Windows Vistaで大幅強化されたセキュリティとモバイルパフォーマンスWinHEC 2006(2/2 ページ)

» 2006年05月30日 15時53分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]
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パフォーマンス向上と省電力に貢献する「ReadyDrive」

 Windows Vista以降の大きなトレンドの1つとなりそうなのが、ディスクアクセスにおけるフラッシュメモリの活用だ。フラッシュメモリには情報書き換え回数の制限や大容量化の難しさ、高い価格といった問題はあるものの、モーター駆動のHDDに比べて省電力でより高速なアクセスが可能という特徴がある。MicrosoftやIntelでは、PCのさらなる高速化やノートPCでのバッテリ駆動時間向上のために、フラッシュメモリをキャッシュ的に動作させて既存のHDDと併用することで両者のメリットを引き出そうとしている。Intelは「Robson」と呼ばれるフラッシュメモリを実装したモジュールでノートPCの高速起動実現を目指し、Microsoftは「ReadyDrive」という機構でそれを可能にしようとしている。

 ReadyDriveによってサポートされるのが、フラッシュメモリとHDDを組み合わせたハイブリッドHDDだ。ハイブリッドHDDのリリースを表明しているのはSamsungとシーゲイトで、SamsungはそのプロトタイプをWinHEC 2006に参考出展している。WinHECの基調講演でもReadyDriveとハイブリッドHDDを使ったデモが公開され、通常のHDDとReadyDriveでOfficeアプリケーションなどによる処理スピードが比較されたが、結果は倍以上違いが出るなどその差は歴然であった。また、HDDのシーク動作などによってPC内部で一定以上の電力が消費される状況を示したデモも紹介され、ReadyDriveでHDDの動作に使われる過剰な電力消費を減らすことで、デスクトップPC全体の電力消費削減はもちろん、とくにノートPCでのバッテリー駆動時間の向上に役立つことが示されている。

 MicrosoftとIntelでアプローチは若干異なるものの、目指す方向性はほぼ一緒だ。RobsonがWindows Vistaリリースのタイミングでサポートされるかは不明だが、ReadyDriveはWindows Vista標準機能となるため、ハイブリッドHDDを持つユーザーには大きなメリットとなる。Windows Vista時代のPCを選ぶ1つの指標となるだろう。

標準的なHDDとハイブリッドHDDで、Officeアプリケーションを用いたベンチマークによるパフォーマンス比較を行ったところ。標準HDDの1つめのテストが終了するより先に、ハイブリッドHDDのすべてのテストが完了している

HDDでの消費電力の推移を計測する。シーク動作や読み書きなど、HDDで一定以上の電力消費があった場合に、画面下方に赤いバーでその状況を記録する。この赤いバーが表示されている部分が電力消費が大きくなり、PCの動作が重くなる部分となる。つまり、ハイブリッドHDDを導入することで、この部分の時間を短縮することが可能になる

ネットワーク経由でプラグ&プレイを実現する「Windows Rally」

 ネットワーク機能の強化もWindows Vistaの課題の1つとなっている。デスクトップPC、ノートPC、UMPC(Ultra Mobile PC)、PDA、携帯電話、プリンタやデジカメなどの周辺機器、ルータやアクセスポントなどのネットワーク機器など、PCネットワークを構成する要素はさまざまあるが、これらをシームレスに接続していこうというのがMicrosoftの考えだ。同社では、これら機器を互いに接続するのを簡易化し、より自然にネットワークを利用できる環境を実現する技術として「Windows Rally」という仕組みを提唱している。

 Microsoftによれば、Windows Rallyは「PCからデバイス、またはデバイスからデバイスの間で安全なデータ転送をインターネットの技術によって標準化するもの」と定義されている。ハードウェアメーカーはWindows Rallyをサポートすることで、個々のデバイス接続ごとに専用の設定ファイルやプログラムを書くことなく、より低コストでネットワーク機能のサポートが得られるようだ。Windows RallyはWindows Vistaの一部であるため、この年末以降に登場する周辺機器は同機能をサポートしてくるケースが増えてくるだろう。これにより、2007年にはPCや周辺機器間でデータ交換を行うための標準技術となっている可能性が高い。

 Windows Rallyは、イーサネットやWiFiなどのネットワーク規格とPCや周辺機器上で動作するアプリケーションの中継ぎをするプロトコル群で構成されている。これらのプロトコルでは、ネットワークの探索や通信設定/制御などの機能を持っているのでインターネットプロトコルで接続された各種デバイスとのデータ通信や制御を行える。また、ネットワークに接続されたデバイスがUPnPやWeb Services for Devices(WSD)に対応していた場合、「Plug and Play Extensions」(PnP-X)という拡張機能を使うことでPC上にプラグ&プレイ対応デバイスとしてインストールできる。UPnPやWSDを使って有線もしくは無線のLANで接続されたこれらの機器は、通常のUSB接続機器のようにエクスプローラ上からフォルダの内容やプロパティを確認できるようになる。

 これらデバイスの接続の前に、まず「Link Layer Topology Discovery」(LLTD)と呼ばれるプロトコルを用いてネットワーク上の探査が行われる。LLTDはWindows Vistaではデフォルトで有効になっているので、常にネットワーク上にあるデバイスの位置情報(IPアドレスやMACアドレスを含む)やプロファイルなどを把握し接続可能なデバイスであるか検証を行っている。これらの情報は、逐次Windows Vistaの「Network Map」アプレット上から確認できる。Network Mapに出現したデバイスは、各種の認証手段を経て上記のようにプラグ&プレイ機器としてPCに接続する。また、ストレージ機器や音声通話/出力機器、TVキャプチャー機器などをWindows Rally経由で接続した場合、その接続帯域をどの程度確保できて安定した通信をいかにして行うかが問題になる。こうしたケースに対応するため、ネットワーク越しのプラグ&プレイ通信での帯域制御を行う「QoS Extensions」が定義されている。

Windows Rallyを利用したネットワークの管理。有線無線にかかわらず、ネットワーク上のデバイスを探索して、ネットワーク越しに操作できる。このデモでは、周辺探索で発見した無線アクセスポイントにPINコード入力でアクセスし、自身の所属するネットワークグループに追加デバイスとして参加させている

Windows Rallyでは、周辺機器のUSBケーブル経由でのネットワークへの開放や、無線LAN経由でのアクセスコントロールにも対応する。ここでは、無線LAN対応デジカメに対して一度USBケーブルでPCと接続して設定情報を転送すれば、以後は無線LAN経由で自在にデジカメ内の写真データにアクセスできるようになる。撮った写真をその場ですぐに無線LAN経由で呼び出すことも可能だ。ネットワーク一覧のデジカメアプレットには、デジカメ上のファイル内容がエクスプローラのフォルダ構成で表示されている

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