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» 2006年12月05日 11時00分 UPDATE

後藤重治のPC周辺機器売場の歩き方:第6回:「欲しいときが買いどき」は本当か(後編)

前回は、PCおよび周辺機器メーカーを3つのタイプに分け、製品の「買いどき」を探った。今回は、新製品発表のタイミングとはあまり関係のない「買いどき」について見ていこう。

[後藤重治,ITmedia]

「タイプB」「タイプC」メーカーの買いどきはいつか

 前編は、PCと周辺機器メーカーを3つのタイプに分け、製品の「買いどき」を探った。結論としては、在庫コントロール能力がある「タイプA」のメーカーは「新製品の発表直後」を狙うべきで、それ以外の「タイプB」「タイプC」のメーカーについてはそれらの時期とはあまり関係がない、という内容であった。

 今回は、「タイプB」「タイプC」のメーカーを中心に、製品の「買いどき」について見ていくことにしよう(なお、「タイプAにタイプB、タイプCってなんだっけ?」というときは、前編で復習しておこう)。

メーカーの決算時期を狙う

 PCと周辺機器の買いどきとしてズバリ狙い目なのは「メーカーの決算時期」である。どの業界でもそうだが、メーカーや卸業者は決算前に倉庫の在庫を減らすことに懸命になる。卸価格がそのままでは販売店の興味を引くことはできないので、決算のタイミングに合わせて卸価格を「どぉーん」と下げ、受注数を増やそうとする。従って、対象メーカーの決算時期を知ることにより、価格変動のタイミングをうまくキャッチし、欲しい製品を安く入手できる可能性がアップするというわけだ。

 具体的にみていこう。仮に、2月になってすぐに、とあるメーカーの製品を欲しくなったとする。もし、そのメーカーの決算時期が3月末なのであれば、3月中旬くらいまで粘れるなら粘ったほうがいい。そうすればうまく値下げのタイミングにぶつかり、お買い得な価格で購入できる可能性があるからだ。逆に、決算時期の直後に欲しくなったのであれば、粘らずにすぐ購入しても問題ないと思われる。

 この法則はPC、周辺機器メーカーに限ったことではなく、国内外問わずおそらくどの業界にも当てはまると言える。ただ、きちんと在庫数をコントロールしているメーカーであれば、処分対象となる在庫そのものがなくなっているはずなので、この法則は通用しない。むしろ過剰在庫を発生させがちな「タイプB」「タイプC」のメーカーが、この法則に当てはまりやすいはずだ。タイプAのメーカーに上記の法則が通用するとすれば、社内でも自治権が与えられがちな、直販サイトのアウトレットコーナーくらいだろう。

利益度外視の特価品が出るのも決算時期

 決算時期を狙うことについては、別の理由もある。

 一般的に、メーカーの営業部門には「売上」と「利益」という2種類の目標が課せられている。もし決算直前になって、利益目標はおおむね達成しているが、売上目標にはあと一息という状況であれば、たとえ利益がゼロであっても売上アップのために製品を安値で出荷しようとする場合がある。こうした場合は、現役バリバリの製品であっても一時的に特価扱いで安く供給されるので、買う側としては非常に狙い目である。

 量販店や通販サイトで、ごく稀に「現行製品が限定○台で大幅値引き」となっているのは、こうしたケースである場合が多い。台数を限定にする理由は、決算時期が終わったあとも利益ゼロの価格で売られてはかなわないので、あくまでも一時的にするという理由によるものだ。もっとも、これはお買い得品を入手するには有効な方法だが、特定の型番を狙って購入するにはあまり向かない。狙っている製品が偶然放出されれば儲け物だが、確実に入手できるとは言い難い。正直なところ、運次第だ。

 いずれにせよ、これら2つの理由で、メーカーの決算時期は狙い目ということになる。ちなみに、これらの法則を知った上で、メーカーが投入する特価品をずっと観察していると、メーカーが現在どのような状況に置かれているかが分かって面白い。また、株主の視点で見れば、決算シーズンの特価品のラインアップから、いずれ発表される決算の傾向を先んじて知ることも不可能ではない。

「BCN AWARD No.1」と特価品の関係

 もう1つ、これはかなりマニアックな方法だが、特定のメーカーの特定ジャンルの製品は、11月下旬から12月にかけて安くなる傾向がある。ここでキーワードとなるのは「BCN AWARD」だ。

