2560×1600ドットの解像度をみんなに──デル「3007WFP」大画面ワイド液晶集中レビュー(2/2 ページ)

» 2007年02月15日 12時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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 3007WFPの価格は発売から1年以上たった現在、デルのWebページで購入できる「スタンダードパッケージ」は22万8000円となっているが、しばしば行われる「キャンペーン価格」になると14万8000円で購入できる。これは、最新の2707WFPよりも安いもののデルの液晶ディスプレイとしては高い部類になる。しかし、「2560×1600ドットが表示できる」「30インチクラスの液晶ディスプレイ」という条件で競合製品と比べてみると、Appleの「M9179J/A」が約25万円台、ヒューレット・パッカードの「LP3065」が約23万円台。バリュークラスのクイックサン「QHD-M30」でも平均価格が19万円弱となっている(2月14日時点の最安値を見ると14万8000円をつけている)。液晶ディスプレイとしては高いが、競合と比べると3007WFPは(キャンペーン期間中なら)最も安い製品ということになる。

 定価で比較した場合、HPのLP3065が競合相手となるが、そのスペックを比べてみると輝度は3007WFP(LP3065は300カンデラ/平方メートル)が優れているものの、反応速度(同じく黒から白で12ミリ秒、グレーからグレーで6ミリ秒)とコントラスト比(同じく1000:1)でLP3065に劣る。なお、業務用途を想定しているLP3065は画像入力インタフェースにDVI-Dコネクタを3つ用意しているなど、そのコストのかけ方は3007WFPとかなり異なっていることを留意しておいたほうがよさそうだ。

 液晶ディスプレイ前面の右下隅に3つのアイコンが用意されている。それぞれ「電源」「輝度+」「輝度−」に使われるもので、ボタンではなくタッチ式のフェザースイッチになっている。用意されているのはこの3つだけで、ほかの液晶ディスプレイで見られる「OSD呼び出し」「コントラスト」「イメージモード呼び出し」などの機能は持っていない。OSDも用意されているができるのは輝度の調整だけだ。

 ほぼ15万円に届くとはいえ、30インチワイド液晶ディスプレイとしてはコストパフォーマンスを重視した3007WFPであるが、機能を絞ってここまでコストを重視する必然性があるのだろうかと、とくに高機能な大画面液晶ディスプレイに慣れているAV重視のPCユーザーなら疑問に思うかもしれない。HDCP対応のDVD-Iインタフェースを有しているので、3007WFPもAV利用に問題ないが、それでも画質調整の機能はもう少し用意されていてもいいと思われる。

 ディスプレイの基本的な機能以外を省き、「手ごろな価格帯で2560×1600ドットが表示できる30インチ液晶ディスプレイを実現」した3007WFPのメインターゲットはAVユーザーではなくて「ゲームユーザー」だ。NVIDIAやATI(本当ならばAMDというべきなのだろうけれど、ここでは使い慣れている部署の名称を使いたい)などが、新しいハイエンドGPUが登場するたびに、その存在意義として「超高解像度のゲーム環境」という言葉をアピールしている。NVIDIAはより具体的に「X-HDゲーム環境」という単語を使ったのは2006年に行われたCeBITであった。HDと聞くと「1920×1200ドット」という解像度をイメージするがX-HDゲーム環境ではその上の「2560×1600ドット」という解像度が想定されている。

 NVIDIAやATIは解像度が上がることで、ゲーム情報の表示ウインドウを多数表示してもゲームマップの邪魔にならないなどの利便性をアピールする。MMORPGなどで絶大なる効果を発揮するが、ゲームタイトルによってはマップの表示エリアも情報ウインドウの表示レイアウトが固定になっている場合があるので、そういうときはこのようなメリットは享受できない。

 解像度が上がることによってグラフィックスの描画がより細かく精彩になる効果もあるが、これも、例えば20インチクラスの最大解像度である1920×1024ドットの表示と2560×1600ドットの表示による描画を並べてみた場合、細かく描かれたオブジェクトをアップで表示し、かつ、静止した状態でじっくりと眺めるとその違いが分かるかもしれないが、動きの激しいFPSや広いエリアを俯瞰的に眺めるRTS、もしくはMMORPGではなかなか気がつかないかもしれない。

 3007WFPの2560×1600ドットという解像度は大きな意味を持ってくるのはハイエンドGPUのパフォーマンスを体感したいユーザーになるだろう。2006年に登場したハイエンドGPUで「NVIDIA SLI」「Quad SLI」「CrossFire」といったマルチGPU技術を利用する場合、解像度を高くしたときにようやくコストに見合った効果をを発揮し始めるからだ。

COMPANY of HEROESで同じ戦場を2560×1600ドット(左)と1920×1200ドット(右)で表示する。RTSといえど、ゲームタイトルによっては解像度を変えても表示されるマップエリアは変化しない

表示されるマップエリアが変わらない場合、解像度が増えるとオブジェクトの描画が細かくなるが2560×1600ドット(左)と1920×1200ドット(右)を比べると、それほど違いは見出せない

 2560×1600ドットの表示ができる、という一点豪華主義的ポイントが30インチディスプレイの、とくに機能を絞っている3007WFPの存在意義といえる。解像度によってマップの表示エリアが広がるゲームならば、敵の出方や部隊の展開状況の把握が容易になるし、情報表示ウインドウのサイズが自由になっているゲームならば、多数のウインドウを開いておくことで武器の交換や自分の状態の把握がすばやく行える。どちらにしてもゲームプレイにとって大きなプラスになる。そしてベンチマーカーにとっては、最新のハイエンドシステムの効果をはっきりと知ることができる。

 3007WFPはそういう「目的意識がはっきりとしている」ゲームユーザーにとって15万円(ただしキャンペーン価格であるが)で購入できる2560×1600ドット表示可能な液晶ディスプレイとして価値のある製品だ。ただし、HDCP対応のDVI-Dインタフェースを有しているとは言えど画質設定項目をほとんど持たないため、AVコンテンツの視聴目的で使うつもりであるなら、予算的に切実な問題を抱えているのでなければ2707WFPを選ぶのが無難だろう。

(追記:なお、ここで紹介したキャンペーン価格は原稿執筆時点のものだ。キャンペーンでは、その都度異なる価格設定がなされるので注意されたい)

3007WFPの主なスペック
パネルサイズ30インチワイド
表示エリア(H×V)641.28×400.8ミリ
画面解像度2560×1600ドット
最大発色数約1677万色
画素ピッチ0.2505×0.2505ミリ
水平周波数49.31〜98.71kHz
垂直周波数59.91〜59.97Hz
視野角上下/左右とも178度
輝度400カンデラ/平方メートル
コントラスト比700:1
応答速度14ms(白黒間)、11ms(グレー間)
PC入力端子DVI-D(HDCP対応)
ビデオ入力端子
USB端子USB×4
音声入力端子
ヘッドフォン端子
スピーカ
電源本体内蔵
本体サイズ690(幅)×74.4(奥行き)×449.55(高さ)ミリ
重量約16キロ(スタンド含む)
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