新Mac miniは誰にとって最適なマシンか?(1/3 ページ)

» 2006年03月27日 08時57分 公開
[林信行,ITmedia]

CPUの変更で今までとは別のマシンに

photo 1.5GHz Intel Core Solo Mac mini(MA205J/A)。7万4800円(Apple Store価格)

 アップルコンピュータ(以下、アップル)が2005年1月に発表した初代Mac miniは、Windowsユーザーをも購買ターゲットにして大きな話題をさらった。当時はiPodとiTunesが人気となり、多くのWindows(やLinux)ユーザーたちがMacに少なからぬ関心を持ち始めたタイミングだった。酔った勢いで買えてしまいそうな価格(5万8590円〜)でMacを出してきたアップルの戦略に、多くの人が「やられた!」と思った。おまけに正方形のお弁当箱のような愛くるしい筐体、iPodやそのほかのアップル製品に通じる継ぎめのない美しい外観――そう、Mac miniはとてつもない魅力を放っていた(製品パッケージまでが物欲をそそるようにつくられている)。

 あの衝撃的デビューから約1年後、Mac miniはインテルCPUを搭載する3番めのMacとして再デビューを果たした。愛らしいデザインや小さなサイズに変更はないが、今回の製品は1年前にデビューしたMac miniとはキャラ付けが大きく変わったような気がしてならない。改めてまっさらな目で見つめ直すと、PowerPC版のMac miniとは製品としての印象ががらりと異なるのだ。その理由はとくに価格、そしてリビングルーム向け機能の搭載による。

photophoto 本体天面(写真左)と、前面・背面(写真右)
photophoto 本体底面(写真左)と左右側面(写真右)。幅と奥行きが165.1ミリ、高さ50.8ミリのかわいらしいボディーは旧機種からそのまま引き継いでいる

インテル版Mac miniは高い?

 まず価格について考えてみよう。新Mac miniはIntel Core Solo搭載モデルで7万4800円、Intel Core Duo搭載の上位モデルで9万9800円となっている。

 「最新のIntel Coreを搭載したPC」という点で見ると、現在発表されている製品の中でも間違いなく最安値の部類に入るはずで、その点ではお買い得感が高い。だがその一方で、5万8800円だった旧Mac miniに比べれば明らかに高価だ。下位モデルの実際の価格差は1万6000円だが、心理的には2万円ほど高くなった印象がある。これまでMacを使ったことがない人も含めて気軽に買える価格帯ではなくなってしまった。

 しかし、こうした印象はまもなく覆されるかもしれない。最近になって「インテルMac上でWindows XPを動かす」方法が発見されたからだ(デュアルブートのための手順やパッチはすでに公開されている)。これにより新Mac miniはもっとも安価に手に入るIntel Coreマシンというだけでなく、(正式にサポートを受けられる使い方ではないが)1台でWindows XPとMac OS Xの両OSを楽しめる「1粒で2度おいしい」マシンとしての魅力を得た。

Mac mini新旧価格表
上位モデル MA206J/A(Intel Core Duo 1.66GHz) 9万9800円
M9971J/B(PowerPC 1.42GHz/SuperDrive) 8万1800円
M9687J/B(PowerPC 1.42GHz/ComboDrive) 6万9800円
下位モデル MA205J/A(Intel Core Solo 1.50GHz) 7万4800円
M9686J/B(PowerPC 1.25GHz) 5万8800円

Mac miniはリビングルーム向けなのか?

