24.1インチワイド液晶「LCD-MF241XBR」の色再現性を掘り下げるその液晶、正しい色が出ていますか?(2/2 ページ)

» 2007年09月12日 11時15分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]
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LCD-MF241XBRをキャリブレーションする

 ここからは実際のキャリブレーション作業を追っていこう。今回使用したキャリブレーターは、恒陽社グラフィック事業部が販売する「i1 Display 2」だ。LCD-MF241XBRの画質モードは「標準」、色温度は「ユーザー」(RGB個別調整)、ガンマは「2.2」で、それ以外の調整項目はすべてデフォルトに設定してある。

 輝度とコントラスト、色温度のRGBは、キャリブレーションソフトウェアの「Eye-One Match」の中で調整していく。今回はWindows XP環境でキャリブレーションしているため、Windows標準のガンマ「2.2」に設定している。キャリブレーションの手順は以下の写真を参照してほしい。

(1)「i1 Display 2」に付属するキャリブレーションソフトウェアの「Eye-One Match」。簡易モードと詳細モードがあるが、ここでは詳細モードで作業を進める
(2)Eye-One Matchはウィザード形式でキャリブレーションが行えるので、初心者でも迷うことはないだろう。最初に表示されるモニタタイプの設定では「LCD」を選ぶ
(3)キャリブレーション後の目標とする「白色点」(色温度)、「ガンマ」、「輝度」を指定する。輝度は液晶ディスプレイの推奨値である「140」(カンデラ/平方メートル)を指定した。「アンビエントライト測定の実行」は環境光の色温度を測定するオプションだ

(4)環境光の色温度を測定。キャリブレーターに付属のアンビエントライトヘッドを取り付けて、「キャリブレート」ボタンをクリックする
(5)画面中央で、キャリブレーターのセンサー部分を手前に向けて環境光の色温度を測定する。終了後はアンビエントライトヘッドを外す
(6)次はいよいよ画面の測定に移る。キャリブレーターのセンサー部分を、液晶ディスプレイの画面中央に向けて装着する

(7)LCD-MF241XBRのOSDメニューを使用して、輝度、コントラストを手動で微調整する
(8)OSDの各調整値を変更すると、画面の状態をキャリブレーターが測定し、画面上のインジケータに反映する。インジケータのバーが中央に位置するように、OSDでそれぞれの値を調整する
(9)色温度についてもLCD-MF241XBRのOSDを使って、RGB個別の値を調整する。こちらもインジケータのバーが中央に位置するように調整していく

(10)画面にさまざまな調整パターンが表示され、キャリブレーターによる実測が始まる
(11)計測は2〜3分程度で完了するので、LCD-MF241XBRとキャリブレーター、マウスとキーボードには一切触れず、静かに待つ
(12)キャリブレーションの結果。あらかじめ設定しておいた色温度、ガンマ値、輝度の目標値に対して、調整した結果が表示される。この結果はICCプロファイルとして保存できる

 気になるキャリブレーションの結果だが、色温度、ガンマ値、輝度の目標値に対して、ほぼ正確な実測値が出ている。作業結果画面の右上に表示された馬てい形の色度図のうち三角形の内側がLCD-MF241XBRで表示できる色域になるが、高色域パネルを搭載しているだけあって広い色域を確保していることが分かる。

 画面の左上にあるグラフは、横軸がPCからのRGB入力階調、縦軸がLCD-MF241XBRの画面を実測したRGB出力階調を示す(RGBガンマカーブではない点に注意)。入力階調と出力階調はほぼリニアに対応しており、RGBのラインもほぼ一致した。これは、PCから出力された色が、LCD-MF241XBRの画面上でほぼ正確に再現されていることを意味する。

 このクラスのディスプレイでここまでRGBのラインが一致する製品は多くない。以前PC USERでレビューした試作機では画質面が完成されていなかったようだが、今回入手した製品版をキャリブレーターで試したところ、画質の問題は見られなかった。

 計測のあとには測定結果に基づいたモニタプロファイルが作成されるので、これを保存してEye-One Matchを終了する。モニタプロファイルを保存すると、Windowsの「色の管理」に自動的に登録される仕組みだ。

インクジェットプリンタとのカラーマッチングも高精度

写真では実際の表示を再現できていないが、階調性は良好だ

 このようにキャリブレーションしたLCD-MF241XBRは、階調が素直に表現され、トーンジャンプも皆無に近い。ハードウェアキャリブレーションに対応した業務用ディスプレイと比較すると、黒つぶれ、白飛び、色飽和は多少見られたものの、コンシューマー向けの液晶ディスプレイとしてはかなり少ないほうだ。

 続いてこの状態をもとに、インクジェットプリンタとのカラーマッチングを簡単に試してみた。プリンタはエプソンの「PX-G930」で、メディアは純正写真用紙のクリスピアを使用。また、キヤノンのプリンタ「PIXUS iP9910」と、純正写真用紙のプロフェッショナルフォトペーパーも用意した。

 画像の表示と印刷に用いたアプリケーションはアドビシステムズの「Photoshop CS2」だ。印刷した画像は、キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS 20D」で撮影したRAWデータを、Photoshop CS2にてAdobe RGBカラースペースで現像したものだ。Photoshop CS2とプリンタドライバは、正確なカラーマッチングを行えるように設定している。

 実際に各プリンタの出力と画面を見比べたところ、いずれの場合もカラーマッチングは十分満足できる水準にあった。LCD-MF241XBRでは、Adobe RGBカラースペースの画像が持つ広い色域をほとんど再現できるため、Adobe RGB対応の画像を扱いやすい。現時点で標準的なカラースペースであるsRGBに表示を合わせる画質モードがないのはもどかしいが、sRGB対応のディスプレイでは再現できない色を表示できるのは便利だ。

 今回の場合、用紙の色温度よりもLCD-MF241XBRの色温度が若干高いので、画面で見る色のほうが少し青っぽくなったが、ほぼ画面で見た印象の通り印刷が行えた。あらかじめ印刷する用紙が決まっているならば、用紙とLCD-MF241XBRの色温度を合わせたうえでキャリブレーションすることで、より高精度なカラーマッチング環境が得られるだろう。


 以上、LCD-MF241XBRをキャリブレーションディスプレイとして使ってみたが、静止画の基本的な表示性能は高かった。AV入力に比べて目立たない部分とはいえ、フォトレタッチやカラーマッチングを重視するユーザーにとっても魅力的な製品と言える。

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