第5回 光ディスクの製造工程 その1──スタンパーの製造新約・見てわかる パソコン解体新書(2/3 ページ)

» 2007年07月25日 11時11分 公開
[大島篤(文とイラスト),ITmedia]

スタンパーの製造工程

 それでは、光ディスクメディアの製造工程を順番に詳しく見て行くことにしましょう。まずはスタンパーの製造工程ですが、これはCD、DVD、HD-DVDでは同じです。記録密度が高いBlu-ray Discは、従来の製造工程ではうまく作ることが難しく、新しい製造工程を採用しています。ここではまず、伝統的なCD/DVD用スタンパーの製造工程を1つずつ追って行くことにします。HD DVD用スタンパーも同様の工程で作られます。Blu-ray Discに対応した新しい製造工程については後で解説します。

1.ガラス基板の用意

 直径20センチメートル程度、厚さ数ミリメートルのガラス円盤を用意します。これを専用の研磨装置にセットして、酸化セリウムの微粒子を含ませた水をかけながら精密に表面を研磨します。酸化セリウムは光学レンズの研磨にも使われています。


2.感光膜(レジスト)の塗布

 ガラス基板をスピンコーターという装置に乗せて高速回転させ、その中央部に液状の感光材料を一定量垂らします。すると、感光材は遠心力でガラス基板の全体に広がり、表面張力で均一な厚みになります。次に高温下で乾燥、硬化させると、レジストと呼ばれる感光膜ができあがります。

 このように、ディスクを高速回転させて液体を均一に塗布する方式をスピンコートといいます。スピンコートは、あとでライトワンス型メディアの記録層を形成するときや、Blu-ray Discのカバーレイを作るときにも使われます。また、半導体の製造工程にも利用されています。

 ここで形成されたレジストの厚みが、最終的なピットとグルーブの高さになります。このため、内周から外周まで、ムラのない均一な厚さのレジストを形成する必要がありますが、これが実は至難の技です。スピンコートの回転数、液体の粘性、滴下量にノウハウが隠されています。


3.カッティング

 感光材を塗布したガラス基板をターンテーブルに乗せて回転させ、レーザービームを照射してグルーブのらせん状パターンを露光します。この作業を、昔のレコードの原盤にアナログ信号を記録する溝を彫り込む工程になぞらえてカッティングと呼びます。DVDの場合、グルーブは0.74マイクロメートルのピッチで4万7000回転分、総延長で11.8キロメートルもあるため、カッティングには長い時間がかかります。

 書き込み型の光ディスクメディアの場合は、単純にレーザービームを照射し続けてらせん状にグルーブパターンを書き込むだけです。一方、ROM型メディアの場合は書き込みデータに合わせてレーザービームの照射をオン/オフすることで、ピット列のパターンをらせん状に書き込みます。


4.現像

 カッティングが済んだガラス基板を現像液に浸けると、レーザービームで感光した部分が除去され、グルーブのパターンが現れてきます。

 こうして表面にグルーブパターンを形成したガラス基板は、ガラスマスターと呼ばれます。


5.導電処理

 現像によりグルーブが形成されたガラスマスターの表面に、薄くニッケルメッキを施します。ガラス基板は電気を通さないため、非電解方式でメッキする必要があります。

 ここでのニッケルメッキ処理は導電処理といって、電気を通さないガラスマスターに電気が流れるように加工するのが目的です。次に行う電解メッキのために、この前処理が必要なのです。


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