“タフネス”ノートの新事情──デル「Latitude ATG D620」編山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(1/2 ページ)

» 2007年04月03日 16時30分 公開
[山田祥平,ITmedia]
ノートPCクライアント製品マーケティング本部リレーションシップ製品PMMグループマネージャー、Lattitude製品マーケティングマネージャの堀内朗氏

 デルのノートPCというと、“徹底した標準品の採用による思い切ったコストダウンがなされている”という印象がある。実際、そのポリシーが企業ユーザーのニーズにマッチし、大量導入などの商談成立につながっている。だが、新しくLatitudeのシリーズに加わった堅牢ノートPC「Latitude ATG D620」は、デルに抱いていたイメージからは、ちょっと想像しにくい製品だ。今回は、その背景について、デル クライアント製品マーケティング本部リレーションシップ製品PMMグループマネージャー、Lattitude製品マーケティングマネージャの堀内朗氏に話を聞いてきた。

─―デルが今、なぜ、タフノートPCなのでしょうか。

堀内氏 デルが新しいことをやろうとしているという解釈をしていただいていいと思います。Latitude ATG D620は、通常版のD620と完全な互換性を備えながら、そこに堅牢性を確保した製品です。タフなノートPCというと、日本メーカーの製品では、ボディのたわみで衝撃を吸収するような仕組みになっていますが、ATGでは、高耐久性のテクスチャード塗装によって本体を保護しています。重量も少し重くなりますが、きちんと強度を確保できました。

 今回のATGはA4ワイドノートですが、ユーザーからは、B5ノートの案件でも、丈夫で軽いものを求める声が高いです。つまり、Latitude D420のATG版ですね。現状では、ノートPCのニーズは二極化していまして、CPUとHDD、光学ドライブを含めて妥協をしてほしくないという流れと、とにかく軽いものがほしいという流れの2通りがあります。Latitude D420は、その中間に位置する製品で、かなり高い評価をいただいています。ワールドワイドに比べて、日本では、Latitude D420がユーザーに選ばれる確率がとても高いようです。流れとしてはLatitude D420のATG化も十分可能性があるということです。

─―Latitude D420が日本で人気がある秘密は何でしょう。

堀内氏 Latitude D420は日本の要望が取り入れられているからなんです。その前のモデルになるLatitude X1も人気がありましたが、その一方で、Latitude D410のようなパフォーマンスがほしいという声も高かったです。さらに、Lattitudeの“頭文字Dモデル”がドッキングポートやACアダプタなどを共用できるのに、Latitude X1は専用となっていたため、管理運用が別になるなど法人ユーザーにデメリットを強いてきました。そこで、“いいとこどり”をしてひとつにまとめたのがLatitude D420になったわけです。

 デルはリピートオーダーがとても多いんですね。コストが安いという理由もありますが、米国の開発陣を日本に呼び、ユーザーと同席させていっしょにディスカッションをしていることもその理由になっていますね。そこでの話し合いの成果が着実に製品へ採用されています。想像しにくいかもしれませんが、ホテルの一室で2〜3日かけて、ひざをまじえてゆっくり話をする機会を定期的に設けているんです。

 PCカードスロットが、デルのノートに搭載されているのは、日本のユーザーのためです。日本のノートPCではついているのはあたりまえですね。でも、米国ではもうやめようという話もあります。早くExpressCardに移行しようというわけです。でも、日本のユーザーに聞くと通信だけならExpressCardだけでもいいかもしれないが、製造業のユーザーなどで、測定器などを接続するために、どうしてもPCカードが必要なケースもあるという日本のユーザーからのフィードバックで残ったのです。

パフォーマンスと携帯性能の“中庸”性が日本の企業ユーザーに支持された「Latitude D420」
重さ1.14キロとその軽さを誇った「Latitude X1」は、早い時期から12.1インチのワイド液晶ディスプレイを搭載したデルとしては異色の存在だった

─―堅牢なノートPCも、そうしたニーズから生まれた企画ですか。

堀内氏 実は、丈夫なPCがほしいが丈夫すぎるものはいらないという声があるんです。丈夫すぎることで、コストもかかります。それに、オフィスとそうでない現場で別のPCは使いたくないという意図もあるようですね。オフィス用に比べれば、ちょっと丈夫なもの、「ちょいタフ」というイメージでしょうか。通常のオフィスユースのPCと工事現場で使うPCとの間をとるようなものができないかというニーズがあるんです。

 米国などで、パトカーに積まれて使われるPCや、軍関係などで使われるPCでデルのシェアがとても高くなっています。でも想定している使い方はオフィスだけだったんです。米軍が戦場に持って行って現場で使えるPCはデルにはありませんでした。だから、開発陣も国防総省の規格にあった製品を考えていました。堅牢性のあるPCを出してほしいというユーザーのニーズとあわせて、2年半くらい前からそういう要求が高まってきていたのです。

 さらに、日本では製造業にデルのユーザーが多いのです。本当はもっと堅牢な製品が欲しいのに、やむなくオフィス用のPCをそのまま使っているケースが少なくありません。そこでも、もうちょっと堅牢であってほしいという声が出ていました。そこで、2005年夏のユーザーミーティングで、堅牢ノートPCの企画を考えていると話をしてみたら、ほぼ満場一致で賛同の声が得られました。開発陣は自信満々で米国に戻り、その後、ワールドワイドで通用する製品ができたのです。

 ATGノートPCは常に振動が加わるようなところや、ホコリの多いところで使われることを想定しています。また、建設現場など完全な屋外で使いたいような場合、従来の液晶パネルでは見えませんから、コンバータを2つ実装してバックライトを明るくしました。また、反射を防ぐようにして視認性を高めています。

 完全防水、防塵、塩害から守ることを保証するものではありませんが、堅牢性は十分にアピールできていると思います。 正直なところ、デザイン性はそれほど考えていませんね。これからマーケットの反応をみながら少しずつ修正を加えるかもしれませんが。

 ATGノートPCのベースをLatitude D620にしたのは、これが米国におけるノートPCのスタンダードだからです。作業現場でオペレーションにノートPCを使いたいが、それが終わったらオフィスに持って帰って普通の業務に使いたい。そういうことをトータルで考えると現在のLatitude D620のような14.1インチワイド液晶ディスプレイを搭載したサイズがいいのではないかという判断もあります。また、なるべくコストをかけずにやってみて、マーケットの推移を見てみるという考えもあります。今後に関しては、ATGとしてゼロから開発することも考えられます。

 ATGノートの滑り出しは、米国を含めてとてもいいようです。前倒しで受注を始めているくらいです。ミリタリー、ポリスのほかに、ゴルフの用品を作っているようなメーカーなどからも引き合いがありました。ゴルフ場において、屋外でも使えるノートでスウィングを分析するなどといったことを考えているようです。

Latitude ATG D620は傷がつきにくい塗装やインタフェースパネルのカバー、緩衝材で固定したHDDなどで堅牢性を実現している
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