中国の貧しい村にITはあるか?山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2006年07月24日 11時39分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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都会にある「辺境の地」城中村にITはあるか?

 発展した大都市の中にも村がある。現在の大都市は、旧市街から市街地が外へ外へ広がったものではあるが、その過程で近隣の集落を飲み込んでいく。その飲み込まれた集落があった場所は、集落の地主が5階建て程度の小さな建物を無計画に建ててしまう。その各階の部屋を貸し部屋や「招待所」と呼ばれる安宿に仕立ててビジネスをする。そこには出稼ぎ労働者や所得のない学生が集う地域となる。こういった地域を“都市の中の村”という意味で「城中村」と呼ぶ。

城中村のメインストリートには屋台が並び、その間を車が縫うように走り、人々が闊歩する

 都会の中心を走る大通り沿いからは、ビジネスビルや中国独特の灰色のマンション、最近建ち並び始めたカラフルな高層マンションしか見えず、城中村の存在には気がつかない。しかし、大通りから細い道をひとつ中に入れば、薄暗くお世辞にも清潔とはいえない城中村が出現する。低所得層が住む場所で治安は悪いといわれている。地元の都市住民ですら近づかない地域だ。

 そこに「IT」は存在するのか調べてみた。城中村には街の中心の大通りで見かけるコンビニやスーパーやPCショップはない。しかし、城中村ならではの風景がある。その城中村の風景を紹介しよう。

蔓延する海賊版CDは100円前後で買えるが、それでも城中村の人にとっては高い買い物。そこでレンタルビデオ屋がある。こちらは1枚数泊で1元(15円)からとさらに安い。TVのない人のために個人用TVを開放している。ナイトパックもあり
TVのない家庭でも楽しめる映画館のような存在。日本でも存在した“街頭TV”に近い

主に家電を直してくれる修理屋。“家電”と書いてあるが依頼すればなんでも手がけてくれる
中国国内なら距離を問わず1分2〜3円と出稼ぎ労働者に好評。IP電話機の先にPCが接続されて通話管理を行う

出稼ぎ労働者が書いた“何でも仕事をするから声をかけてくれ”という意味がこめられた携帯電話番号の落書き。農村からきた出稼ぎ労働者といえども、携帯電話は必須アイテムなのだ

城中村にはお湯が沸かせない家がある。そういった住民をターゲットにお湯を提供する「お湯屋」が存在する
招待所の部屋はベッドだけか、稀にTVがある程度と非常にシンプル。そのため、このような洗濯屋がよくある。そこでは、服のほか依頼すれば靴、鞄、自転車まで何でも洗ってくれる

持ち込まれた厚紙、ペットボトル、空き缶、発泡スチロールに対し代金を支払うごみ回収屋。空き缶、ペットボトル1本で0.1元(1.4円)が相場
家の前に「空き部屋貸します」の板がよくぶら下がっている。このように不動産屋を介さずに直接交渉して契約を結ぶケースも多い

「温水がないので銭湯が利用されている」といいたいところだが、ここでは一緒に湯につかる習慣がないため、あるのは「貸しシャワールーム」にとどまる

 こんな感じの城中村でもPCはある。分かりやすいのは公衆IP電話屋だ。そこにはかなりの頻度でPC置かれている。また、騒がしい城中村でも耳を澄ませばチャットソフト「QQ」のサウンドが聞こえてくる。大学生が家賃の安い城中村の部屋を借りてつつましい暮らしを送るものの、日本人的感覚でいう「一点豪華主義的」買い物でPCを導入して日々チャットなどに励む。農村からの出稼ぎ労働者だけでなく、そういった「PCを所有する学生」のライフスタイルも城中村にはあるのだ。

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