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2006年10月20日 21時00分 更新

CRT vs 液晶ディスプレイ

CRT高画質神話は本当か?──前編 (1/2)

PCのモニタ環境がCRTから液晶ディスプレイに移行して久しいが、古くなったCRTを大切に使い続けているユーザーも大勢いる。理由としては、画質や応答速度を挙げるユーザーが多い。そこで、おもに画質面に重点を置きつつ、CRTと液晶ディスプレイをさまざまな角度から比較してみたい。

 今回から2回に渡って、CRTと液晶ディスプレイの比較をお届けする。

 いまさらCRTと思うかもしれないが、グラフィック系や動画系、ゲーム系の環境を中心に、CRTの需要はいまだに高く、実際に使い続けているユーザーも多い。特に画質面で、液晶ディスプレイよりもCRTのほうが優秀という認識が根強く、CRTから液晶ディスプレイへの買い替えを足踏みさせている大きな要因だ。

 CRTと液晶ディスプレイの画質を基本的な技術面も含めて検証し、液晶ディスプレイに買い替えるべきなのか、それともCRTを使い続けたほうがいいのかを判断してみたい。今回の前編では技術面からの比較、次回の後編で実機を用いた比較を行う。

mk_moriwaki.jpgmk_ueda.jpg 技術的な解説をしていただいたナナオ カスタマーリレーション推進部 商品技術課 課長 森脇浩史氏(左)と同商品技術課 上田陽一氏(右)。森脇氏は以前、CRTの開発・設計を担当した。一方上田氏は、ゲームを楽しむため自宅ではCRTを愛用している

 比較の前提条件としては、ある程度ハイクラスなCRTと液晶ディスプレイを想定する。CRTも液晶ディスプレイも、20インチ以上、UXGA(1600×1200ドット)以上のモデルだ。安価なモデルは画質面のチューニングが甘いため、画質の比較には適さない。

 CRTについては、経年劣化も考慮する。比較においては不利になってしまうが、大画面で高画質指向のCRTは、もはや入手が不可能だ。現在でも使われているCRTは、程度の差はあっても確実に劣化している。液晶ディスプレイへの買い替えを判断するにあたって、より実際のシーンに即した条件を考えた。

CRTの経年劣化に見られる症状

 はじめに、CRTを長期間使い続けていると、どのような経年劣化の症状が出てくるのかを整理しておく。CRTの基本的な構造として、3本の電子銃から発射された電子ビームがCRT表面に塗られたRGBの蛍光体に当たり、そのドットが発光するという仕組みを覚えておいてほしい。

 劣化の症状をざっと挙げると、フォーカスのずれ、コンバージェンスのずれ、「黒」と「白」の浮き沈み、色の均一性の損失、画面の歪み、などがある。高機能なCRTは、こうした現象をOSDで補正する機能を備えているが、劣化が進むと補正しきれなくなる。

フォーカスのずれ

 CRTの画面中央付近と四隅では、電子ビームのフォーカス精度にズレがある。新品のCRTでもズレがあり、経年劣化が進むとズレが大きくなっていく。これは簡単に確認でき、デスクトップアイコンの文字などを画面中央と四隅で見比べてみるとよい。もしくは、表計算ソフトを全画面表示にして、画面内のセル全体を適当な文字や数字で埋める。画面の中央付近と四隅を見て、文字のシャープさを比較すれば、一目瞭然だ。

mk_crtvslcd_focus02.jpgmk_crtvslcd_focus01.jpg 画面中央(左)と画面左(右)に「新しいフォルダ」を表示させたところ。文字のシャープさの違いが一目瞭然だ

コンバージェンスのずれ

 コンバージェンスとは、3本の電子ビームがCRT表面(蛍光体)の1点に収束することをいう。フォーカスと同じく、画面の中央付近と四隅でズレがあり、経年劣化でズレが大きくなる。

 確認方法だが、グラフィックソフトを使って、デスクトップ解像度と同じサイズで背景が黒い画像を作る。そして、50ピクセル間隔くらいで、「白」または「紫」の格子模様(「線」の太さは1ピクセル)を描く。完成したら、この画像を全画面表示にして、画面中央と四隅を見比べてみる。その際に使うのは、画像だけを全画面表示できるアプリケーションがよい(メニューバーやツールバー、タスクバーなどは表示せず、画像だけを全画面表示)。

 ほとんどの場合、画面内のどこかの部分で、格子模様の縦線や横線が太くなっていたり、「線」の左右や上下で色ズレが発生しているはずだ。この現象がコンバージェンスのズレである。

mk_crtvslcd_conv01.jpgmk_crtvslcd_conv02.jpg 太さ1ピクセルの線の太さや色ずれの違い。左は画面中央、右は画面左下。画面左下では線が倍近くに太くなっている

「黒」と「白」の浮き沈み

 CRTの経年劣化に伴って、適切な黒/白レベルが維持できなくなる。黒の場合、潰れ過ぎたりグレー方向に浮く。白の場合は、輝度が低下してきれいな白が出なくなる。これらの現象は、階調が欠落することにほかならない。この症状は、黒から白の無段階グラデーションや、256段階のグラデーションを表示してみれば、すぐに分かる。

色の均一性の損失

 「赤」や「緑」の画像を全画面表示すると、色ムラが見えてくる。新品のCRTでも多少の色ムラはあるが、長い期間使っていると、特に画面の四隅で色ムラが目立つようになる。

画面の歪み

mk_crtvslcd_warp.jpg CRTには画面の歪みがつきもの。劣化するとOSDで調整しても歪みを補正しきれなくなる

 CRTは、画面の周辺を完全な直線にすることが難しい。CRTの経験者ならば、「たる型歪み」や「糸巻き型歪み」などを、OSDで調整したことがあるはずだ。劣化すると、OSDで最大限に補正しても、画面の周辺で見た目の直線が出せなくなる。

 当然ながら、上記のような症状は画質の低下も招く。例えばデジカメ写真を扱う場合、フォーカスのズレが大きくなると、写真のピントが甘いのか、CRTのフォーカスが甘いのかが判断しにくくなる。コンバージェンスのズレと色の均一性の損失が発生すると、画像本来の「色」を再現できない。黒と白の浮き沈みによる階調の欠落も、色を扱う作業においては大きなダメージだ。

 一方、液晶ディスプレイに関していえば、フォーカスとコンバージェンスのズレ、画面の歪みは、原理的に存在しない。黒/白の浮き沈みと色むらは液晶ディスプレイでも発生しうるが、色の均一性はCRTよりも優れている。


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[林利明(リアクション),PR/ITmedia]

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