シーゲイトは2006年Q2から2007年に投入を予定する新たな製品群10機種を一挙に発表した。1.8インチドライブ市場への参入、ハイブリッドHDD、高MTBFモデル、家電向けモデルなど“HDDが必要な市場ニーズを100%まかなう”という幅広いラインアップを揃える。
その存在が知られてから発表までずいぶんと待たされた垂直磁気記録採用のHDD。待望の新世代Barracudaの詳細を日本シーゲイトが明らかにした。
シーゲイトは、3.5インチHDDとして現状最大容量となる750GバイトHDDの発売を開始した。垂直磁気記録方式を採用し、プラッタあたり188Gバイトの容量を実現する。
SeagateのBarracuda ESは、Seagateの最新型ニアライン向けHDDだ。同社のニアライン向けHDDとしてはNL35シリーズが好評を得ていたが、Barracuda ESはそれに代わる新しいブランドとなる。従来のNL35.2からの大きな違いとしては、ニアライン向けとしてはじめて垂直磁気記録方式を採用し、最大容量が従来より50%アップとなる750Gバイトを達成した点だ。プラッタ1枚あたりの最大容量は188Gバイト、記録密度は130Gビット/インチ2に達する。
また、記録密度の向上にともない性能面も大幅にアップした。Sandra 2007 SR1のファイルシステムベンチマークでもシーケンシャルリードで78Mバイト/秒と、NL35.2に比べて30%も速度が向上し、3.5インチHDDとしてもトップクラスの性能を誇る。
この大幅な大容量化・高密度化は、HDDの新しい技術である垂直磁気記録の実用化によって実現したものだ。垂直磁気記録は、HDDの記録密度および記録容量向上のための切り札として長年研究が続けられてきた。磁性体をヨコ方向に磁化する長手磁気記録に対し、垂直磁気記録では磁性体をタテ方向に磁化することでデータを記録する。後者の方式は原理的に熱ゆらぎ(熱によって磁化方向が変わってしまうこと)による影響が少なく、記録データの安定を図ることができるため、将来的にも大幅な大容量化が期待される。Seagateは、2.5インチHDDのMomentus 5400.3、3.5インチHDDのBarracuda 7200.10と、それぞれのカテゴリで垂直磁気記録方式採用ドライブ製品化しており、技術面の信頼性を考えると心強い。
Barracuda ES(ST3750640NS)の主なスペックは、7200rpmの回転速度で16Mバイトの大容量キャッシュを搭載し、平均シーク時間は読み出し時が8.5ms/書き込み時が9.5msとなっている。インタフェースはSerial ATAとFibre Channelに対応。Serial ATAモデルは、Serial ATA 2.5に準じた3Gbps転送やNCQ(Native Command Cueing)もサポートする。
上記のスペックはいずれも、同社デスクトップPC向けブランドのBarracuda 7200.10と共通だ。実はBarracuda ESのハードウェアは、Barracuda 7200.10がベースとなっており、性能面に関するスペックはすべて共通である。
それではBarracuda ESとBarracuda 7200.10はどこが異なるのだろうか。まずベースとなるハードウェアそのものの品質の違いが挙げられる。すべての工業製品にいえることだが、同一ブランド同一部材を用いた製品であっても、個々の特性にはバラツキが存在し、まったく同じということはあり得ない。もちろん、全てのHDDには厳しい品質テストが行われ、一定の基準をクリアしたものだけが出荷されるわけだが、それでも我々が体感することのできないような、ごくわずかな差異は存在する。Barracuda ESに使われるハードウェアは、通常より高い品質基準をクリアしたさらに上層から選び抜かれたきわめてマージンの高い優秀な製品なのだ。
