第4回 HD DVDとBlu-ray Discメディアの仕組み新約・見てわかる パソコン解体新書(2/4 ページ)

» 2007年06月01日 11時11分 公開
[大島篤(文とイラスト),ITmedia]

青色レーザーで高密度記録を実現

 HD DVDとBlu-ray DiskがDVDの3倍から5倍以上の大容量を実現できた理由を簡単に説明しましょう。CD、DVD、そしてHD DVDやBlu-ray Diskなどの光ディスクは、レーザービームの照射と反射によって記録と再生を行います。このため、レーザービームを細く絞り込むほど記録密度を高くすることが可能となり、結果としてディスクに記録できる容量が大きくなります。細く尖ったペンほど小さな文字を描けるのと同じ理屈です。

 光は凸レンズによって集光して1つの焦点に絞り込むことができます。しかし、光の回折という現象があるために焦点がぼやけてしまい、焦点はある大きさを持つことになります。その大きさは、光の波長と凸レンズのNA(開口数)によって決まります。波長の短い光を使うほど、開口数の大きなレンズを使うほど、焦点を小さくできます。


 各種の光ディスクの概要と、レーザー光の波長とレンズのNA値は次のようになっています。

<CD>

 1982年に登場したオーディオCDは、民生用の初の光ディスクで、直径12センチメートル。データ記録用のCD-ROMは、650Mバイトから700Mバイトの記憶容量を持ちます。

 CDを読み書きするレーザー光の波長は780ナノメートルで、これは目に見えない赤外線です。また、CD-ROMドライブにはNA=0.45というレンズが装着されていました。焦点のスポット径は1.42マイクロメートル程度でした。

<DVD>

 CDと同じ直径12センチメートルのメディアでありながら、ほぼ7倍の記憶容量を持ち、映画を記録可能としたDVDでは、波長650ナノメートルの赤色レーザーとNA=0.6のレンズを採用することで、レーザービームの焦点サイズをCDの約60%の0.89マイクロメートルに縮小しています。

 DVDのメディアは、厚さが0.6ミリメートルのディスクを2枚張り合わせて作られているのが特徴で、記録層はその真ん中にあります。

<HD DVD>

 HD DVDはDVDの3倍強の15Gバイト(1層)という記憶容量を持ち、最新の動画圧縮技術と組み合わせることでハイビジョン映像の長時間録画を可能としました。レーザービームの焦点サイズは0.51マイクロメートル程度で、これを実現するために波長405ナノメートルの青色レーザーを使います。一方、レンズの方はNA=0.65で、DVDからあまり変わっていません。よりNA値が高いレンズを採用すると、ディスクの構造をDVDとは大きく変えなければならないためです。HD DVDは、従来のDVDメディアの設備を流用して製造することでメディアのコストダウンを狙ったのです。

<Blu-ray Disc>

 Blu-ray Discは、HD DVDと同じく、波長405ナノメートルの青色レーザーを採用します。またNA=0.85という高NAレンズを採用することで、焦点サイズを0.4マイクロメートル以下に絞り込むことに成功しています。記憶容量は25Gバイト(1層)で、HD DVDよりもさらに大きくなっています。

 Blu-ray Discは、高NAレンズを採用するために、カバー層がわずか0.1ミリメートルという特殊なメディア構造が必要となりました。


 光ディスクが大きな記憶容量を実現できる秘密は、記録層にレーザービームを使ってとても小さなマークを書き込めることにあります。物体を自由な大きさに拡大できる装置があったとしましょう。この装置を使って直径12センチメートルのHD DVDディスクを1000倍に拡大すると、120メートル、厚さ1.2メートルという巨大な円盤になります。ちょうど大きな野球場のグランドを覆うくらいの大きさです。ちなみに重量は1万6000トン! これほどまでに拡大しても、その記録層は下の図のような細かさなのです。


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