャーが発展しやすい土壌があり、ニーズを敏感に察知してカラーを変えてきているからです」と話す。
ハイエンドユーザーに支持される某老舗ショップはこう語る。
「最近のように自作ブームが落ち着いたら、ある程度までショップが減ってくるのは自然なことです。ただし生き残ったショップは数10年以上続くほど色濃く残ると思います。たとえば70〜80年代にバイクブームがありましたが、次第に店舗数という意味での規模は衰退しつつも、現在でも特徴のあるとんがったバイクショップは残っています。アキバからPCパーツショップのカラーが完全に消えることはまずないし、もちろん私らもさせたくない。私は、自作PCに対するサブカルチャーという言葉は最高のほめ言葉に聞こえます」
「IT産業の拠点」としての隆盛を望む店員氏もサブカルチャーとして残っていく未来像は否定しないし、むしろ個人的にはそれを望んでいる。その課程で「IT産業の拠点」として別方向から盛り上がることを期待しているという考えであるようだ。
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