また、ニアライン向けならではの機能として、Workload Managementという機能が追加されているのも特徴の1つ。これはドライブの温度および動作を監視し、高温になった場合のストレスをドライブが自動的に判断して内部処理速度を段階的にスローダウンさせ、消費電力を抑え、HDDの発熱を下げる機能だ。高温環境下での稼働は一般的に言ってHDDの寿命を大きく縮める原因になるが、これを自動的に回避できるのは信頼性の面で非常に大きい。PCケース内に2台以上のHDDを並べて配置している場合などは、HDDの温度が上がりやすくなるため、特に有用な機能と言える。
ちなみに国内正規代理店を通じて販売されたSeagate製品には、すべて5年間の長期保証が付加される。Barracuda ESに5年保証をうたうだけの裏付けがあることは、上記の例からも納得できるだろう。
ストレージの信頼性という意味では、信頼性の高いHDDを利用することともに、RAIDによる耐障害性の確保にも注目が集まっている。RAIDは複数台のHDDをまとめて1つの仮想ディスクとして扱うことにより、転送性能のアップや耐障害性の向上を図る技術だ。一昔前まではマニア向けの機能というイメージもあったが、前述したようにストレージの重要性は年々増しており、RAIDによる耐障害性の確保は、一般ユーザーにとってもけっして縁遠い話題ではない。IntelやNVIDIAのチップセットが標準でRAID機能をサポートしてきているのもそんな状況を反映したものといえる。
RAIDには性能アップや耐障害性、コストパフォーマンスなど、どれを重視するかによってRAID 0、RAID 1など、いくつかのレベルが存在し、それぞれに得意不得意がある。RAID 0でパフォーマンスアップを狙うのも良いが、大事なデータの保存先であるのならば、データを二重化するRAID 1や、データ復元用のパリティを生成するRAID 5などをおすすめしたい。RAIDシステムでは複数台のHDDを搭載し、同時アクセスするために単体で利用する時よりも放熱に気を使う必要はあるが、だからこそ温度管理機能をもつBarracuda ESならばより安心して利用できるはずだ。
各種RAIDレベルの概要 | |||
RAIDレベル | 必要HDD | コスト | 耐障害性 |
RAID 0(ストライピング) | 2台以上 | ◎(メンバーHDDの合計全容量が利用可能) | ××(メンバーHDDの1台でも故障したらすべてのデータが消失) |
RAID 1(ミラーリング) | 2台 | ×(メンバーHDDの合計全容量の半分が利用可能) | ○(メンバーHDDの片方が故障してもデータはもう片方に残る) |
RAID 5(パリティ付きストライピング) | 3台以上 | ○(メンバーHDDの合計容量からHDD1台分をマイナスした容量が利用可能 | ○(メンバーHDDのうち1台が故障しても残りのHDDからデータ復元可) |
RAID 10(ストライピング+ミラーリング) | 4台 | ×(メンバーHDDの合計全容量の半分が利用可能) | ◎(場合によってはメンバーHDDが2台故障してもOK) |
JBOD(スパニング) | 2台以上 | ◎(メンバーHDDの合計全容量が利用可能) | ×(故障したHDDのデータは消える) |
PCに多数のHDDを格納するスペースがない場合や放熱対策が気になる場合には、外付けのHDDボックス(エンクロージャ)を利用したセパレートスタイルも検討するとよい。eSATAのポートマルチプライヤーに対応した製品なら、ケーブル1本で高速かつスマートな接続が可能だ。HDDを4台搭載してもPCケース内のエアフローを妨げないし、電源容量などを心配する必要もなくなる。
繰り返しになるが、デジタルコンテンツのデータ量が肥大化し、さらなる大容量ストレージが求められている今、その信頼性にも配慮してしすぎるということはない。金銭には代えられないかけがえのないものを失う前に、信頼性の高いHDDやRAIDシステムを検討し、自分なりのベストなストレージシステムを構築してみてはいかがだろうか。そしてBarracuda ESシリーズは、その大きな手助けとなってくれるはずだ。
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提供:日本シーゲイト 株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年10月28日