 新しいMac miniは、よく「リビングルーム・パソコン」というコンテクストで語られる。実際、アップル自身も同製品を発表したアメリカでのスペシャルイベントでは、リビングルームのセットを用意してMac miniをデモしている。

 旧Mac miniは置き場所に困らないサイズやインテリアになじみやすい外観から、リビングルームの大画面TVにつないで使うユーザーが多かった。そして新Mac miniではこの動きを助長するようにApple Remote(リモコン)とFront Row(10フィートUI)が搭載され、リビングルーム向けPCにますますふさわしくなっている。

 ただし、TVに接続する場合はDVI-IかアナログRGBの端子を利用する。最近のいわゆる“テレパソ”ではHDMI端子が広まる気配があるが、残念ながらMac miniにHDMI端子はない。もっとも、現行のHDMI端子の是非は意見が分かれるところだ。プレイステーション 3の発売延期を発表したソニー・コンピュータエンタテインメント取締役社長兼グループCEOの久夛良木健氏が、「(現在のHDMIは)RGB各色8ビットしか分解能がない」「フルHDといわれる1080pにも対応していない」と問題提起し、PS3の登場までに新しいHDMI規格を広めたいという意向を述べている。

 もう1つ、Mac miniはスピーカーを内蔵するものの、これはとりあえず鳴るというだけのシロモノだ。リビングの大画面TVにつなげて使うのであれば、音声出力もTVの脇のサラウンドスピーカーにつなげたいと感じるだろう。ちなみに新Mac miniでは、スピーカーなどにデジタル接続できるように光デジタル音声出力端子がついた。実はこの端子、1つで光デジタル音声出力にもヘッドフォン出力にも対応している(その隣にはライン入力/光デジタル音声入力両対応の音声入力端子も加わった)。

新Mac mini(上)と旧Mac mini(下)の背面インタフェース。新しいMac miniは背面のポート類が大きく変更された。USBポートが4つに増え(これまでは2つ)、オーディオ入出力は光デジタル音声入出力にも対応した。また、内蔵FAXモデムがなくなった(オプションで外付け品を用意)半面、ネットワークポートはギガビットLANをサポートしている。無線LANとBluetooth 2.0+EDRも標準搭載した。

 ただTVやサラウンドシステムに接続できるだけではない。先に述べたように、新Mac miniではリビングで楽しむための重要な機能が追加された。それがApple RemoteとFront Rowだ。

 Front RowではDVDの視聴はもちろん、iTunesに登録された音楽や音楽ビデオ、Movieフォルダに入れた映像、さらにはiPhotoに登録された写真も楽しむことができる。そして、新Mac miniにあわせてアップデートされた新しいFront Rowでは、さらにネットワーク接続されたほかのMacに入っている音楽や写真、映像も楽しめるようになった。

 Apple Remoteの「MENU」ボタンを押すと「ボン」と心地よい和音がなって、Macのデスクトップ画面がスーっと画面の奥にフェードアウトしていき、その代わりにFront Rowの操作画面が現れる。こうした映像効果の演出は素晴らしく、どこかコンピュータの無骨さを残したこれまでのリビングルーム向けPCとは本質的に異なる。ゲーム機に近いとも言えるかもしれないが、何か感性に響くものを感じる。

Apple Remoteを押すと、Macのデスクトップ画面がフェードアウトしてメディアブラウザのFront Rowが現れる。「共用されている音楽」を選べば同じネットワーク上のほかのMac/Windows機のiTunesに登録された音楽を再生できる。

 これらの演出はビデオチップの性能をフルに生かすMac OS Xの「CoreVideo」機能のおかげだろう。こうしたハードとOSの両方からのチューニングがなされているのはアップルならではだ。

 1つ残念なのはLAN上にあるPCがWindowsマシンの場合、iTunesに登録された音楽と映像は楽しめるが、それ以外のデジタルコンテンツは標準では再生できない点だ。アップルがWindowsユーザーもMac mini購入のターゲットと考えているなら、ぜひともこのあたりはなんとかして欲しいところだ。Windows XP Media Center Editionとの連携を計らないまでも、共有フォルダ内の写真や映像くらいは映し出して欲しい。

 もっとも、Mac mini製品マーケティング担当者にインタビューしたところ、「Mac miniはあくまでもデスクトップPC」ということなので、“リビングPC”を大々的に打ち出しているわけではないようだ。

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