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2007年05月10日 10時00分 更新

本田雅一コラム:

TVとPC用ディスプレイの統合時代を考える

個人の部屋やワンルームのアパートはスペースが限られているので、フルHDの液晶TVとPC用の高解像度液晶ディスプレイを1台の製品で兼用したい。誰もが思いつく要望だが、それを高レベルで実現できる製品はなかなか登場してくれない。それはなぜか? AVとPCに精通したITジャーナリストの本田雅一がその理由を明らかにする。

 液晶パネルの性能向上と低コスト化、それに多様な映像ソースの高解像化など、様々な要因が1つに重なったことで、ディスプレイの高解像度化が多方面から進んでいる。

 1つは地上デジタル放送やBD(Blu-ray Disc)、HD DVDといったパッケージメディアのハイビジョン化による家庭向けTVの高解像度化。今や売れ筋の中心はWXGAからフルHDへと移り変わろうとしている。

 一方、高解像度化という意味では数年前から進んでいるPC用ディスプレイも、Windows Vistaがワイドアスペクト比のディスプレイを推奨していることをきっかけに、アフターマーケットでの単体ディスプレイはワイドタイプ、それも24インチ前後のWUXGA(1920×1200ドット)が人気を博すようになってきた。

 全く異なる方向からの2つのトレンドだが、しかし、両者の方向性には近く交わりそうなポイントがある。パーソナル用途で映像鑑賞にも、PC用ディスプレイにも使える、ユニバーサルな高解像度ディスプレイである。

似ているようで異なる2つのディスプレイ

 ハイビジョン液晶TVは、ここ数年、フルHD対応がキーワードで進化を続けてきた。しかし、今や32インチクラスにまでフルHD対応製品が登場しており、50インチクラスの大型パネルはもちろん、主流のサイズにはほぼすべてフルHDの選択肢がある。

 ハイビジョン放送はもちろん、高品質なフルHD映像がBDやHD DVDとしてパッケージ販売されるようになってきたのだから、それらの持つ品質を解像度変換なしに楽しみたいと考えるのは当然のことだ。

 32インチクラスにはフルHDは不要との声もあったが、実際に登場してみると、視聴距離の違いもあり、画面が小さくともフルHD化の効果は十分にあることがわかってきた。もちろん、高解像度化に伴って輝度が落ちてしまっては、明暗のダイナミックレンジを表現しきれない。しかし、液晶技術の進歩もあって、家庭用のTVとして十分な輝度レベルを確保しながら32インチまで小型化が可能になってきている。

 一方、PC向けの単体ディスプレイはWUXGA機の人気が高まってきている。フルHDは画素数に変換すると1920×1080ドットになることはご存知と思うが、WUXGA(1920×1200ドット)ならば、フルHD映像をそのまま解像度変換なしに表現することができる。

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 ならば、「WUXGA対応ディスプレイをフルHDTVの代わりにできないだろうか?」ということは、誰もが思いつくアイデアに違いない。PCで使いやすい24インチ前後のWUXGAディスプレイは、さすがにリビングルームには小さい。しかし、個人の部屋でPCとTV映像の両方を一度に楽しみたいユーザーには、ピッタリのスペックと言える。実際、PCにWUXGAディスプレイを接続してTV放送などを楽しんでいるという人もいるはずだ。

 だが、PC用ディスプレイはTVとは異なるスペックが要求される製品である。長時間、近距離から見ても疲れにくく、PCグラフィックスの情報を可能な限り正確に画面上に再現することが求められる。その一方、TVのように、より美しく見せようといった、メーカー側から積極的にアプローチする絵作りは好まれない。

 それぞれの分野を得意とするメーカーも異なり、そもそもユーザー層が重なるとは、これまでは誰も思っていなかった。しかし、PCとTVの両方をサポートできるパーソナル向けの高品質ディスプレイへのニーズは、少しずつ、しかし確実に高まってきている。

2つの異なる製品を統合するために必要なのは?

