インタビュー
» 2006年03月20日 00時00分 UPDATE

インタビュー:司令官は、あなたです──タカラトミー「秘密基地をつくろう!」開発秘話 (1/4)

「てーーーー!」。一瞬で人の心をわしづかみにし、“その世代”の妄想、そして遊び心を沸き起させた玩具メーカーによるPC周辺機器、タカラトミー「秘密基地をつくろう!」シリーズ。待ち遠しい7月22日の発売日を前に、その生みの親「秘密基地をつくろう!総司令本部」に話を聞いた。

[岩城俊介,ITmedia]

 WPC EXPO 2005時は、まだ発売が決定していなかった。これは賭けだった。

 2005年10月に開催されたPCとデジタル機器の総合展示会「WPC EXPO 2005」においてもっとも注目されたとも言われる、タカラ(当時)「秘密基地をつくろう!」。大手玩具メーカーがPC周辺機器を? というギャップによるところもあったが、存在感、遊び心、そしてその演出がなにより来場者の心を“ぐっ”とつかんだ。

 当時、じつは「秘密基地をつくろう!」シリーズ発売の正式ゴーサインは、まだ出ていなかった。「その評判をみて決める」──それが上層部から課された条件。しかし、ふたを開ければ取り越し苦労だった。かくして「秘密基地をつくろう!」シリーズは7月22日の発売が決まった(当初の6月24日発売から延期となってしまったことが判明した。残念……)。

 タカラトミー トイ事業部NEWプロダクトチーム 「秘密基地をつくろう!総司令本部」隊長の池澤寿彦氏をはじめ「秘密基地をつくろう!」チームの方らにその思い入れを聞いた。

photo タカラトミー「秘密基地をつくろう!総司令本部」。タカラトイ事業本部ニュープロダクト事業グループ主任レッドちゃん、同 池澤寿彦氏(イエロー隊長)、T2DC エレクトロニクス開発部エンジニア 下笠敏弘氏(エンジニア)、後列左から島田朋尚氏(オペレーター、コマンダー)、ガングー 代表取締役社長 向井忠氏(研究所代表)、デザイナー 大野聡氏(妄想プランナー)、T2iエンターテインメント プランナー 池辺陽一氏(陰の立て役者)、タカラトミー 生産統括室開発技術チーム主任 海上貴信氏(プログラマー)、ガングー コンテンツアドミニストレーター 篠原儀紹氏(研究所所長)

「そこに“空間”を演出したい」という思い

 まず、玩具メーカーであるタカラがなぜこのような製品群を発売することになったのか。

 「PC関連の機器は、私たち玩具メーカーの目から見ると“おもしろい”と思えるものがなくなってきました。私自身もPCを改造したり、自作したりするのが好きなのですが、それも“熱中できる”といえるほどのものではない。ならば、玩具メーカーである私らが“ならでは”の何かを提供したいと思いました。」(池澤氏、以下敬称略)

 コアターゲットは基本的に20〜30代。昔、特撮ものや戦隊アニメを観て、(プラモデルなどの)ものづくりをしながら育ってきた年代に向けて、そのような人たちにフックできるものを創りたい、「モノ」としてちゃんと楽しめるものが欲しい、ここはとくに深く追求していきたかった。

 もちろん普通に“機器”としてそろえるだけでは面白くない。とくに重要視したのが「そこに何かしらの空間も演出したい」ということだ。自分自身が楽しめる空間──そのとき、対象ターゲットとなる20〜30代男性の多くが子どものころにあこがれた「秘密基地」が浮かんだ。

photo 「秘密基地をつくろう!」のキービジュアル原画。あぁ、もう脳内で、ごごごごごと騒々しい艦内のコクピットにワープし、ぴーんぴーんといった電子警告音が鳴り響いている。「てーーーー!」とか叫びたくなる自分がいる

 「秘密基地をつくろう!」シリーズは、まず第1弾として計4種類を投入する。このラインアップに決定した経緯、そしてどのような思惑があるのか。

 「プロジェクトがスタートし、最初は本物っぽい金属製ボディにリアルなボリュームやスイッチなどをいろいろ複合させたものを考えました」

 「しかしそれでは高価になりすぎてしまうし、へんに実用的になりすぎても面白さが失せてしまいます。ある程度安価に製造できる状況に持っていっていきつつも、それは維持したい。ならば単機能に絞ってシリーズ化すればよさそう、という話になりました。そこでまず生まれたアイデアが“エマージェンシーボタン”です」

 バンダイが2005年3月下旬に発売する「コンプリートセレクション 仮面ライダー新1号 変身ベルト」(価格:3万1500円)など、高価な大人向け玩具でも徹底的にリアルさを追求したものは受け入れられる傾向ではある。しかし「秘密基地をつくろう!」が目指す方向性はやや違う。さりとて上記を例にとると3万円の玩具ではなく、当時放映されたあの変身ベルトのイメージをそのままを発売する感じとなるのだろうか。

 単体機能に特化し、いくつものモデルを用意することで、シリーズとして揃える楽しさを提供できる。またプラスチック筐体の採用により、着色などを行うことで自分なりにカスタマイズすることもできる。

 製品の方向性は決まった。同社取締役常務執行役員 眞下(ましも)氏(当時)にそれを見せた。「これはいけるなぁ」。相当“にやけて”くれたという。しかし当時は、そのデザインイラストや既案の試作モデルしか存在しなかった。次は「それを制御するソフトウェアを構築しなければ」「実際の製造はどのようにするか」が問題となった。

 「あ、ならつくりますよ」(開発技術チーム海上氏)

 「あ、じゃあ仕様や機材渡すのでやって」(池澤)

 「商品部材や製造などの部分は考えるから任せろ」(開発技術チーム下笠氏)

 チームには、そのようなときにいつもの池澤氏らの企画を聞いてくれる頼もしい仲間がいた。チーム全員が「つくっていて楽しい」と口をそろえる。楽しくないと楽しいものなど生み出せないと池澤はとくに強調する。

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