インタビュー
» 2006年11月15日 09時45分 UPDATE

898グラムに秘めた思い:“現在持てる全ての技術をつぎ込んだ”――ソニー「VAIO type G」開発者は語る (1/4)

12.1インチ液晶搭載のモバイルノートPCで世界最軽量をうたう「VAIO type G」。ビジネスモバイルPC市場に切り込むソニーの自信作はどのようにして生まれたのか、開発者に聞いた。

[前橋豪,ITmedia]
tm_0610typegi01.jpg VAIO type Gは11月27日から受注が開始される

 11月1日に発表された「VAIO type G」は、ソニーが満を持してビジネスPC市場に送り込んだモバイルノートPCだ。1024×768ドット(XGA)対応の12.1インチ液晶ディスプレイを搭載したノートPCでは世界最軽量という、約898グラムの“軽さ”を実現している点が最大の特徴になる。さらに、薄さ、長時間のバッテリー駆動、堅牢性、デザイン性も追求しており、モバイルノートPCとしての完成度は非常に高い。

 今回はそんなVAIO type Gが製品化されるまでの経緯や、軽量化、堅牢化を達成できた理由を知るため、ソニー VAIO事業本部 エリア事業推進部 B2B事業室 室長の花里隆志氏と、ソニーイーエムシーエス 長野テック VAIO設計部 type G プログラムマネージャーの林薫氏に話を伺った。

 なお、VAIO type Gのレビュー記事はこちら、発表会の模様についてはこちらを参照してほしい。

日本のビジネス市場に最適な製品を目指して

tm_0610typegi02.jpg 左がソニー VAIO事業本部 エリア事業推進部 B2B事業室 室長 花里隆志氏。右がソニーイーエムシーエス 長野テック VAIO設計部 type G プログラムマネージャー 林薫氏

――VAIO type Gは、これまでのVAIOと違い、ビジネスPC市場でシェア拡大を狙う戦略的なモバイルノートPCとのことですが、開発の経緯を教えてください。

花里氏:ビジネス市場にVAIOが入り込んでいくためには、どのような製品が最適なのかを最初に議論しました。当社は既にVAIO type BXというA4タイプのビジネス専用モデルを発売しており、CTOでの販売もある程度支持をいただいていました。今回はこれを拡大するということで、改めてビジネス市場を調査しました。そして調査を進めていき、お客様の声を聞いていくと、会社で一括して購入するような標準機以外に、明確な導入意図を持ち、導入した製品のベネフィットを気にされる層が少なからずいらっしゃることが分かりました。つまり、ビジネスモバイルです。そこで、ビジネスモバイルに特化しようと開発を開始しました。もちろん、前提としてソニーはモバイルに強いメーカーであり、その強みを生かすということもあります。

――ビジネスモバイルに特化したノートPCを開発するうえで、最も多かった顧客の要望は何ですか?

花里氏:ビジネスモバイルでいちばん大事なこととしてお客様がおっしゃられるのは「価格」ですが、これは単に安ければよいというのではなく、目的にあった商品があり、ベネフィットに対して相応の価格が設定されているということでした。まずはそこを考慮しつつ、要望として圧倒的に多かった「軽さ」にこだわりました。あとは「バッテリー駆動時間」と、昨今注目を集めている「堅牢性」について、しっかりアピールできるものを作ろうと考えましたね。本体をちょっと厚くすれば、堅牢、軽量化しやすい(薄くする場合は、補強材などを使わなくてはならないため重くなる傾向がある)のですが、薄さとデザイン性というこだわりを捨てず、追求していくことにしました。こうして、クラス世界最軽量、最長時間駆動バッテリー、しかも薄くてカッコよいものを作ろうということになったのです。

――ビジネスモバイルと言ってもいろいろな形状が考えられますが、XGA(1024×768ドット)対応の12.1インチ液晶ディスプレイ搭載のサイズを選んだ理由は?

花里氏:携帯性と操作性を考えた場合、10.4インチの液晶ディスプレイで問題ないという声も聞きましたが、12.1インチが最小限の大きさで使い勝手もよい、という調査結果が出たからです。液晶パネルのサイズを4:3にした理由は明確で、ビジネスユーザーは大半の方がまだワイド画面を望んでいない、もしくはワイド画面を認知していない状況だからです。VAIOをビジネス市場でスピーディーに認知してもらうため、現状に合わせて4:3にしたということですね。

――具体的にどのような顧客を想定しているのでしょうか?

花里氏:明確な導入意図で購入される部署というのは、外を出歩くことが多い職種の方。たとえば、外出の多い営業マン、保険外交員、製薬会社のMR、コンサルタント、そういった方をターゲットにしています。

――開発にあたっては、こうした職種の方にリサーチをし、その結果としていまの形になったわけですか?

花里氏:ある程度はそうですね。要望を聞くのと同時に、いまのPCに対する不満点を挙げてもらい、それを何とか解消しようと開発しました。

tm_0610typegi03.jpgtm_0610typegi04.jpg 開発にあたっては企業1300社を調査し、モバイルPCの選定時に重視する機能・性能を明確化した(写真=左)。ビジネスユーザーが利用するさいに感じるストレスを解消する要素を調査により抽出した(写真=右)

――これまでソニーはVAIO type B、VAIO type BXといったビジネスユースのモデルを手がけてきましたが、その成果をお聞かせください。

花里氏:細かい数字は申し上げられませんが、一定の成果はあります。それまではビジネス専用モデルがなかったため、ビジネスユースのお客様からは購入対象として認知されていなかったわけですが、専用モデルを作ることで、直接ソニーとやり取りしていただける法人のお客様が増えました。

――12.1インチ液晶ディスプレイで1スピンドルと2スピンドルの2モデルがあり、似たスペックのビジネスモバイル機では、松下電器産業のLet's note T/Wが売れていますが、ここからシェア獲得を狙うわけですね?

花里氏:高付加価値ビジネスモバイルの市場はまだまだ拡大の余地があります。我々は他社に競争を挑むというより、そこの市場に入っていっしょに盛り上げていく、市場を創造としていく、という気持ちで製品を投入しました。

林氏:ユーザーから見た場合、1社が頑張っている市場よりも、レベルの高い数社がお互いベストを尽くした製品を出している市場のほうが魅力的だと思います。今後は、お互いを高めあっていくような関係でやっていけたらいいですね。

tm_0610typegi05.jpg VAIO type Gの投入を基軸に、VAIO事業全体における法人向けビジネスの売上比率を2009年に30%まで引き上げることが目標

――何年後にはシェアをどれだけ確保するといったような目標はありますか?

花里氏:シェアについては申し上げられませんが、VAIO type G投入後に法人向けPCの売上を毎年50%ずつ上乗せしていき、2009年にはVAIO事業全体における法人向けビジネスの売上比率を30%にまで引き上げるというのが目標です。国内に関しては、コンシューマ市場が非常に強かったのですが、海外ではB to Bが強い地域もあります。今後、国内でもコンシューマ、ビジネスの2本柱で行こうという強い意志を持っています。

――今回、ビジネス向けとコンシューマ向けのチャンネルで販売されますが、販売の比率はどれくらいですか?

花里氏:ビジネス販路が中心になると思います。比率についての数字は申し上げられません。

――海外にVAIO type Gを投入する予定はありますか?

花里氏:まずは日本のビジネス市場を開拓していこうという企画意図から生まれたモデルなので、まずはそこからです。海外の投入予定は、まだお話できる段階ではありません。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.