「値切り」ができちゃう中華オンラインショッピング事情山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2006年10月24日 06時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
前のページへ 1|2       

「値切り交渉」ができる淘宝网のオンラインショッピングシステム

 中国では「淘宝网」と「eBay」がオンラインショッピングサイトの2強になっている。しかし、2強といっても淘宝网がかなり優勢である。淘宝网は中国産サイト、かたやeBayは全世界に展開する米国のサイトだ。国外のメジャーサイトより中国産のサイトを中国のオンラインショッピングの利用者は選んだ。淘宝网の人気の理由はどこにあるのだろうか。

 淘宝网はオークションとフリーマーケットという2部門で構成される販売システムであるが、その主軸はフリーマーケットだ。淘宝网のシステムは日本のネットオークションとほぼ同様と思っていい。淘宝网では、商品に関する質問などのやり取りに利用できる独自の商談用チャットソフトを用意している。

 支払いは出品者と落札者の話し合いによる銀行や郵便局の振込のほか、淘宝网が仲介する中国の銀行10行のオンラインバンキングにも対応している。オンラインバンキングでの支払いなら前述した銀行のセキュリティシステムが利用できる。

 出品者は個人というより商店というイメージに近く、ひとつの出品ページで何点も販売できる。例えば「愛国者のデジカメABC-01 在庫5点」といった具合だ。出品手数料は無料。ただし近い将来、有料出品になるだろうと、淘宝网上層部は中国メディアに語っている。

 淘宝网の最大の特徴は利用者による「値切り」をシステムがサポートしていることだろう。「購入」ボタンをクリックしたあと「支払」ボタンをクリック、つまり2段階の手順をふむことで、初めて購入に至るのだ。こんな面倒なプロセスを導入している理由が、中国人同士の商談で欠かせない習慣「値切り」のためである。

 例えば、売値が100元の商品を相手が80元で買ってくれるという商談が成立したとしよう。「購入」リンクをクリックしてから、出品者が商品の値下げを行い、100元の価格を80元に修正する。この値下げ処理は第3者からは見ることができない。80元への値下げを落札者が確認したところで落札者が「支払い」ボタンを押して、購入が確定する。このとき、落札者と出品者両者が合意した最終的な価格で淘宝网はデータを記録するのだ。商習慣で「初めに値引きあり」という中国の商習慣を巧みに取り入れたオンラインショップシステムといえる。

 さてその後だが、落札者が「購入」ボタンをクリックしたあと、出品者が商品を配送したら「配送」ボタンをクリックする。その後、落札者の手元に商品が届いたら、支払を確定するため、落札者が自分が契約しているオンラインバンキングの支払い用のパスワードを入力する。この段階でようやくお金が振り込まれるシステムになっている。ステップを細分化して当事者が確認のボタンを押すことで、落札後の取引に問題があったときに、どの段階で問題が起きたのかが分かりやすくなっている。

 落札後、いちいちシステム側に知らせるのは面倒に思えるかもしれないが、中国人は「見知らぬ人を無条件で信用してはいけない」という習慣の中で生活しているので、最後の最後まで淘宝网が問題が起きぬよう面倒を見る必要があるのだろう。だからこそ、中国人利用者が安心してオンラインショッピングを利用できるのだろう。

「出品者は商品を送ったので、届いたら支払確定をしてください」
で、荷物が届いたので支払確定する

 淘宝网では、あらゆるジャンルのものが数多く出品されている(もちろん“合法的な製品”である)。日本「向け」の製品も多数販売されているが、これは、中国人にとって日本製(Made in Japan)はもとより、日本「向け」製品(For sell in Japan only)も、その高い品質からリッチな中国人に人気があるためだ。“日本”をキーワードに製品を検索してみると、モノでないものも販売されていることが分かる。その典型的な例が翻訳サービスだ。100文字で120円(8元前後)で翻訳する権利を販売している人が中国全土でたくさんいるのだ。ほかにもヤフーオークションでの代理出品や代理購入をする権利までも出品されている。

 ちなみに、北京のリサーチ企業は、調査対象のOLやサラリーマンのほとんどがネットオークションの副業を持っており、その7割が将来の生活資金がために行っているという調査結果を発表している。その利益は中国で富裕層の収入といわれる「1カ月で1万元」に迫る人も少なくない。平均給与が大都市で3000元、地方都市で1000元強という状況で本業の倍以上稼ぐようになると、8割の人が本業を辞めてしまうと回答をしている(その調査レポートの最後は「副業は謹んで本業に精を出しましょう」というコメントで締めている)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  5. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. ゼロからの画像生成も可能に――アドビが生成AI機能を強化した「Photoshop」のβ版を公開 (2024年04月23日)
  10. MetaがMR/VRヘッドセット界の“Android”を目指す 「Quest」シリーズのOSを他社に開放、ASUSやLenovoが独自の新ハードを開発中 (2024年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー