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2017年末、PC業界に起こりつつある変化とは?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

Windows 7のサポート終了を2020年1月に控え、Windows 10への移行状況はどうなっているのか。また、2018年のPC市場、さらにはその後のトレンドはどうなっていくのか。2017年末に起こりつつある変化をもとに考察する。

 今後数年を見据えたPC業界の大きなテーマと言えば、2020年1月の「Windows 7サポート終了」だ。Windows 7からWindows 10への移行が進み、10のシェアが順調に伸びているかどうかは、PC市場を占う上で重要なデータと言える。


2017年10月に一般公開された「Windows 10 Fall Creators Update」

 そもそも、皆がこぞって新OSへと乗り換えた時代は過ぎ去り、2000年以降はユーザーが一度購入したPCをそのままの状態で使い続けるケースが増えてきた。2014年4月のWindows XPサポート終了が市場の混乱を招いたことは記憶に新しい。

 Microsoftは、Windows 8のアップグレード版を安価に提供したり、思い切ってWindows 10の無料アップグレードキャンペーンを1年間提供したりと、こうした保守的なユーザーを最新環境へと引き上げる狙いの施策を続けてきた。

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 2015年7月に一般公開となったWindows 10では当初この試みが成功し、過去数バージョンのOSと比較すれば、シェアの増加率が高いという成果が得られた。

 一方で、無料アップグレード期間が終了した発売から1年が経過した2016年夏以降、シェア増加率の鈍化が見られたのも当然だ。故に2017年の課題は「どこまでユーザーをWindows 10へと誘導できるか」という部分にかかっていた。では、結果はどうだろうか。


2017年のデスクトップOSシェアの推移(出典:NetMarketShare)

 分析会社サイトのNetMarketShareによれば、Windows 7に根強い人気がある一方、Windows 10のシェアは順調に伸びて30%台に突入している。筆者が聞く範囲で、Windows 10のシェアは全体にNetMarketShareのデータより大きいという情報もあり、全体の3分の1以上はWindows 10で占められていると考えてもいいかもしれない。

 Microsoftは、現在世界で6億台のWindows 10デバイスが稼働中だというが、Windows XPやWindows 8/8.1のユーザーを取り込みつつ、徐々にWindows 7からの移行が進んでいるとみられる。

2018年は世界的にPCの販売がプラス成長に転じる?

 英Financial Timesの10月17日(英国時間)の報道によれば、2018年は久々にPCの販売がプラス成長に転じ、長かった暗黒時代を抜け出す兆候が見られるという。

 基となるデータを提示しているのは米Gartnerで、年率0.8%成長の年間2億6500万台に達する見込みだ。PC市場は2011年をピークに毎年減少が続いており、現在はピーク時から4分の3程度の規模まで縮小している。

 プラスに転じる要因としては主に2つある。1つ目は「企業のWindows 10への移行が進む」ことによるもの。2つ目が「ロシアと中国での需要増」による地域的要因だ。

 前者はWindows 7の延長サポートが2020年1月に終了することをにらんだものだが、「2018年だと少し早くないか」と思われる方もいるかもしれない。

 ただ、MicrosoftやパートナーらはWindows XPでの移行トラブルを教訓に推進プロモーションを前倒しで実施しており、恐らくそのピークが2018年にやって来ると考えている。


Windows 7の延長サポート終了は2020年1月14日。日本マイクロソフトは法人顧客におけるサポート終了の認知度を2018年6月末までに100%まで引き上げることを目指している

 Windows XPのときは、アップグレード要件を満たさないPCの臨時購入といった駆け込み需要によるPC販売のピークが、サポート終了の1年前から半年前の時期に集中した。その反動で、2014年以降のPC販売が特に日本で厳しい状態だった。

 今回のケースではまず移行のピークが2018年に到来し、緩やかに2019年まで続くことになるとみられ、Windows XPほどには極端な動きは見せないと予測する。

 後者の地域的要因については、まずロシアでの需要増加が挙げられる。2017年時点で同地域のPC市場成長率は5%が見込まれており、これは2018年まで続いていくとGartnerは述べている。

 興味深いのが、この成長を後押ししているのがデスクトップPCという点であり、ノートPCや2in1タブレットなどに比べて積極的な値下げ攻勢が行われた結果、世界的なトレンドと比較しても正反対の形で市場を盛り上げている。

 一方で中国では2017年にPC市場の下落が見られたが、理由の1つはセキュリティ上の理由から、中国政府がWindows 10の利用を推奨しなかった点が大きいとされる。そのため現在、Microsoftは中国政府と対策に取り組み、政府公認版Windows 10の準備を進めており、これがプラスの影響として作用するというのがGartnerの分析だ。

 いずれにせよ、この2本柱が2018年のPC市場を後押しするとみていいようだ。

 2017年の総括を行うには年間のデータがそろっておらず、まだ若干早い時期ではあるが、2017年第3四半期の時点で、PC市場に安定傾向が見られつつあるというのは業界で一致した見解と言える。

 米IDCが10月10日に発表した同年第3四半期のPC市場調査によれば、米国を除く多くの地域で安定または成長に向けた動きが見られたという。米国での落ち込みはノートPCで顕著で、特に在庫整理に伴うメーカーからのPC出荷鈍化がマイナスに作用したようだ。

働き方改革でモバイルノートPCの需要が高まる日本

 一方、先ほどのIDCの調査結果には、「日本のPC市場がWindows 10への乗り換えで好調」という記述がある。特にここ日本においては「ノートPC」+「企業ニーズ」のコンボがPC市場興隆のドライバーになっているようだ。

 電子情報技術産業協会(JEITA)が12月26日に発表したデータによれば、2017年11月の国内PC出荷額は2.6%増の405億円で3カ月連続のプラス、出荷台数ベースでは0.9%増の44万台となっている。

 特にこの月は可搬性に優れたモバイルノートPCが好調で、前年同期比で29.3%の伸びを見せている。企業の働き方改革を推進する上で、時と場所を選ばず作業できるモバイルノートPCの需要が高まっていることが、個人向け需要の不調をカバーしている格好だ。

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