分解したEVDプレーヤーを組みなおしてEVDビデオを再生してみた。ハイデフ画面は既存のDVDに比べてきれいであるが、これは予想していただけにさほど感激しない。むしろ、EVDがライバルとするHD DVDやBlu-rayがDVDでできなかった「再生中のチャプター選択」などで改善されたのに、DVD並みのEVDは「次世代の高品位フォーマット」としては一歩遅れていることになる。
ちょっと「しょんぼり」したところで、DVDとVCDを再生してみた。新科のプレーヤーはハイデフにアップスケーリングが可能で、その映像画質の美しさはようやく高級機を彷彿とさせてきた。中国製の低価格DVDプレーヤーと比べるとそのクオリティの違いは映像に興味のないユーザーでもすぐ判別できる。実際、筆者も機械に興味のない複数の中国人に見せてみたが、高齢の人でも「これは違う!」といわしめたほどだ。
EVDを「ハイデフ時代の次世代メディア」と見てしまうと「えー、こんなものなのかね」程度の感想であるが、DVDやVCDの再生には驚かされた。以前、筆者が中国で購入した低価格DVDプレーヤーは、しばしばデコード処理が追いつかなくなるほどで映像も酷いものだったが、今回購入した新科のEVDプレーヤーは最新のチップを搭載しているだけあって処理が追いつかないこともないし映像も綺麗になっている。中国の一般消費者が昔購入した低価格DVDプレーヤーから乗り換えれば「さすがEVD」と思うだろう(ただし、真実は“次世代EVDはすごいっ”ということではなく、“最新のチップはすごいっ”ということなので、EVDプレーヤーとしてそれでいいのか、という疑問は残るのである)。
EVDは海賊版対策をしていることが中国政府のいう最大の特徴となっている。しかし、従来のDVDにたいしてはリージョンフリーである(ただし、ヨーロッパ向けのEVDプレーヤーはDVDであってもリージョンフリーでない)。EVDプレーヤーで外国で販売されているDVDコンテンツがガンガン見れるということは、「EVDの方針としては中国のEVDコンテンツだけはしっかりとガードしたよ」と取れなくもない。
以上のように、DVDに限っていえば「ガンガン」見れるはずの筆者が購入した新科製EVDプレーヤーは、一部のDVDタイトルが再生できないため初期不良扱いで交換、交換した本体もDVD-Rに録画したメディアが読めないため再び初期不良扱いで交換した。誠実に対応してくれる店の態度は好印象であるが、それでも初期不良を続けて引いてしまったのにはまいってしまった。裏づけはないので、不良率が高いというよりは「運が悪かった」ということでここは気持ちを収めておきたい。
ところでEVDディスクはDVDとディスクの構造が同じであり、ファイルシステムは光ディスクで共通のユニバーサルディスクフォーマット (UDF) である。ということは、EVDをPCで読むことは可能なのだろうか?
あ、読めちゃった。手持ちのEVDディスクをすべてPCに挿入して確認できた共通のファイル構成は、
というものだ。そのため、普通のDVDプレーヤーでは再生できない。Windows Media Playerでファイルを再生しようとしてもコーデックが導入されていないから当然できない。EVDには、映像コーデックとしてVP5とVP6が、音声コーデックとしてEAC2.0が採用されているはず。念のためコーデックの判別ソフトでチェックしてみた。
ただ、DVDドライブからPCのHDDにEVDメディアのファイルをコピーできてしまうので、違法コピー行為は技術的に難しくないように思える。EVDがうたっている「海賊版対策」というのは、現在の中国ではびこっている「映画館の試写会で撮影された録画映像はEVD向けにリリースされません」ということにすぎないのだろうか。
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