「デザインは生活を変えられる」――日立Priusシリーズの挑戦青山祐介のデザインなしでは語れない(1/2 ページ)

» 2006年09月20日 12時00分 公開
[青山祐介,ITmedia]

幅広いジャンルを手がける日立製作所だからこそできる“Priusの独創性”

ラインアップを一新したPrius Sシリーズ

 こちらの記事でお伝えしているとおり、9月6日、日立製作所のコンシューマー向けPC「Priusシリーズ」がラインアップを一新した。“Prius Sシリーズ”と呼ばれる秋冬モデルは、セパレート型の「Prius Air」と、液晶一体型の「Prius One」、そしてノートPCの「Prius Note」でラインアップが構成される。

 いずれも直線基調のスクエアなフォルムに、黒と濃いシルバーをまとったシャープな印象を与えるデザインとなっている。Prius Oneシリーズで採用されている、スロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブを前面に配した「フロントアクセス」デザインや、地上デジタル放送をユーザー本位でカンタンに楽しめる「Prius Navistation4」といったソフトウェアは、いずれもデザインの視点から生まれた発想だった。

ハードウェアとソフトウェアを同時にデザインする

 「日立製作所 デザイン本部の特徴というのは、日立グループの特徴とも言えるのですが、研究者やエンジニア、リサーチャーといったスタッフがデザインチームのすぐそばにいるんですね。必要があればすぐに呼んで一緒にコラボレーションできるということも含めて、“統合力”というのがウチの強みでしょうか」。

 こう語るのは、Priusのデザインをまとめる日立製作所 デザイン本部 ホームソリューションデザイン部 リーダ主任デザイナーの須曽公士氏。入社以来、VTR、カメラ、テレビ、携帯電話などのデザインを担当後、2000年からPriusシリーズのデザインを手がけている。この須曽氏の言葉を裏付けるためには、日立製作所のデザインに対するスタンスを理解しておく必要があるだろう。

 日立製作所のデザイン部門は、1957年に「意匠研究所」としてスタートしている。当初は家電製品が中心であり家電事業部の一部門という存在であった。その後、対象分野が公共・医療・産業・情報通信機器など、家電製品だけではない分野に広がっていくにともなって1988年には全社研究所としてのデザイン研究所となり、2001年には社長直轄のデザイン本部として独立を果たしている。

最近のデザイン賞を受賞したプロダクト。シェーバーから列車までと実に幅広い

 周知のように日立製作所の事業活動は幅広く、我々に身近な生活家電や情報家電からスーパーコンピューターなどの大型情報機器、エレベーターやエスカレーターなどの昇降機器、さらには鉄道車輌、そして医療機器など社会のさまざまな場所で見つけることができる。デザインの対象もこれらのプロダクトだけでなく、ATMや発券機といった機器に組み込まれるGUIやソフトウェア、コンテンツ、さらにはWebサイト、そして、イベントのプロデュースや監修、プレゼンテーションノウハウの教育と、デザインという概念の広がりに合わせて手がけるジャンルもかなり多岐にわたる。

 「組織的な面でも、他社さんとは違う部分があるように思います。このデザイン本部も従来はインダストリアルデザイン、美術系のデザイン学校を出てきた人材がほとんどでした。それが1990年頃から、多面的視点からのデザイン開発を強化すべく、さまざまなジャンルの人材を採用するようになりました。とくに心理学、情報工学、機械工学、生体工学といった、ユーザービリティーやユニバーサルデザイン、さらにはインタラクションといったジャンルを研究する人材ですね。これらのスタッフは、スペシャリストとして各分野のアイテムを横断的にサポートします。さまざまな角度からトータルでデザインをやっていこうというスタイルが日立製作所 デザイン本部の特徴ですね」(須曽氏)。

日立製作所 デザイン本部 ホームソリューションデザイン部リーダ主任デザイナーの須曽公士氏

 「これだけ多方面の分野を手がけていますが、組織はものすごく少人数です。150人にも満たない組織でこれだけ多くの製品を扱うというのは日立ぐらいではないしょうか。この、人が少ないというのも1つの要因になりますが、デザイナーはプロダクトだけやっていてもダメなんですね。プロダクト、GUI、コミュニケーションを含め、すべての過程で関わりを持つことが重要です。

 今回のPriusを担当した中島はプロダクトはもちろんGUIもインタラクションもできるデザイナーです。どの商品でもそうですが、とくにPCという商品は、ハード面だけじゃなくてソフト面もとても大事だと思います。現在、Priusには『Prius Navistation』という統合ソフトウェアをプリインストールしていますが、それもまさに中島がPC本体のデザインと一緒に手がけていて、ハードウェアのデザインを進めるときに同じようなイメージでGUIもデザインしています。ハードとソフトのデザインを同時に行うことが重要だと考えています」(須曽氏)。

Prius Airの登場がターニングポイントだった

日立製作所 デザイン本部 ホームソリューションデザイン部の中島一州氏

 上記の動きが明確に現れてきたのは2000年以降だという。コンシューマー向けPCとして“テレパソ”を登場させた頃から、ハードウェアとソフトウェアのデザインを切り分けることができなくなり、コンセプト段階からデザイナーが参画するようになる。その代表的な例が、2003年1月に登場した「Prius Air」だった。真っ白なボディが印象的な“情報が自然に流れてきて、眺めるような感覚で情報と付き合うことができる、空気のように軽い感覚で使える生活と一体化したPC”というコンセプトを元に、それに合ったGUIとハードウェアの両方を同時に提案。それが受け入れられ、ラインアップの1つとして加えられたという。このモデルはこのようにコンセプトからハードウェア、GUIのあり方までデザイン本部から提案した初めてのモデルだった。Prius担当デザイナーの中島一州氏はこう付け加えてくれた。

「Prius Airと同時に『Prius Air View』が生まれて、『Prius Navistation』とともに進化しながら同時にハードウェアも進歩して、一緒になってPriusの世界を作ってきました。そういう意味ではターニングポイントと言えるモデルでした」。

2003年に投入されたPrius Airシリーズ(写真=左)。右の画面はPrius Sシリーズに採用されている最新のPrius Navisitation4。その姿は往年のPrius Air Viewをほうふつとさせる
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