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» 2007年06月28日 09時00分 UPDATE

元麻布春男のWatchTower:限りない“膨張”を強いられるフラッシュメモリメーカー

Intelは巨大だ。1人で何でもできるし1人で何でもやっつけてしまえる。しかし、その巨人でもフラッシュメモリ事業では1人で生き残ることはできないのだ。

[元麻布春男,ITmedia]

 5月22日、IntelとSTMicroelectronics(以下STM)に投資会社であるFrancisco Patnersを加えた3社で新会社を設立、IntelとSTM両社のメモリ事業を新会社へ移管すると発表した。Intelは自社のNORフラッシュメモリ事業を、STMはNORとNAND両方のフラッシュメモリ事業を新会社へ移管する。NORフラッシュメモリ事業においてIntelは首位のSpansionに次ぐ業界2位、STMは3位のシェアを持っているとされており、両社のシェアを合算すると新たな業界首位の会社が誕生することになる。

 ただ、両社は2005年12月以来協業関係にあり、携帯電話向けNORフラッシュメモリについて、互いがセカンドソースになれるよう、ハードウェアとソフトウェアのインタフェースを統一してきた。新会社の設立はセカンドソースの消滅も意味するため、新会社のシェアが合算値のまま残るとは限らない。このあたりはHDDメーカーの合併などにも見られる現象だ。

 またIntelとSTMは次世代型不揮発メモリとして、相変化型メモリの一種である「Ovonics Unified Memory」について共同開発を行ってきたが、これも新会社へ移管される見込みだ。IntelはOvonics Unified Memoryの最初の製品として、NORフラッシュ互換の128Mビット品を年内にも出荷すると見られていた。

 一方、NANDフラッシュメモリ事業だが、STMが新会社へ移管するのに対し、IntelはMicron Technologyとの間の合弁事業(IM Flash)を現状のまま維持するとしている。汎用品の色彩が強いIntelのNANDフラッシュメモリに対し、STMのNANDフラッシュメモリ事業は、携帯電話などの特定アプリケーション向けの性格が強いため、直ちに競合が生じるわけではないが、将来的にはその可能性が残る。

 さて、今回の事業統合は、両社の生産施設を含む大規模なものだ。STMが新会社へ移管する生産設備には、シンガポールの8インチファブであるAKM8、Catania(イタリア)の12インチファブであるM6が含まれると言われる。M6は、工場の建設は完了したものの、NORフラッシュ事業が赤字に陥ったため、操業を見合わせていたものだが、新会社へ移管されることで量産が始まる可能性が出てきた。

 Intelが新会社へ移管させる生産設備は、イスラエルのFab 18だ。イスラエル国内にIntelの主要事業拠点はHaifa、Jerusalem、Petach Tikva、Yakum、Lachish-Kiryat-Gatの5カ所があるが、Fab 18のあるLachish-Kiryat-Gatは生産の中心となっており、Intelにとって45ナノメートルプロセスルールに対応する3番めの工場となるFab 28もここに建設中だ(ちなみにモバイル向けCPUの開発拠点であるIslael Development CenterはHaifaに本拠を置き、YakumにもCPUの開発センターがある)。

 このFab 18は、1999年に0.18ミクロンプロセスルールによる量産を開始した200ミリウエハの工場である。当初、Fab 18はNORフラッシュの生産設備として計画されたものの、市況によりマイクロプロセッサの量産に変更になった。その後、2001年からチップセットの生産に転換したのち、2005年第4四半期に90ナノプロセスへ転換、生産品目をNORフラッシュに再変更するという、数奇な運命(?)をたどった工場である。今回、新会社へ移管されることで、他社へ売却されるIntel初めての工場ということになった(コロラドのFab 23についても売却の意向はあるが、まだ買い手が見つかっていない)。Intelはニューメキシコ州のFab 11についても夏までに閉鎖する予定にしてなど、旧世代の8インチファブの絞り込みが進行している。

 現在、IntelはFab 18以外に、アイルランドのFab 10とFab 14でNORフラッシュの生産を、Santa ClaraのD2でNORフラッシュ関連の開発を行っているが、これらの施設は移管されない。200ミリウエハのFab 10/14に関する長期プランは明らかにされていないが、当面はここで生産されるNORフラッシュを新会社へ供給することになる模様だ。D2についてはIntelの本社に隣接しており、物理的に分離することが難しい、という事情もあると見られる。

 プログラム格納用、とくに携帯電話向けが主力となっているNORフラッシュの市場は、上位メーカーでさえ赤字に苦しむほど激しい競争にさらされており、AMDと富士通を母体とするSpansionに続き、IntelとSTMも事業統合へと動いた。現状を打破するには、さらなるスケールメリットの追求が求められるものの、単独で巨額の投資を行うことは難しい、ということなのだろう。製造プロセスの微細化は、そろそろ次世代不揮発メモリへの投資も必要としており、この点からも1社単独での生き残りは難しいとも考えられる。いずれにしても、NORフラッシュ市場はますます上位による寡占化が進むことになり、IntelとSTMに続くSamsung以下のメーカーがどのような動きを見せるのか、注目されるところだ。

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