去年中国IT業界では、百度のmp3検索サービスや、音楽などがダウンロードできるP2Pソフト「酷楽」(Kuro)が訴えられるなど、インターネットを利用したコンテンツ関連の訴訟が注目された。ただし、「中国電信」「中国鉄通集団厦門分公司」といった準国営企業が関係した今回のニュースは、訴えが分散しているためか、百度のときのようにあまり目立った話題にはなっていない。
検索サービスが提訴され、音楽配信目的を主としたP2Pソフトが提訴され、今回、TV番組をダウンロードできるポータルサイトも提訴された。しかし、これらの裁判で著作権無視のコンテンツ配信サイトを一掃できるわけでない。同様の問題を抱えるポータルサイトは探せばまだあるだろうし、個人運営のWebサイトで同様のコンテンツ配信サイトも存在する。
ネットカフェも問題である。ファイルサーバにネットカフェのPC端末からブラウザ使ってアクセスし、そのサーバに保存されているコンテンツを閲覧できるネットカフェが筆者が見た限りでは少なくない。これらはローカルなネットワークで閉じているので、当局が検挙しようとしても外部から見えないところが厄介だ。
ネットカフェは中国全土にある都市のいたるところにある。違反がないか全国のすべてのネットカフェに対して抜き打ちチェックを行い、発覚した違反それぞれに対して裁判を起こそうとするには、存在するネットカフェの数が多すぎて非現実的だ。
個人レベルで取り締まろうとするならば、PCユーザーがネットからファイルをダウンロードする手段がP2PソフトであるBitTorrentに移りつつある現状を考えなければならない。CNNICによる最新の「インターネット発展状況統計報告」によると、中国で1億1000万人もいるネット利用者のうち、3000万人以上がBitTorrentの利用経験があるとリポートしている(別のリポートでは900万という数字もあるが、とにかく無視できない数である)。映画や動画などのコンテンツがBitTorrentでやりとりされる状況ならば、これに対してもコンテンツホルダーは対策をとる必要がある。
この記事で紹介したコンテンツ配信では、中国で放送されているTV番組や中国で製作された映画だけでなく、ハリウッド映画や、韓国の映画にドラマ、そして日本の映画やドラマ、そしてアニメも配信されている。
コンテンツが違法に配信されているならば、今回紹介した裁判のように、中国各都市の法律事務所を代理として立てることで日本の企業も法廷で戦えるのである。権利を侵害されていると思うなら指をくわえて傍観していることはない。
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