それでは、実際のベンチマークプログラムを利用してCore2 Extreme QX6700の性能をチェックしていこう。
SYSmark2004 SEのOffice Productivityは、Microsoft OfficeやWebブラウザ、Adobe Acrobatなどを利用して、オフィスワーカーが文章を作るまでをシミュレートしたベンチマークテストだ。実在するオフィスアプリケーションを利用しているため、ユーザーの実利用環境に近いパフォーマンスを測定できると言われている。
結果はCore2 Duo E6700とほとんど変わらない結果になった。これはある意味妥当な結果といえる。Office Productivityに含まれるオフィススイートやWebブラウザなどはマルチスレッド処理に対応しておらず、マルチスレッド処理と言えばアンチウイルスがバックエンドで実行されるぐらいだ。だから、「クアッドコア」が結果にもほとんど影響を与えていないのは当たり前で、少なくともこうしたアプリケーションを使いことがほとんどと考えられるオフィスワーカーにはCore2 Extreme QX6700もCore2 Duoも変わらないと言える。
SYSmark2004 SEのInternet Content Creationは、Adobe PhotoshopやPremiereなど実在するコンテンツ作成ソフトウェアを利用して、コンテンツを作成し、最終的にWebサイトを作るまでをシミュレートするベンチマークソフトだ。コンテンツデータの編集をする場合の性能の目安になる。Core2 Extreme QX6700の結果は、Core2 Duo E6700を明らかに上回っている。こうしたコンテンツ作成系のアプリケーションにはマルチスレッドに対応しているアプリケーションが多く、クアッドコアのメリットが出やすい。ただし、デュアルコアのCore2 Extreme X6800とは同じ結果になっている。これは、Core3 Extreme X6800でクロックが速くなって得られたパフォーマンスのアップとCore2 Extreme QX6700でコアが増えて得られたパフォーマンスアップ分がほぼ等しかったためと考えられる。
TMPGenc 4は、代表的なエンコードソフトウェアで、今回は6312フレームのMPEG2をMPEG4 AVC 3Mbpsに変換する時間を計測してそのフレームレートを計算した。こうしたアプリケーションはクアッドコアのメリットがもっとも出やすいものといえ、Core2 Extreme X6800、Core2 Duo E6700を大きく上回る処理能力を発揮していることが分かる。これはマルチスレッド処理に対応しているCineBench 2003でも同じだ。結果はCore2 Extreme X6800、Core2 Duo E6700を上回っている。ただし、同じようにマルチスレッドに対応しているLameではなぜかCore2 Duo E6700と同じ程度の結果になっている。こちらはLame側が処理できるスレッド数に制限がある可能性もあるので、今後さらにチェックしてみる必要があるだろう。
最後に3Dゲームでの性能も比べてみよう。ここで唯一Core2 Extreme QX6700の結果が突出できたのは3DMark06のCPUテストぐらいで、3DMark05、DOOM3、FarCry、Final Fantasy XI Official Benchmark 3 Version 1.0では、Core2 Duo E6700とほとんど結果が変わらなかった。これは、現在の3Dゲームのほとんどがマルチスレッドに対応しておらず、3DMark06だけが唯一対応しているためだ。
CPU | Athlon 64 FX/X2 | Core2 Duo/Pentium XE 965 | Core2 Extreme/Core2 Duo/Pentium XE |
チップセット | nForce 590 SLI | Intel P965 | Intel 975X |
マザーボード | ASUS M2N32 Deluxe | D965LT | D975XBX |
メモリ | DDR2-800 | DDR2-800 | DDR2-667 |
メモリモジュール | PC2-6400(5-5-5) | PC2-6400(5-5-5) | PC2-5300(5-5-5) |
容量 | 1GB | ||
グラフィックスチップ | NVIDIA GeForce 7800 GT | ||
ビデオメモリ | 256MB | ||
ビデオドライバ | ForceWare 91.03 | ||
標準解像度 | 1024x768ドット、32ビットカラー | ||
HDD | WesterDigital WD360 | ||
フォーマット | NTFS | ||
OS | Windows XP Professional+ServicePack2+DirectX9.0c |
以上のような結果から、Core2 Extreme QX6700の本来の性能を発揮させるためには、マルチスレッドに対応したアプリケーションが必須であることがよく分かってもらえると思う。逆に言えば、対応している製品が少ないいないオフィスアプリケーションや3Dゲームをメインで使っているユーザーがCore2 Extreme QX6700を選択する理由は、いまのところ見出せない。ただ、3DMark06のCPUテストでCore2 Extreme QX670の結果が突出していたように、3Dゲームに関しても今後マルチスレッドに対応したタイトルが増えていけばCore2 Extreme QX6700の性能を生かすことができるようになる可能性があることは付け加えておきたい。
では、どんなユーザーがこのクアッドコアのCPUを必要とするのだろうか。ずばり、マルチスレッド処理に適しているエンコードなどのソフトウェアを多用しているユーザーであれば、Core2 Extreme QX6700を導入する意味は大きいだろう。そうしたユーザーであれば1台のマシンで倍近い処理が可能になる計算になるだけに、効果大きい。
現時点では正式発表前であるので価格は不明だが、通常インテルのエンスー向けCPUは999ドルに設定されることが多い。今回もそのレンジになる可能性が高いのではないだろうか。なお、OEMメーカー筋の情報によれば、インテルは2007年の第1四半期にCore2 Quadのブランドでメインストリーム向けクアッドコア製品を投入する。こちらはクロック周波数は2.4GHzとやや低くなるが、価格はCore2 Duo E6700(現在500ドル前後)の+300ドル程度に設定される見込みであるという。お買い得なクアッドコアを探しているのであれば、こちらを待つ手はあると思うが、価格差があまりない可能性が高いので、クアッドコアが必要なユーザーであればとくにその必要はないだろう。
なお、現時点では、Core2 Extreme QX6700をサポートするプラットフォームはIntel 975Xのみで、Intel 965シリーズではサポートされない。ただ、NVIDIAは、Core2 Extreme QX6700も利用できるインテル向けチップセット「nForce 680i」をまもなく投入する予定であることを明らかにしている。そちらは、PCI-Express x16を2つ備えるなど、ゲームユーザーにも満足できる仕様になっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.