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» 2006年10月24日 06時00分 UPDATE

山谷剛史の「アジアン・アイティー」:「値切り」ができちゃう中華オンラインショッピング事情 (1/2)

ネット利用者が1億人を越えた中国は当然オンラインショッピングも活況を呈している。そこで人気なのは「中国の風習」を巧みに取り入れたショッピングサイトなのだ。

[山谷剛史,ITmedia]

大都市で浸透したオンラインショッピング

 中国ネットワーク情報センター(以下、CNNIC)の統計によると、中国のネット利用者は2006年6月末の時点で1億2300万人に達している。そのうち26%、約3200万人がオンラインショッピングをしているとCNNICは見ているようだ。3200万人というと中国全人口のわずか2.5%だが、貧富の差が激しい中国における上位2.5%の知識と財力を持つ中国人がオンラインショッピングすると考えれば、これはなんだかすごいことになりそうな予感がする。

 2006年5月にCNNICが発表した中国オンラインショッピングに関する統計によると、ネット利用者のうちオンラインショッピングを利用した人の割合は、上海(18.5%)が最も高く、続いて北京(17.5%)、広州(11.5%)となっている。また、リサーチ企業の易観国際(Research International)と中国最大のオンラインフリーマーケットサイト「淘宝网」が10月10日に共同で発表した統計資料によると、淘宝网の会員数は9月末の時点で2670万人となり、7月から9月までの3カ月間における利用者の平均購入回数は2〜5回、平均購入価格は前年比で倍以上の572元となった。オンラインショッピングの普及率はCNNICの統計と同様に上海が最も多く、次いで北京、広州、深センと続く。

 一方で、深セン、青島、成都などの地方大都市で、オンラインショッピングのWebサイトを閲覧しても実際に購入した経験がない利用者が4割強にのぼる。オンラインショッピング利用の普及は大都市だけで、これから徐々に地方都市に広がっていく余地があることをこの統計は示しているともいえる。

「Webサイトは閲覧したが購入した経験がない」人が多い背景には、中国における運送面での不安やオンライン取り引きが信用できないなど、オンラインショッピングを支えるインフラに不安を感じる人が多いためだ。しかし、筆者は内陸の地方都市から上海に店舗があるオンラインショップのWebサイトを何度か利用しているが、内陸までの長い長い道のりで箱がグシャグシャになったことはなかったし、金だけ払って業者が逃げてしまったとか、送ってきた品物が注文したものと違うということはなかった。あくまで個人的な経験であり、すべてがそうだとは言えないけれど、自分で利用して大丈夫だったことで、それ以降もオンラインショッピングを継続して使うようになったのは事実だ。オンラインショッピングを利用して安全であることを多くのユーザーが経験すれば、中国でも利用率がもっと上がるだろう。

 先ほどの統計データにもあるように、中国でもとりわけ給料が高くモノが集う「北京」「上海」「深セン」「広州」では、ほかの地方都市より製品が大量に流通するため、ファッションブランドひとつにしても、平均給与の低い地方都市よりも安価に販売されるという「逆転現象」が生じている。また地方都市では買えぬ輸入品もこれらの大都市で販売されている。例えば、日本の食材などの「日本メーカーの中国向け製品」はたいてい大都市にしか売っていない。そういう、巨大な購買力をターゲットに商売を展開する大都市の「商人」たちが、中国全土の上流階級が集うオンラインショッピングに進出してきているのだ。

 もちろん中国各地からその土地の特産品を販売するオンラインショップもあるが、前述のCNNICの統計で沿岸部と内陸部でネットの普及率に2倍の差があるという調査結果が発表されているように、内陸の地方都市ではオンラインショップを立ち上げる前に「そもそもネットワークって何じゃ?」という人が殆どという状況だ。それゆえ地方から特産品を扱うオンラインショップを立ち上げる「商人」は少ない。

 このようなオンラインショッピングの利用者が増加するにつれて、キーボードからの入力を監視して記録する「キーロガー」被害も増加した。そのため、中国でオンラインバンキングサービスも提供するいくつかの銀行はセキュリティ対策を講じはじめた。例えば中国4大銀行のひとつで、セキュリティ対策に積極的な中国工商銀行では、2003年から専用のUSBセキュリティキー「U盾」を有償で配布した。同様の製品は、招商銀行でも2006年から有償で配布されている。U盾は日本円で1000円程度と価格が高かったため利用者は増えなかったため、2006年8月からキャッシュカード大のパスワードカードなるものが発行された。このカードは裏面がビンゴカードのようになっており、オンラインバンク使用時に「この場所とこの場所の銀色部分を削って出てきた数字を入力してください」といったメッセージにしたがってパスワードを入力する。1枚のカードでパスワードを1000回入力できるようになっている。

kn_chinetsbnkcrd.jpg 中国工商銀行のパスワードカード
kn_chinetsbnkpas.jpg 214元を工商銀行オンラインバンキングで支払う。パスワードカードのN6とV8を削るように指示される
kn_chinetsbnkpnum.jpg 中国工商銀行のパスワードカードの裏面。指示された場所のシールをはがすと数字が出る。これがパスワードになる

 それでもオンラインバンキングでのトラブルは絶えず、ついには中国工商銀行のオンラインバンキングでの被害者を集め中国工商銀行に訴えるべく「中国工商銀行被害者グループ聯盟」なるサイトまで立ち上がった。この聯盟いわく、工商銀行のセキュリティの甘さが原因で被害にあったので、被害者の体験談を紹介した上で、集団で工商銀行を訴えるというのが趣旨なのだそうだ。

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