新カラリオは「小顔」と「美白」の効果あり――エプソンの複合機/プリンタ発表会長澤まさみさんも登場(1/2 ページ)

» 2007年09月21日 03時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]

2007年度は国内シェア50%以上、海外シェア20%以上を狙う

セイコーエプソン情報機器事業本部長の小口徹氏

 セイコーエプソンは既報の通り、9月20日に複合機/プリンタの新製品を発表した。ここでは、同日開催された製品発表会の模様をお伝えする。

 最初に登壇した同社情報機器事業本部長の小口徹氏は、国内外でのコンシューマー向けインクジェットプリンタ市場の動向を紹介。「ワールドワイドでの市場動向は2005年度から微増しており、アジアパシフィック地域での伸びが若干期待できる」とした一方で、「国内市場では、プリンタの買い替えサイクルが長くなったことや、PCの春商戦が不調だったことを受け、2007年度の上期は前年比95.3%とマイナス成長になってしまった」と現状を振り返った。2007年度の下期は、「PC市場は回復基調にあり、プリンタ市場も回復に向かうことが期待できる」との見解を示した。

 国内におけるインクジェットプリンタ市場のシェアは、2005年度より50%をキープしており、「2007年度も50%以上を目指す」との目標を掲げた。海外市場のシェアは、2005年度に20%を超えたが、2006年度は利益重視の方向性を打ち出し、台数は多いが採算が悪いローエンドのラインアップを縮小したことで、一時的に16%まで落ち込んだ。2007年度は「競争力の高い製品が開発できたこともあり、シェア20%以上を狙う」としている。

 コンシューマー向けプリンタ事業における今後の方向性に関しては、これまで訴求してきた「速い」「キレイ」「安心」「カンタン」といったコンセプトをさらに追求し、「マイクロピエゾの技術を生かした強力な商品を開発するとともに、生活シーンでのプリントの機会を増大させる仕掛けを作っていき、プリンタとインクの販売数量も拡大していく」と語った。

ワールドワイドでのインクジェットプリンタ市場規模(写真=左)。国内外のインクジェットプリンタ市場シェア(写真=中央)。コンシューマー向けプリンタ事業における今後の施策(写真=右)

弱点だったモノクロ印刷を高速化、小顔+美白補正機能も用意

 続いて同社コンシューマ機器事業部長の遠藤鋼一氏が、新モデルの詳細説明と技術解説を行った。今回の新モデルを投入するにあたり、以下に示した5つの製品戦略を打ち出している。

(1)Epson Colorブランドの強化

同社コンシューマ機器事業部長の遠藤鋼一氏

 Epson Colorとは、自動画質補正機能の「オートフォトファイン!EX」、耐候性を高めた染料/顔料インクの「つよインク」、プリントメディアの「純正写真用紙」を組み合わせることで、高品位な印刷を実現するエプソン独自の技術だ。

 新モデルのEpson Colorは、オートフォトファイン!EXを強化。撮影シーンの自動判別アルゴリズムを改良し、従来からの「人物」「風景」「一般画像」に、「夜景」が追加され、判別精度が向上した。これにより、「夜景」の暗闇はより暗く、「一般画像」として判別した写真はより明るく補正できるようになっている。

 また、色補正については、従来のトーンカーブ調整を明るさ成分(Y)と色成分(Cb/Cr)に分解するように内部の処理を変更し、肌色の補正精度と色かぶりの補正精度を向上させている。

オートフォトファイン!EXのシーン自動判別に「夜景」が追加された(写真=左)。肌色の補正精度と色かぶりの補正精度を向上させた(写真=中央、右)

(2)「きれいで速い」「簡単で安心」「便利で楽しい」の進化

 「きれいで速い」の進化では、インクヘッド性能の向上と画像処理エンジン「REALOID」の搭載が挙げられる。ヘッドは、「Advanced-MSDT」技術によって打ち分けるインク滴のサイズを従来の1.5〜7ピコリットル範囲から1.5〜11ピコリットル範囲にワイドレンジ化しつつ、駆動周波数を45kHzから60kHzに高速化することで、従来比で約2倍のインク噴射能力を達成したという。これにより、最速設定時の印刷だけでなく、標準設定時の印刷や写真印刷も高速化された。

