顧客に納期を保証するため、まず初めにエプソンダイレクトが行った主な取り組みは、製造指示の見直しや製品の組み立て作業の効率化などだという。
エプソンダイレクトのデスクトップPCは、長野県安曇野市にある工場で製造されている。受注した製品の製造指示は、従来までは1日1回のバッチ処理で行っていたのだが、それを1日に2回(前日の業務時間終了後と当日の午後)行うようにした。これによって、当日の午前中に受注した分については午後から部品搬入などの準備作業に着手できるようになり、翌日も朝一番から製造できるようになった。
また、実際の組み立て作業においては、OSインストールを短時間で行えるようにする独自システムの構築などによって、2004年12月には「3日配達保証」(一部島しょ部を除く日本全国)と、納期を明確に告知できるようになった。
もちろん、納期短縮に対する取り組みはこれで終わったわけではない。製品の組み立て作業の効率をもっと上げられるはずだと考え、さらなる効率化を目指した取り組みを行った。そこで出てきたのが、HDDにOSをインストールする作業、本体のプレ組み立て作業、マニュアルやCD-ROM、キーボード・マウスなど添付品の梱包作業を並行して行うという、作業行程の見直しだ。
受注した製品の仕様に応じて、HDDにOSや各種ドライバ類のコピーを行うのと同時に、HDD以外のパーツを使った本体の組み立てや、マニュアル類などの添付品の梱包作業を行う。そして、最終段階でそれらを一気にまとめてしまう。この方法を導入したことによって生産効率がさらに向上し、エプソンダイレクトの工場が位置する長野県中部から製品を出荷して翌日に配達可能な地域(西は中国・四国地方の一部まで、北は東北地方の一部まで)に関しては、2005年8月から「2日配達保証」を告知できるようになったのだ。
エプソンダイレクトでは、製品の受注処理から部品調達、製造、出荷など生産工程全般の管理、顧客情報管理、ユーザーサポートなど出荷後のアフターサービスまでを一括して処理・管理できる「EDCS」という独自システムを構築し、活用している。そして、このシステムこそが納期を短縮するためのキモと言ってもいい存在である。
顧客からの注文にはEDCSシステムによってそれぞれ固有の製造番号が割り振られ、顧客の個人情報や製品の仕様など受注した製品に関する全ての情報がデータベースに登録され、一括管理される。それらを一括管理することで受注から生産、物流、アフターサービスに至るまでのすべてのフェーズで同じデータを共有利用でき、どのフェーズでも迅速な対応が取れるようになっているというわけだ。
また、最も時間のかかる製造工程に関しては、さまざまな部分で自動化の工夫が取り入れられている。
製品の受注が完了すると、工場には「組み立て指示書」と呼ばれるデータが送られる。最大1億通りを超える組み合わせからなるBTO製品の組み立てはその指示書に基づいて行われるが、作業員は組み立て指示書にいちいち目を通しながら作業するのではなく、組み立て指示書のプリントアウト(製造番号など必要最小限の情報だけが印刷された名刺2枚分ぐらいの大きさのタックシール)に記されているバーコードを読み取らせながらの作業となる。
例えば、ある製品に必要なパーツを集める場合、組み立て指示書のバーコードを読み取らせると部品棚の該当パーツ部分のランプが点灯し、そのパーツのありかを的確に教えてくれる。つまり、いちいち組み立て指示書に目を通してパーツの種類を把握し、部品棚からそれを探し出す必要がないのである。エプソンダイレクトではこのシステムを「デジタルピッキングシステム」と呼んでいるが、実際の作業を見ても、バーコードを読み取らせ、ランプの光った棚のパーツを取り出すだけでよく、パーツ集めはまさに一瞬で終了してしまう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.