“Origami”命名者らが明かすUltra-Mobile PC構想CeBIT 2006(3/3 ページ)

» 2006年03月11日 20時23分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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最大の特徴はフルスペックのWindows XP端末

 発表翌日の3月10日には、Microsoft、Intel、Samsungが3社共同でUMPCに特化した発表会を開き、それぞれの期待を語った。ここでは、Microsoftモバイルプラットフォーム部門担当副社長ビル・ミッチェル氏、およびOrigamiプロジェクトのアーキテクトであるUltra Mobile PCゼネラルマネージャー、オットー・バークス氏とのインタビューと合わせて、UMPCが狙うものを探ってみる。

Microsoftモバイルプラットフォーム部門担当副社長ビル・ミッチェル氏
Microsoft Ultra Mobile PCゼネラルマネージャー、オットー・バークス氏

 MicrosoftでOrigamiプロジェクトを率いるビル・ミッチェル氏によると、UMPCはビル・ゲイツ氏が80年代初頭から抱いていた構想でもあるという。“Origami”プロジェクトとしてのスタートは、約1年半前にさかのぼる。スマートフォンやPDAとノートPCの間にあるギャップを埋められないか、と考えた。そして、同じところに市場があると考えていたIntelおよびSamsungと組み、構想を現実のものにするために取り組んだ。

 3社がそれぞれの取り組み課題としたのは、Samsungが小型化とコンシューマーエレクトロニクスのデザイン、Intelが省電力を実現するチップ設計だ。一方Microsoftは、Windows XPのフル機能は必須と考えた。ブラウザならPCと同等のフルブラウザ、メディアプレイヤーもしかりだ。これにより、PCのエクスペリエンスはそのままに、携帯性とアクセス性を改善し、さらには価格を抑える。

 同じような無線LAN機能付きのタブレットコンピュータとしては、携帯電話大手のNokiaも昨年「Nokia 770」を提供しているが、ミッチェル氏はこれに対して、「現在(Nokiaを含む)数多くのコンピュータベンダーが何らかの形でコンシューマーエレクトロニクスに進出しているが、顧客に“買いたい”と思わせる要素を考える必要がある」と答えた。

 そこで、単にフル機能のWindows XPを入れ込むだけではなく、Dial KeyboardなどをまとめたUMPC用ソフトウェアパックTouch Packを追加し、アクセス性の改善を図った。またアプリケーションも、楽しく使い勝手のあるものを揃えようと、パズルゲームの「Sudoku」やナビゲーションの「Auto Route」(米国では「Streets & Trips」)などを盛り込んだ。開発者からの関心も高く、さまざまなアプリケーションが期待できそうだという。

 3社によると、ターゲット市場は、若年層を中心とした技術に敏感な一般コンシューマーとビジネスユーザー。ビジネスでは、営業、屋外作業、病院の電子カルテなどでの利用を想定しているという。

 IntelのEMEA地区ジェネラルマネージャー、クリスチャン・モラレス氏は、「UMPCカテゴリを設けて省電力に注力する」と述べる。今回発表されたUMPCに搭載されているプロセッサは、Celeronを調整したもの。だが、同社はこの分野のニーズを満たすべく、新しいプラットフォームに取り組んでおり、Centrinoとは別に省電力・長バッテリ持続時間が特徴の小型軽量端末向けプラットフォームを開発する。来年にも登場の見込みで、現在3時間程度のバッテリ持続時間を8時間に拡大できそうだという。消費電力では、現在の5Wを今後数年で10分の1の0.5Wに削減する。

Intelは今後数年間で、消費電力を現在の5Wから0.5Wに削減する、としている

 ところで、Microsoftらが今回の3機種を第1世代と呼んでいる通り、UMPCは今後も進化する。バークス氏は今後の課題として、まずはバッテリ持続時間を挙げた。先に触れたとおり、初代UMPCのバッテリ持続時間は3.5時間程度。DVD再生時は1.8時間となり、映画を1本全部観切れない可能性もある。また、環境としては、シームレスなローミングなど通信環境の改善を挙げた。

 Microsoftの取り組みとしては、タッチパネル対応の改善などを継続しているという。また、今年後半にリリース予定の次期OS「Windows Vista」でも、これを搭載したUMPCが登場するという。そういったことから、ハードウェア/ソフトウェアが大きく改善される今年末までに第2世代のUMPCが登場すると見てよさそうだ。

 プロセッサやデバイスメーカーについては、今回のIntel、Samsung、ASUS、Founder以外にも拡大していく。日本メーカーの可能性については、ノーコメントとのことだった。

 さて、“Origami”というキーワードが浮上したのは3週間ほど前。以来、OrigamiプロジェクトのWebサイトを通じて少しずつ情報を流したことから、噂やさまざまな憶測が飛び交った。やっとそのOrigamiが姿を現したことになるが、今回のマーケティング手法についてMicrosoftに聞いてみた。

「(Microsoftは)いつも発表当日まで情報を公開しない。今回はその慣行を少し変えて事前に情報を流し、人々を驚かせたかった。うまくいったと思う」とミッチェル氏。また日本の文化である“Origami”をプロジェクトに命名した当の本人であるバークス氏は、「小型・優雅・表現力豊かを満たす端末として“haiku(俳句)”を考えていたが、これはあくまでも長期的なコンセプト。UMPCでは、小さなオブジェクトを創る“Origami”にした」と明かす。

 第1世代のフィードバックを受けて、フォームファクタやアプリケーションなどを改善していくというから、今後が楽しみだ。

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