「Vistaとかいう新しいOSが出たらしいし、うちのパソコンも結構長く使っているから、そろそろ新しいのが欲しいんだけど……。メールとホームページをチェックができて、WordとExcelが使えたらそれでいいよ」というのは、標準的なPCユーザーの本音ではないだろうか。
地上デジタル放送の視聴・録画、Blu-ray Discの再生といった華々しいAV機能や、どんな作業でもサクサクこなせる最新のスペックはあるに越したことはないが、すべての人に必要ではないうえ、それらを盛り込むことで価格は高くなってしまう。大金をつぎ込んで高機能・高性能を追求するより、コストパフォーマンスやデザイン、使いやすさのほうが重要だと考える人は少なくないだろう。そういったニーズをしっかりと踏まえて作られたのが、ソニーの「VAIO type N」だ。
VAIO type Nは、今春よりVAIOのラインアップに加わった新たなエントリーモデルだ。ソニーによれば、PCが携帯電話のように1人1台普及することを見込んだうえで、家庭で使うプライベートPCを想定した製品という。ラインアップは店頭販売向けの「VGN-N50HB」の1モデル展開で、CTOに対応した直販専用モデルは用意されていない。
VGN-N50HBは、1280×800ドット表示の15.4インチワイド液晶パネルを搭載したスタンダードなノートPCだ。主な仕様は、CPUがCeleron M 430(1.73GHz)、チップセットがグラフィックス機能統合型のIntel 943GML Express、メモリが512Mバイト、HDDが80Gバイト、光学ドライブがDVD±R DL対応DVDスーパーマルチドライブと、ごくベーシックにまとめられている。ネットワーク機能は、100BASE-TXの有線LAN、FAXモデム、IEEE802.11g/b準拠の無線LANといった構成だ。
OSは、Windows AeroやAV統合プラットフォームのWindows Media Centerを省いたWindows Vista Home Basicだが、Word 2007とExcel 2007、Outlook 2007がセットになった「Office Personal 2007」がプリインストールされているのは注目すべきポイントだ。基本スペックとVistaのエディションを必要最低限にまとめる一方、ニーズの高いOffice Personal 2007を搭載した構成で、量販店の実売価格は13万5000円前後となっている。VAIOのエントリーモデルらしく、価格競争力は高い。
しかし、よいことずくめではないことも覚えておこう。Windows Aeroへの対応、非対応にかかわらず、やはりCeleron M 430と512Mバイトメモリという基本スペックはWindows Vistaを利用するにはやや力不足だ。Windows XP SP2と比較して、ほとんどの操作で常に一呼吸を置くことが必要となり、ウィンドウの切り替えやアプリケーションの起動などにレスポンスのもたつきがついてまわる。
Windowsエクスペリエンスインデックスを見てみると、内蔵グラフィックスのパワー不足を受けて基本スコアは2.0とふるわなかった。しかし、Windows Aeroが最初から省略されているVista Home Basicを採用したVGN-N50HBでは、グラフィックス(Windows Aeroのデスクトップパフォーマンス)のスコアが低いのは当たり前だ。動作がもたつく大きな原因は、グラフィックス機能より、サブスコアが2.9と低いメモリにある。メインメモリを増設することで、もっと快適にWindows Vistaを利用できるようになるだろう。ベンチマークテストの結果も、全体的に控えめな結果になっている。
なお、購入時の状態では、2つ実装されているSO-DIMMスロットのうちの1つしか使われていないため、メモリモジュールの追加によるパフォーマンスの向上は可能だ。しかし、ソニー直販サイトの「ソニースタイル」で購入する場合でもメモリ容量のCTOメニューは用意されておらず、メモリを増設したければユーザー自身による増設作業が必要になる。メモリスロットはネジを外して底面のカバーを開くだけでアクセスできるため、PC内蔵パーツの増設や交換を経験したことがあるユーザーならば比較的容易に行えるはずだ。とはいえ、VGN-N50HBのターゲット層であるPCの初心者を考えると、自己責任によるメモリ増設はハードルが高いだろう。ソニースタイルでメモリ増設のCTOメニューが用意されていれば、製品の満足度をより高められて親切だったように思う。
また、Windows Vistaでは、USBメモリやメモリカードなどのフラッシュメモリをSuperFetchのキャッシュとして使うことでシステムの応答速度を向上させる「Windows ReadyBoost」機能が用意されているため、こちらの機能を試してみるのも効果的だ。メインメモリの増設と併せて検討するとよいだろう。
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