さて、モバイル用途でどの程度の視聴/録画環境が得られるのか実際にテストしてみた。手持ちのノートPC(レッツノートW4)にちょいテレを挿して、屋外での視聴を試みる。
ワンセグ放送の電波は、地上デジタル放送と同じTV塔から発信されている。遮蔽物や地形の関係があるため、地上デジタル放送推進協会(D-PA)も、厳密なエリアを公開していないが、地デジの受信範囲をめやすに考えてよいだろう。
今回は山手線の車内でワンセグ放送を視聴し、各駅の受信状況を調べた。電車が走り出してから、次の駅に停まるまでに受信できるチャンネルをチェックする。会社からの帰宅時間を想定して、車内が混み合う平日の夕方に実行した。調査時の天候は晴れ。テスト前の予想では、東京圏の放送電波を発信する東京タワー付近にある浜松町辺りがもっとも感度良好で、地理的に離れた池袋駅や巣鴨駅で受信できるチャンネルが減ると思われる。
五反田駅から内回りで出発したところ、品川駅から急激に受信環境が良くなり、走行中も複数のチャンネルが視聴できた。とはいえ、東京タワー近辺の駅でもすべてのチャンネルを受信できる区域はなかった。陸橋の下を通過するさいに放送が断絶するのは仕方ないところだ。このエリアなら移動中のTV鑑賞が十分現実的といえる。
その後、東京駅付近で受信できるチャンネルが急に減り、完全に視聴できなかったり単一チャンネルだけが受信できる環境が新宿・渋谷駅まで続いた。受信しても断続することが多く、めあての番組を視聴したいなら厳しい環境と言わざるをえない。退屈しのぎにTVを“ながら観”する程度ならかろうじて使えるレベルだ。
なお、車中でも停車する直前から受信感度が上がる。プラットホームが屋外の場合は、受信環境の悪かった駒込駅や代々木駅でも複数のチャンネルが安定して視聴できた。ただし東京駅などターミナル駅の構内などは地下に入ることが多く、階段を下る途中から急に受信環境が悪くなる。東京タワーから近い距離にかかわらず受信感度の向上はあまりなかった。
地デジの対応エリア全体から考えれば、東京タワーのお膝元といえる山手線であっても、今回の試用で見られるように受信環境には大きなばらつきがあることが分かる。特に移動中のTV視聴が現実的なエリアはまだ狭い。逆に定位置での視聴は、屋外ならすでに高い実用度を備えているといえる。電車待ちの間にニュースをチェックしたり、公園やカフェなどで番組を観るといったスタイルなら、無理なく楽しめるはずだ。下に各駅とチャンネルの受信状況を掲載したので参考にして欲しい。
ちょいテレを据え置きで使う場合は、高感度アンテナを利用できるため、本体だけで視聴するより大幅に安定した受信が可能だ。川崎市にある筆者の自宅(木造)で調べたところ、本体だけでは神奈川テレビの1局しか受信できなかったが、屋外アンテナを東京タワー側の窓に置くと、神奈川テレビに加えて、MXテレビ以外の都内向けチャンネルがすべて受信できた。雨天でも受信が途切れることはなく、安定した視聴が可能だった。ちなみに横浜にあるTV塔側に屋外アンテナを置いた場合も、同様のチャンネルを受信した。
据え置きなら受信できるチャンネルが安定するため、予約録画が一気に実用的になる。予約録画を実行するには、録画時間にワンセグ(およびインターネット)へのアクセスが不可欠となるが、外出先では電波が届かないことも多い。高感度アンテナを設置した自宅で番組を録画しておき、外出時に暇を見つけて視聴するスタイルが便利だ。
待ち時間や移動中など、自分の都合のよいときに好きな番組を観るなら、録画機能は欠かせない。ちょいテレがあれば、安定した画質でモバイルTVライフが送れるだろう。D-PAによると、ワンセグ放送の発信電波は、今後も改良を重ねていくという。今回の調査で受信感度が悪かった地域も、近い将来、状況が改善される可能性は高い。生活エリアが現在の地デジ受信エリアに属しているなら、導入して損はない魅力的なアイテムといえる。
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