 高画質なTVを作るための技術というのは、実にノウハウの塊である。もちろん、優秀なチューナーとデジタル放送デコーダー、I/Pコンバーターなどの要素技術が必要である。

 たとえば、単純にアナログハイビジョン入力、あるいはHDMI端子を備えたPC用ディスプレイはいくつかあるが、いずれも映像ソフトを表示するディスプレイとしては高画質を実現できているとは言い難い。アナログハイビジョンの入力回路が十分な性能を持っていなかったり、あるいはHDMI端子が1080pに対応できないといった不備があるものが多いからだ。

 実際には、インタフェースのチップやハイビジョン対応I/Pコンバーターなどを購入して搭載することは可能だろう。しかし、PC用ディスプレイのベンダーは、それらのチップを使いこなすノウハウを持っていない。だから中途半端な製品になりがちで、高コストな画像処理プロセッサを搭載してまでは、「ハイビジョン映像の表示品質を高めよう」、とはならない。

 一方、家電メーカーはPC用ディスプレイのノウハウを持っていない。PCで使われているDVIとHDMIは技術的には非常に近いとされており、実際に同じLSIを用いてHDMIとDVIの両方をサポートすることは可能だ。だが、実際に製品にインタフェースを搭載するとなると全く異なる。

 HDMIは音声を通す機能があるが、映像に関しては、放送波で使われる画面モード(480pや1080pなど)しか信号の仕様が定義されていない。一方DVIは、PC用のアナログRGBを置き換えるものであるため、多様なタイミングの信号を表示できなければならない。さらに接続時に交換する情報の内容も異なる。物理的な信号はほぼ同じだが、その使い方は大きく異なっているため、HDMIへの経験を持ったベンダーも、自社のTVをDVIに完全に対応させるのは難しい。

 つまり、「個人の部屋やワンルームのアパートで、手頃な24インチサイズの液晶TVとPC用高解像度ディスプレイを兼用させたい」という、ささやかな、しかし使い方を考えれば当然のニーズがありながら、これをサポートできる企業は非常に限られていることになる。実際、世の中にすべてを満たす製品がないことからもわかるだろう。

期待されるAV対応のPC用ディスプレイ

 望むような製品が生まれる可能性は2つある。

 1つは、24インチクラスの小型TVにWUXGAパネルを採用すること。しかし、WUXGAパネルは画素ピッチが狭いためバックライトの光を通しにくく、十分な明るさを確保するのが難しい。WUXGAパネルの場合、画面のアスペクト比がTVで標準の16:9ではなく、PCで使いやすい16:10になることもあり、小型TVへの採用は難しいだろう。そもそも、WUXGAパネルはPC用として開発が行われているため、純粋なTV向けには適していないのだ。

 仮にPC用のWUXGAパネルを液晶TVに採用しても、いまや小型と言える24インチサイズで、ハイビジョン放送やBD、HD DVD再生に見合うだけの映像回路とデジタルチューナーを搭載し、魅力的な価格を提示することは難しい。

 もし商品としての可能性があるとすれば、あくまでも高性能・高画質なPC用ディスプレイとして開発。その上で、動画映像を表示することを強く意識した絵作りや機能を盛り込み、AV系の入力端子も中途半端ではなく完全に対応することではないだろうか。PCディスプレイであることが前提ならば、むやみに明るいTV用液晶パネルを使う必要はなく、またチューナーを搭載する必要もない。

 “ディスプレイ”とは、文字通り映像を映し出す鏡である。パーソナルに扱うさまざまな映像――そこには当然、コンピュータの表示も含まれる――を、1つの汎用的に使える高性能ディスプレイで表示したいという要求は、今後も高まってくるだろう。注目点をリビングルームから個人の部屋に移してみれば、そこには新しい製品の可能性が見えてくる。

[本田雅一,PR/ITmedia]

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提供:株式会社 ナナオ
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年3月31日

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