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» 2007年06月21日 10時00分 UPDATE

山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」:“タフネス”ノートの新事情──松下電器産業「TOUGHBOOK」編 (1/2)

堅牢ノートといったらこのブランドは欠かせない。海外で絶大なる評価と信頼を得た“TOUGHBOOK”の開発現場に“堅牢の真髄”を聞いた。

[山田祥平,ITmedia]

 最近でこそ、多くのPCメーカーがアピールするようになったノートPCの堅牢性だが、その元祖となると、やはり、松下電器産業の製品だ。堅牢ノートPCの代名詞ともいえる「TOUGHBOOK」ブランドは誕生から10年を経過し、揺るぎない地位を築きあげた。今回はパナソニックAVCネットワーク社ITプロダクツ事業部を訪ね、福岡昭徳氏(企画グループ商品企画チーム主事)と北川雅彦氏(テクノロジーセンター機構設計チーム主任技師)に、このジャンルのパイオニアとしての考えを聞いてきた。

kn_syotoughfuku.jpg パナソニックAVCネットワーク社ITプロダクツ事業部の福岡昭徳氏(企画グループ商品企画チーム主事)

─―パナソニックが堅牢ノートPCに取り組むようになった背景とは。

福岡氏 初代のTOUGHBOOKが誕生したのは1996年で昨年10周年を迎えました。海外では過酷な現場に耐えるPCの要望が高かったため、そのニーズに応えるべく企画された製品です。PCはもともとホワイトカラーのツールだったものを、米国でいうところのブルーワーカーに使ってもらえるように(ノートPCに対して)何かできないかというのが最初のコンセプトです。

 初代機のCF-25は、まさに工具箱の外見で、これがPCなのかと思わせる姿でした。でも、道具というものに徹した結果です。ユーザー側もその視点で評価してくれました。「ぶつける」「落とす」は当たり前で、それでも壊れにくいPCを提供し、新たな市場を見いだそうとしたわけです。

 立ち上がりは鈍かったですね。カテゴリーとして確立したのは、その2年後の1998年8月にCF-27が登場するのを待たなければなりませんでした。大幅な改良を加えてフィールドモバイルとして何が大切なのかを追求した製品です。GSMワイヤレスと融合させるために通信カードそのものを内蔵していました。

 市場開拓の印象は「雪が降ったあとに足跡をつけていく」という感じでしょうか。開発側の考えを理解してくれるユーザーがたくさんいたんだと実感しています。

 今もその当時も、コンセプトの変化は基本的にありません。やっていることも「ユーザーの要望に応える」ことです。ワイヤレスネットワークの技術が向上してCPUの性能がアップするといった進化に伴なって、開発する側のアイデアも進化しただけのことです。現行機のCF-30は90センチ落下に耐えられますが、それはCF-27の世代から実現しています。ユーザーも現状の堅牢性能で十分と考えているようです。

 オプションとしてクルマに取り付けるためのカーマウンターを用意しているのですが、ユーザーからは10年前のCF-27もマウンタで使えるようにしてくれとという要望も強いです。新製品のフットプリントは従来製品と同じにしておいてほしいということですね。CF-27でTOUGHBOOKがブレイクして、ユーザーがそのまま使ってもらえているような印象です。

 その後の製品で実力は進化してはいるのですが、開発側としては、表面上のスペックを上げることに固執してはいません。それに、これ以上生産コストを上げるわけにもいかないのです。基本的な実力を上げながらユーザーの要望を取り込んでいくという地道な努力を続けていくだけです。

 TOUGHBOOKでは過去に大きなクレームのようなものは起きていませんが、記憶に残っていることはいくつかあります。例えば、タッチスクリーンを普通のボールペンでタップされると、コーティングがはがれて液晶パネルユニットそのものを交換しなければならないことがありました。そのトラブルがけっこう多かったので、次の機種ではプロテクト用のシールを追加して、ボールペンの先で破損してもシールを交換すればよいようにしています。キーボードをペンで叩く使い方も多いようです。こちらはキートップがはじけ飛んでしまうので、そこも“ペン先タイピング”を想定した仕様を導入しました。

北川氏 あのときは、キーの1つ1つをベースのフレームで盛り上げて囲うような感じにしました。こうしておくと外れにくいのですよ。CF-28の途中からそういう仕様にしています。CF-27で“タフ”というイメージが定着していたのですが、現在マグネシウム合金を取り入れている液晶の後部と前部は、当時のモデルではまだ樹脂を採用していたなど、微妙に設計が異なっていました。落下耐性のスペックでいうと今より劣っていたのです。“基本的な実力の向上”というのは、そうした部分の改善の積み重ねです。

kn_syotoughkita.jpg パナソニックAVCネットワーク社ITプロダクツ事業部の北川雅彦氏(テクノロジーセンター機構設計チーム主任技師)

─―ここまでの堅牢性はいらないという声も聞こえてきているようですが。

北川氏 落下耐性に関していうと、通常のノートPCは底面だけ耐えられますがTOUGHBOOK系は全方向の落下を想定して設計されています。

福岡氏 普通のPCだと机の上から落としてしても大丈夫とかこぼしたコーヒーに耐えられるとかの程度ですね。しかも、それは開発するときには想定していないアクシデントです。でも、TOUGHBOOKは違います。荒っぽく扱われることを前提にして作られているのです。

北川氏 ピックアップトラックの荷台に裸で投げ込まれるんですよ。そりゃ、外装も痛みます。でも、シートを貼って対策したり、塗料を改良して対応したりと改良するうちにクレームは減っていきました。

福岡氏 こうした地味な改良を積み重ねた結果、今まで情報武装されていなかった現場でTOUGHBOOKが受け入れられるようになってきたわけです。もし、そうした現場で壊れてしまったらそのままその現場では使われなくなるでしょうけど、今も使われているということは、きちんと期待に応えられてきたということなんですね。だから、この堅牢性は必ず維持しなければなりません。

kn_syotoughmizu.jpgkn_syotoughraka.jpg ITプロダクツ事業部の備えられた落下試験機と防滴試験装置。防滴試験ではIPX4、ならびにMIL-STD-810F Method 506.4の条件を満たす環境を再現できる

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