 現在、国内のPC本体や周辺機器の販売数ランキングを発表しているリサーチャーの中で、もっとも知名度が高いのはBCNが主催する「BCN AWARD」である。細かくカテゴライズされた中でメーカー別、製品別に売上台数ランキングを集計し、毎年1月に発表するというのが、この業界の恒例行事である。

 このBCNランキング、とくに各カテゴリのシェアNo.1というのは、メーカーにとってひとつのステータスである。製品のパッケージやホームページ、カタログなどの媒体に「BCNシェアNo.1」といった文言やロゴが記されているのを目にした人も多いはずだ。BCN AWARDでのこうした「シェアNo.1」は、メーカーにとってもプロモーションに効果的な文言として利用されており、中には年明けのBCNの発表を待たず、中間集計で自らがNo.1であることをプレスリリースで速報するメーカーもあるほどだ。

 さて、前置きが長くなったが、BCN AWARDで言うところの「シェア」というのは、「販売台数」であって「金額」ではない。どれだけ多くの台数が売られたかという点だけが問題であり、それらの製品がいくらの価格で売られたかについては、BCN AWARDに限って言えば関係ない。つまり、メーカーにとって赤字になる激安価格であっても、とにかく多くの台数を全国のBCN対象店舗で売り切ってしまえば、ランキングでの順位は一気にアップする可能性があるわけだ。

 だいたい話の流れが読めてきたと思うが、上位2社が激しいシェア争いを繰り広げているカテゴリでは、毎年ラストスパートの時期になると、上に記したような方法で特価商材を対象店舗に投入し、ランキングの追い込みをかける場合がある。この「ラストスパートの時期」というのが11月下旬から12月にかけてであり、これらの時期は、販売台数アップを狙った特価品が販売店に投入される可能性があるのだ。

 こうした場合に「鉄砲玉」となる製品は、現行品のひとつ前のモデルであることが多い。いかんせん数を稼ぐことが目的で、しかもPOSを通す=セルアウトしない限りBCNのデータには反映されないので、それなりにえげつない販売価格になる。漁夫の利ではないが、消費者にとっては非常に狙い目といえる状況になるわけだ。

 もっとも、こうした状況になるためには、いくつもの条件が組み合わさる必要がある。まずBCNのランキングで二強に相当するメーカーであること、さらに二強のシェアが秋の時点で拮抗していることが条件である。二強でないメーカー、つまり3位と4位のメーカーがこういった戦略を取る可能性はまずない。仮に下位のメーカーが上のような戦略を取ったところで、シェアNo.1が取れなければ、宣伝コピーとしてはまったく効果がないからである。

 もし、初めて購入しようと思っているジャンルの製品が、上位2社のシェア争いとなっているのであれば、上記の時期を狙うといい。入門用としてはピッタリな型落ちモデルが、驚くほど安く入手できる可能性がある。蛇足で恐縮だが、これはBCNランキングの集計対象店舗だけが対象となる話であって、それ以外の店舗やメーカー直販サイトでは一切恩恵を被ることはできない。BCNランキングの集計対象店舗を知りたければ、BCN社のサイトや、該当店頭で配布されているフリーペーパー「BCNランキング」を確認するとよいだろう。

単価が高い製品や価格変動の激しい製品こそ見極めを

 2回にわたって、PCおよび周辺機器の買いどきについて見てきた。単価が安い製品や価格変動が少ない製品については「欲しいときが買いどき」という考え方も間違いではないだろう。しかし、単価が高い製品や価格変動の激しい製品については、上記のような知識を持っておくことで、購入した直後に売価が劇的に安くなってガッカリ、という悲劇を防ぐことができる。前回と今回の記事が、そうしたユーザーの一助となれば幸いである。

後藤重治氏のプロフィール

大手PC周辺機器メーカーでマーケティングや販促・広報を担当していたのも今は昔。余談だが、シグマAPOシステムが先日発表した「ごろ寝リターンズ」のキャンペーンサイトの充実ぶりは驚愕である。あのサイトやプロモーション映像の制作にかかった費用を考えると、製品単体できちんとペイできるのかどうか、他人事ながら心配になる筆者であった。


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