 次の「簡単で安心」に関しては、操作パネルを左から右に移動しながらボタンを押していくことで印刷が行えるユーザーインタフェースや、Epson Colorによる色補正を液晶モニタでプレビューできる「仕上がりview」機能などが当てはまる。

インクヘッドを新規開発し、噴射能力を向上(写真=左)。「PM-T960」と「PM-A940」は従来機種の「PM-A920」と比較して、最速印刷だけではなく、標準印刷やフォトプリントも高速化された(写真=中央)。独自のユーザーインタフェースなど、「簡単で安心」を実現する機能(写真=右)

 そして「便利で楽しい」という使い勝手を提供するのが、写真写りの向上を目指した「ナチュラルフェイス」機能だ。同機能は「写真は実際の顔よりも0.5〜1.5%太く見える」というエプソン独自の調査結果をもとに、画像データを「記憶している本来の自分の顔」に近づけて印刷することを目的としたもの。先に発表された小型フォトプリンタの「E-720」と「E-520」で初めて搭載された。

 同機能では具体的に、人物の輪郭を自動検出してあごの周辺をスリムに見せる「小顔補正」と、肌の白さを強調する「美白補正」を同時に適用することで、写真写りを改善する。小顔補正と美白補正のレベルは、複合機の液晶モニタ上や、付属ソフト「Easy Photo Print」の画面上、印刷したインデックスシート(フェイスシート)を見ながら3段階ずつに調整することが可能だ。

肉眼と写真で人頭模型を見比べる実験を行ったところ、写真は実際の顔よりも0.5〜1.5%太く見えるという結果が得られたという(写真=左)。補正を行う前のサンプル(写真=中央)と、ナチュラルフェイスによる小顔+美白補正を行ったサンプル(写真=右)。写真全体のアスペクト比を変えることなく、顔の輪郭周辺がスリムに補正され、肌も色白になっている

(3)快適な高速モノクロ印刷

 A4単機能プリンタのラインアップには、モノクロ印刷にこだわった「PX-V780」を用意。顔料ブラックインクの2カートリッジ構成によって360本のブラックノズルを確保(カラー3色は各59本)しており、従来機の「PX-V630」からブラックノズルの数を2倍に増やした。エプソン独自のA4チャートを印刷した場合で、約37ppmの高速出力を実現している。JEITA J1のA4モノクロ文書における印刷速度は、1枚あたり約4秒だ。

 PX-V780は顔料インクのつよインク200Xを採用することで、普通紙コピーの品質や耐水性に配慮しており、モノクロ印刷速度の向上もあいまって、小売店や飲食店などのスモールオフィスでの導入を見込んでいる。

モノクロ印刷にこだわったPX-V780(写真=左)。PX-V780の特徴(写真=中央)。顔料ブラックインクの2カートリッジ構成を採用する(写真=右)

(4)デジタルホームネットワーク対応

 継続販売となる複合機ハイエンドモデル「PM-T990」の下位に位置付けられるPM-T960は、有線LANと無線LANを標準装備し、TVプリンティング機能の「テレプリパ」に対応。赤外線通信ポートを搭載した複合機は、auの携帯電話から有料コンテンツをダウンロードして印刷できるサービス「モバプリ」もサポートする。

(5)デザイン戦略

 複合機の上位モデルはピアノブラックのボディを採用し、リビングに置いた際の周囲とのマッチングに配慮した。顔料インクを採用したエントリークラスのモデルは、フラットなボディとホワイト基調のカラーリングを採用している。

「テレプリパ」と「モバプリ」に対応するモデルを用意(写真=左、中央)。下位モデルのボディデザインが変更された(写真=右)

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