電子海図と“AIS”で夜の御前崎を突破せよ!勝手に連載「海で使うIT」(2/3 ページ)

» 2006年07月05日 21時52分 公開
[長浜和也,ITmedia]

揺れる船で求められる操作性とは

 電子海図とGPSを使ったナビゲーションは、船でPCを使う利用方法としてすでに多くのスキッパーの知るところとなっている。物標に乏しい海上では自分の位置を正確に知ることが重要であり、かつ、なかなか手間のかかる作業であるが、海図にGPSで取得した自分の位置を表示することでこれが非常に簡単にできるようになった。いまや「自分の場所を把握する」のは安価なハンディGPSでもできることであって、電子海図ナビゲーションソフトはそれ以上の「付加価値」が求められることになる。

 電子海図ナビゲーションにおいてまず求められるのが「ルート作成」「航行監視」「航海記録保存」機能となる。それらの機能に付加価値をどれだけ「使いやすく」実装させるかがナビゲーションソフトのポイントとなる。当然、紙の海図よりも「扱いが容易」でなければならない。

 扱いが容易であるためには、「操作がシンプルで」「表示される情報は視認性に優れている」必要がある。揺れることが前提となる小さなプレジャーボートではこれが非常に重要になってくる。アルファマップ2プロでは自船の属性設定(AISで使う船名や行き先などの入力)以外はほとんどの操作をマウスのクリックとサブクリックで完了できる。帆走していて新たにルートを引きたいときや悪天候で最寄りの港の入港航路を設定したいとき、灯質を調べるために灯台のシンボルを指定したいとき、などなどすべてマウスでオブジェクトを指定して次の作業をサブクリックで表示されるコンテキストメニューから選択できる。表示されるコンテキストメニューは指定されているオブジェクトごとに切り替わるので必要な作業がすぐに見つかるあたりも「容易な操作性」を実現するための工夫といえる。

 ハンディGPSなどで用意されている「mark」「MOB」ボタンに相当する「インスタントマーク」「落水マーク」はツールバーのほかにショートカットキーも用意されている。落水マークが海図にプロットされると自分の船から落水マークへの方位と距離を表示する「ディバイダ」(もともとディバイダは二点間の方位と距離を測定するのに使われる汎用ツールとしてアルファマップ2では用意されている)が自動で作成されるため、落水が発生したポイントへ戻るのも確実に行える。

 アルファマップ2プロは表示されるデータの視認性も優れている。詳細なデータは画面右に用意されたタブを切り替えることで表示できるが、ユーザーが必要と思う主な航海データ(時刻や対地速度、針路、ウェイポイントまでの距離と方位など)を海図の好きな場所に配置できる「フロートキャプション」機能も用意されている。キャプションのフォントとサイズも指定できるので、PCのディスプレイサイズやPCと操舵手の距離に合わせて値を識別できる大きさを設定すれば「画面が小さくて見えない」「画面が遠くて見えない」ということは起こらない。

 電子海図ナビゲーションソフトは例えばカーナビソフトと比べて市場が“圧倒的に”小さいためユーザーからのフィードバックも少ない。そのため操作性の改善がなかなか進みにくい、という市場的なハンディを持っている。そういう状況でアルファマップ2プロのユーザビリティは(本船ユーザーが多いとはいえ)汎用のオフィスソフトに負けていないレベルを有している。

 長年PCナビゲーションに取り組んでいるスキッパーには「PCで電子海図を扱えるソフトは動作が不安定」という感想を個人のWebページで紹介しているケースが多い。そのためPCナビゲーションに対して信頼性が持てないと考えるスキッパーも少なくない。各人が使う電子海図ナビゲーションソフトやそのバージョンにもよるが、今回の検証航海では第1レグ第2レグあわせて49時間の航海で動作が不安定になることはただの1度もなかったことを付け加えておきたい。

アルファマップ2プロではほとんどの機能をマウスでツールバーをクリックしたりオブジェクトをサブクリックすることで呼び出せる。画面右に詳細データのリストが表示されるがフローキャプションを使って大きなフォントで示すことも可能だ
アルファマップ2プロにはマウスによる操作をより簡単にするために「EZ Menu」が用意されている。海図を見るのに必要最小限の機能が大きいアイコンで表示される。ここで使える機能をユーザーがカスタマイズできるとさらに使い勝手は向上するだろう

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