国内PCメーカーの5本指に――“新生”マウスコンピューターの未来予想図社長インタビュー(2/2 ページ)

» 2007年03月23日 11時00分 公開
[後藤治,ITmedia]
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体制変更で迅速な意志決定が可能に

――次に、マウスコンピューターの設立について聞かせてください。MCJがグループ戦略の推進母体として経営管理などに特化する一方、マウスコンピューターの分社化は、直販PC事業にとってどういったメリットがありますか?

小松氏 最大のメリットは、組織体制がいままで以上にフラットになったことで、意志決定が速くなったことですね。従来は最終決済を行う際に(グループの)社長もしくは会長まで上っていたものが、PC事業に関しては独立して決定が行えるようになった。ここだけでもレイヤーが1つ減っていますし、分社化と同時に開発や品質管理部門を人員も含めて増強しておりますので、製品開発のサイクルがより短くなりました。また、最新パーツの採用も、以前はまずフラッグシップが先に来て、順次モデルを拡充するといった形でしたが、現在はラインアップ全体で横断的な投入が可能になってきています。短期間で高品質の最新PCを投入できるわけです。

 さらに、開発やマーケティングなどの各部門を岩本町(東京都千代田区岩本町)のオフィスに統合して、円滑なコミュニケーションや情報の共有がしやすい体制になったのも大きな変化として挙げられます。例えば、生産現場から部品の不具合や不良率の上昇といったリポートが上がってきた場合は、早いときで1時間以内、遅くても12時間以内には、その情報を知っておくべきポジションにいる人間が、全員で情報共有できる仕組みが整いました。もちろん、こういったケースでは該当する部門によって迅速に対応できるようになっています。

――開発サイクルの短期化を実現したというお話ですが、直販PCを購入するユーザーにとって最も気になる点の1つが、実際に出荷されるまでの時間だと思います。これについては?

小松氏 確かに“注文してすぐに使いたい”というお客様からの要望は多く、当然ながらこの点も重視しています。例えば、発表直後の新製品であれば従来は納期まで2週間かかっていたものが、いまは1週間であるとか、極力お待たせしないように短期化を図っています。また、Webダイレクトでは積極的に即納モデルを展開していますし、より良い製品をできるだけ早くお届けするというミッションに社全体の強い意志で臨み、今後さらに改善していく努力を重ねているところです。

――御社はBTOが可能なWeb直販という利点を生かして、PCを自作するユーザー層をうまく取り込む形で成長してきたように見えますが、同様に国内PCメーカーの多くが数年ほど前からWeb直販を展開しています。これらに対して今後どのような方向で差別化していくのでしょうか。御社の製品の魅力はなんでしょう?

小松氏 マウスコンピューターの魅力を一言でいうと、用途にあったマシンを追求できるBTOの豊富さ、そして最新テクノロジーをいち早く採用している点ですね。

 例えばデスクトップPCでは、スリム型とミニタワー型でエントリーからハイエンドまで複数のモデルをラインアップし、これらはCPUやメモリ/HDD容量だけでなく、グラフィックスカードなども幅広い選択肢を用意しています。ノートPCでも液晶ディスプレイは12.1インチから17インチまで幅広いフォームファクターをそろえ、細かいBTOに対応していますし、そのほかにゲーム向けのハイエンドPCである「G-Tune」やキューブ型PCの「Easy Cube」というシリーズもあります。

 また、季節ごとにラインアップを一新する国内PCメーカーに比べて、最新テクノロジーを採用するタイミングが早いのも魅力でしょう。さらにいうと、いわゆる自作ユーザーに対しても、弊社の製品は価格面以外でのメリットがあります。実は“本当にハイエンドのPC”は、流通面などから自作するのが難しくなっている。仮に最新パーツを盛り込んだ総額60万円を超えるくらいハイエンドなPCを作ろうと思っても、部材調達で困難であったり、そもそもサポートが自己責任になるのは怖いですよね(笑)。その点、マウスコンピューターなら安心というわけです。

デスクトップPCとノートPCのラインアップ(写真=左/中央)。このほかゲーマー向けのハイエンドPCや、コンパクトなキューブPCシリーズもある。フルBTOに対応した高性能かつリーズナブルなPCをそろえているのが同社の特徴だ。写真は「MDV ADVANCE S」シリーズ(写真=右)

――なるほど。Windows Vistaについてはどう考えていますか? PCの買い替え需要が進むと予想されていた一方で、これを下回っているという報道もあるようですが。

小松氏 弊社に限って言えば好調です。Vista解禁前の買い控えの影響を差し引いても、PCの出荷台数は非常に伸びていますし、実際に2月は単月レコードを塗り替えました。2月でレコードを達成するということはまずないのがですが、それくらい調子はいいですね。

――Vista搭載PCの具体的な製品展開は?

小松氏 まず、Windows Vistaの新しい機能を堪能できるものとして、Home Premium以上のエディションを搭載したPCを主軸に製品を販売しています。やはりBasicではXPから乗り換える訴求力に欠けますから。一方、予想以上だったのがUltimateで、“せっかくPCを買い替えるなら全部入りにしよう”といったお客様が多くいらっしゃいました。

 ほかには、Vista搭載PCの価格設定も大きなポイントです。事前に行った調査では“VistaになるとPCが高価になるんじゃないか”と心配する声が多かったので、従来のラインアップからWindows XPをそのままHome Premiumにリプレースするイメージで、基本的に大きな価格変更がないようにしました。

 例えばWindows Vistaを搭載したデスクトップPCは、Home Premiumが十分に動作する最小構成で5万9850円(Lm-i420B)、高性能なCore 2 Duoを搭載したモデルでも8万9880円(Lm-i420X)と、非常にリーズナブルな価格です。多くの方に新しいOSを体験していただくために、末永く使える最新のハードウェアプラットフォームを安価に提供する、というのが基本方針ですね。さらに今後は、メディアセンター機能に特化したAV志向の強いモデルや、オンキヨー様とのコラボPC第2弾のような展開も考えています。

――最後に、“新生”マウスコンピューターの当面の目標と、将来的にめざしている具体的なビジョンを聞かせてください。

小松氏 お客様の声に耳を傾け、高品質な製品をリーズナブルに提供していく、という基本的な方針はいままでと変わりません。ただ、急速な拡大がひずみを生むことも理解しているので、PC事業を担うマウスコンピューターとしては、サポート面での拡充を継続的に行いながら、各社の連携を強めていきたいと考えています。そうしてグループ全体の共栄を図りつつ、将来的に“国内PCメーカーの5本指”に入る成長を実現したいですね。



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