解禁された高速PLCでシアワセになれるか?――パナソニック「BL-PA100KT」コンセントから世界へ飛び立つ(2/2 ページ)

» 2006年12月25日 08時00分 公開
[織田薫,ITmedia]
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アダプタの設置は距離による減衰とたこ足配線に注意

ベンチマークテストの環境。マスターは「同一コンセント」と記述しているコンセントに接続している。ターミナルのたこ足配線を行ったのは、同一部屋と記述しているコンセントだ

 ここではマンションの一室にBL-PA100KTを設置し、通信速度を検証してみた。接続環境は右図の通りだ。ターミナルのアダプタをマスターと同じコンセント、同じ部屋の別コンセント、他の部屋1〜3のコンセントと接続場所を変えながら、通信速度を計測した。マスターは常に「同一コンセント」と記述しているコンセントに接続している。参考までに、100BASE-TXの有線LANとIEEE802.11g(AES暗号化)の無線LANにおける同じ部屋でのテスト結果も併記した。また、「同一部屋」と記述しているコンセントに電源タップを接続し、ターミナルと別の機器をたこ足配線した場合の通信速度も計測している。たこ足配線したのは、こたつ、ドライヤー、携帯電話充電中の充電器(FOMAおよびau)。たこ足配線での利用は推奨されておらず、どれだけ速度が減衰するか興味深いところだ。

 速度の計測には、ヒューレット・パッカードのNetperfを利用した。Netperfは、ネットワークのベンチマークを行うソフトウェアで、データをメモリ上に展開するため、HDDの影響を受けずにスループットが計測できる。今回は一般的な通信で利用されるケースを想定して、通信プロトコルはTCPで計測した。テストには、CPUにXeon 2.4B GHz(533MHz/512Kバイト×2)、チップセットにIntel 875P、メモリにPC2700の2Gバイト(512Mバイト×4)を搭載したデスクトップPCをマスター側、ノートPC「ThinkPad X60」をターミナル側に接続した。

 以下がテスト結果になるが、PLCは分電盤の構成や電力線の配線状況、距離などによって通信速度が減衰するため、同じような環境で設置してもパフォーマンスが大きく異なる可能性がある点は注意してほしい。

左が接続するコンセントを変更しながらのテスト結果。右がターミナルとほかの機器をたこ足配線した場合のテスト結果。グラフの値はいずれもマスター側からターミナル側の通信速度を測定した結果だが、ターミナル側からマスター側への通信速度もほぼ同様だった

 同一コンセントおよび同一部屋のコンセントを利用した場合は、公称値通りの値が出ている。ただし、同一コンセントや同一の部屋でPLCを利用するケースはまれだと思うので、参考値として見てほしい。また、ほかの部屋で速度を計測してみると速度低下が認められた。今回のテスト環境における結果では、無線LANと同程度の速度が出ているので、実用的にはまったく問題ないと思われる。ちなみに無線LANは、他の部屋で最低18Mbps程度まで減衰が見られた。

 マスターとターミナル間の通信速度をアダプタの機能で計測してみたところ、いずれも30Mbps以上だった。もう少し細かなチェックを行えるとよいのだが、30Mbps以上の速度が出ていれば実用的に問題ないという判断だろう。

 一方、推奨されていないたこ足配線による通信では、携帯電話の充電でもっとも影響が出た。ベンチマークテストの結果は3回以上実施した値の平均値だが、数回のテストで速度が安定しないという現象も見られた。ドライヤーやこたつも同様にテストを行ってみたが、今回の検証では通信速度に影響がでなかった。ただし、利用するドライヤーや機器によっては影響が発生する可能性はあるので、やはり可能な限り推奨されている環境で利用したい。ちなみに、同社では電気ノイズが発生しやすい電化製品には、ノイズフィルターを付けることをおすすめしている。電気ノイズが発生しやすい機器としては、携帯電話を含む各種充電器、ドライヤー、掃除機、電気ドリル、調光機能付き照明器具、タッチランプなどが挙げられている。

環境に応じた無線LANとの使い分け、共存が導入のポイント

 BL-PA100KTはアダプタが2つ同梱されたスタートパックで、実売価格は2万円前後だ。写真で見ると、ブロードバンドルータと同じぐらいの大きさに感じられるが、実際には一般的なブロードバンドルータの半分程度の大きさで、じゃまにならない。導入方法も非常に簡単で、テレビやHDD/DVDレコーダなど、無線LANを利用できない機器を接続したい場合にはうってつけの製品だ。リビングと別室にデスクトップPCがあり、これらを有線LANコネクタで接続したいといったケースにも便利だろう。

 ただし、登場直後の製品だけにユーザビリティが低いと感じる部分もある。アダプタには、イーサネットのコネクタが1つしか用意されていない。マスター側はイーサネットの口は1つでよいが、ターミナル側は複数の機器を接続する可能性があるので、後続製品ではハブの機能を搭載してほしいところだ。また、アダプタをコンセントに直接差し込むのではなく、ケーブルを利用しなければならないのも少し不便に感じた。できれば、コンセントに直結できるウォールマウントプラグなども用意してほしい。

 無線LANをすでに構築している場合、無線LANイーサネットコンバータを利用すればBL-PA100KTを購入するのと同じぐらいのコストでLANを拡張できる。利用方法が簡単で設定ミスによるセキュリティの問題が発生することの少ないPLCを選択するか、製品の完成度が高い無線LANイーサネットコンバータを選択するか悩むところだ。ただし、現状で無線LANの速度が出ないという環境では、PLCを導入すれば速度の問題を解決して快適なLANを構築できるかもしれない。一戸建て住宅などの場合、各階にPLCアダプタを設置し、1階のみ無線LANのアクセスポイントを接続するといった併用も有効だ。冒頭で述べたように、ノイズの問題に関する議論が続いている点は気になるが、PLCは家庭内のネットワーク配線を容易に変更・拡張できる新しい手段として、今後注目の技術と言える。

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