ハイビジョン解像度(HD)のビデオ編集は、現在でも高性能なデスクトップPCでなければ作業の快適さが望めない、数少ない用途の1つと言える。こうした状況にあって、ソニーはVAIOブランドの最高峰に位置付けられるデスクトップPC「VAIO type R master」を“HDワークステーション”と銘打ち、HDビデオ編集を行なうユーザーに向けたシステムであることを明確に打ち出している。
2007年夏モデルのVAIO type R masterは、店頭モデルとしては事実上1モデルしか用意されていない(19インチワイド液晶ディスプレイの有無が選べるのみ)。これは、直販のVAIOオーナーメードモデルがラインアップの中心にあるためで、クアッドコアCPUやBlu-ray Discドライブといった最新のハードウェアは店頭モデルには盛り込まれず、VAIOオーナーメードモデルでの選択肢として用意される。
そこで今回は、いわば“素の”VAIO type R masterと言える店頭モデルで、どれだけのことができるのか、19インチワイド液晶ディスプレイとのセットモデル「VGC-RM52DL9」を使って、HDビデオ編集の機能を試してみた。
ビデオ編集に入る前に、PC本体の仕様を簡単に紹介しよう。VAIO type R masterは、PC本体をメインユニット(CPU、メモリ、HDD、グラフィックスカード搭載)とアクセスユニット(光学ドライブ、各種インタフェース搭載)の2つに分離した「ツインユニット・コンセプト」を採用。2つのユニット間は約1.8メートルの専用ケーブルで接続され、各ユニットは縦置きでも横置きでも設置できる。この構造により、レイアウトの自由度と拡張性を高めているのが特徴だ。
マザーボードを内蔵したメインユニットは、外形寸法が430(幅)×440.5(奥行き)×140(高さ)ミリ、重量が約15キロと大きめ。前面からアクセスできる4基の3.5インチHDDベイを備えており、HDDベイユニットはレバー操作で簡単に着脱することが可能だ。前面にはCPU冷却用の12センチファンと拡張カードスロット冷却用の8センチファンが搭載されているが、騒音を低減するノイズ減衰パネルが表面に取り付けられており、動作音はそれほど大きくない。
アクセスユニットは、光学ドライブ搭載用の5インチベイ2基や各種カードスロットを配置している。外形寸法が430(幅)×290.5(奥行き)×64(高さ)ミリ、重量が約6キロと薄型だ。上面は20キロの荷重に耐える強度があるため、大型のディスプレイを重ねて設置することもできる。光学ドライブ用の接続インタフェースはIDEとSerial ATAの両方が準備されており、空いた1基のベイを柔軟に使えるのがうれしい。ユーザーが追加したデバイスは動作保証の対象外だが、将来的にBlu-ray Discドライブを増設するなどの用途が考えられる。
VGC-RM52DL9の基本スペックは、VAIOオーナーメードモデルには見劣りするものの、全体的に高水準にまとまっており、パフォーマンス面の不満はない。OSはWindows Vista Home Premiumをプリインストール。CPUはCore 2 Duo E6320(1.86GHz/L2キャッシュ4Mバイト)、メモリは2Gバイト(PC2-5300対応1Gバイト×2/デュアルチャンネル)、HDDは500Gバイト(250Gバイト×2/7200rpm)、光学ドライブはDVD±R DL対応のDVDスーパーマルチだ。ビデオ編集時のパフォーマンス向上を想定し、2台の250GバイトHDDはRAID-0(ストライピング)に設定してある。
チップセットはIntel P965 Expressを採用し、NVIDIA GeForce 7600 GS(ビデオメモリは最大527Mバイト)搭載のグラフィックスカードをPCI Express x16スロットに装着済みだ。オーディオ機能は、DSD対応の独自サウンドチップ「Sound Reality」を採用するほか、サラウンド音声技術の「ドルビーホームシアター」に対応している。
地上・BS・110度CSデジタル放送用のTVチューナーカードに加えて、地上アナログ放送用のTVチューナーも搭載。地上アナログ放送用のTVチューナーは2基搭載しており、2番組の同時録画もこなす。地上アナログ放送用のTVチューナーカードには、MPEGハードウェアエンコーダのViXS XCode2-Lが実装されており、これが映像入力時の中継ファイル作成に使われる仕組みだ(詳細は後述)。
付属の19インチワイド液晶ディスプレイは、1440×900ドットの解像度に対応している。画面は、低反射処理を行いつつ光沢仕様に仕上げたVAIOおなじみの「クリアブラック液晶」だ。輝度は300カンデラ/平方メートル、コントラスト比は1000:1、応答速度は約5ms(白黒間)で、視野角は上下/左右とも160度となっている。インタフェースはDVI-D(HDCP対応)とD-Subの2系統を持つ。
このように、VGC-RM52DL9は盛りだくさんの機能を備えているが、ここではHDビデオ編集の機能にフォーカスし、映像の入力、編集、出力の手順を見ていこう。
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