NVIDIA、初のインテル向け統合型チップセット「GeForce 7-Series for Intel」発表シングルチャネルメモリでもAero可(1/2 ページ)

» 2007年09月25日 22時00分 公開
[笠原一輝,ITmedia]

 NVIDIAは9月25日に、開発コード名「MCP73」として開発してきたチップセット「GeForce 7-Series for Intel」を発表した。これは、NVIDIAのインテルプラットフォーム向けとしては初めてとなる統合型チップセットで、DirectX 9世代のグラフィックスコアを内蔵している。インテルプラットフォームにおいて、AMD(ATI Technologies)の統合型チップセットという選択がなくなった今、そのライバルであるNVIDIAの統合型チップセットは、低価格のインテルプラットフォームソリューションの今後を占う意味で、ユーザーから注目を集めることになりそうだ。

インテルプラットフォームに欠けていた本格的な3D性能を持った統合型チップセット

GeForce 7-Series for Intelの最上位モデルとなるGeForce 7150/nForce 630i。ノースブリッジとサウスブリッジが1つになった統合型チップセットだ

 2006年の半ばまで、インテルプラットフォームでコストを抑えるために統合型チップセットを利用してPCを構成する場合、主な選択肢は2つあった。それが、インテル自身の統合型チップセット(従来からのIntel GM965 Expressに、2007年に登場したIntel G33 Express、そして、これから投入される予定のIntel G35 Express)と、当時ATI TechnologiesのRadeonシリーズだ。

 単体のGPUを持たないインテルに比べてATI TechnologiesのRadeonシリーズは、単体GPUの技術をチップセット内蔵のグラフィックスコアに応用していることもあって、3D性能がインテルのそれに比べて総じて高く、3Dゲームでの互換性も優れていることなどから、ゲームも楽しみたいユーザーには“低コストで、それなりのパフォーマンスを発揮できる”とメリットが広く支持を受けてきた。

 しかし、ATI TechnologiesはインテルのライバルであるAMDに2006年に買収された。インテルとAMDの間において、AMDはインテルのバスライセンスを利用できないという取り決めがあるため、従来ATI Technologiesが生産してきたインテルプラットフォーム対応のRadeonシリーズが供給できなくなってしまったのだ。これを受けて、AMDは自社CPU(AthlonやOpteron)向けのチップセットに専念することを決定し、それ以降、インテルプラットフォームで使える統合型チップセットは、インテル自身のそれか、3D性能が高いとはいえない台湾のVIA TechnologiesやSiSの統合型チップセットしか選択できない状況にあった。

 インテルプラットフォームユーザーのみならず、低価格のデスクトップPCラインアップを重視しているPCベンダーからは、ATI TechnologiesのRadeonシリーズに代わる、それなりの3D性能を有する統合型チップセットの誕生が待ち望まれていた。有力なベンダーが2つしか存在しないGPU業界の片方の選択肢がなくなった以上、もう1社に期待がかかっていたのはいうまでもない。そのNVIDIAがユーザーや業界のリクエストに応えてリリースするのが、今回紹介する「MCP73」ことGeForce 7-Series for Intel(以下MCP73)なのだ。

シングルDIMMでVista Premiumを取得できた

リファレンスのMCP73搭載マザーボード

 以上のような経緯から、MCP73の最大の特徴は、単体型GPUとしてはGeForce 7世代に相当する3Dエンジンをチップセットに統合していることになる。NVIDIAのMCP製品グループ プロダクトマネージャのデビット・ラゴネス氏(David Ragones氏)は「インテルの統合型GPUではSecond Lifeに代表されるような“動かないゲーム”が存在する。売れ筋の3Dゲームから30タイトルを選んでNVIDIAが調べたところ、Intel G33 Expressでは37%のゲームが動かなかったが、GeForce 7-Series for Intelでは10%に若干の問題はあったものの、すべてのゲームでプレイできた」と、GeForce 7の持つ3D性能との互換性の高さをアピールしている。

 ただし、MCP73の内蔵グラフィックスコアはGeForce 7シリーズで導入されているすべての機能を受け継いでいるわけではない。例えば、内蔵されているシェーダユニットの構成において、単体型がローエンドでも、2つのバーテックスシェーダユニットと4つのピクセルシェーダユニットを実装しているのに対して、MCP73は1つのバーテックスシェーダユニットと2つのピクセルシェーダユニットの実装にとどまっている。これは、動作クロックが同じなら演算能力が半分程度になることを示している。

 もっとも、GeForce 7シリーズの特徴であるシェーダモデル3.0にMCP73も対応し、DirectX 9.0cをサポートする。また、Windows Vistaの3Dエフェクトを活用したUI「Windows Aero」も動作する。ここで注目しておきたいのが、統合型チップセットであるMCP73のメモリコントローラがシングルチャネルなのに、Windows Aeroに対応可能であるという点だ。

 PCメーカーが、自社の製品でWindows Aeroが動作すると保証するには、マイクロソフトが定めるWindows Vista向けのロゴプログラム(PCケースに貼られているWindowsシールのこと)の要件を満たす必要がある。Windows Vistaでは、Windows Aeroが動作しなくてもよい「Vista Basic」と、Windows Aeroが動く必要がある「Vista Premium」という2つのロゴシールが用意されている。Vista Premiumの要件を満たせば、メーカーはWindows Aeroが動くPCであると胸をはってアピールできるルールになっている。

 余談になるが、PCメーカーにとって、このVista Premiumと呼ばれる要件を満たすことには大きな意味がある。Vista Premiumロゴが貼ってある(貼れるだけのスペックを満たしている)製品はマイクロソフトと共同キャンペーンができるなどの販売に関するさまざまなメリットが供与されるからだ。このため、PCメーカーとしては、できるだけVista Premiumの要件をクリアしたいと考えている。

 しかし、統合型チップセットを採用したシステムでVista Premiumの要件をクリアするには、コスト面で問題がでてくる。というのも、Vista Premiumの要件を満たすには、ビデオメモリの帯域幅が1600MT/秒を超えている必要があるが、統合型チップセットではビデオメモリはメインメモリの一部を共有するため、十分な帯域幅を確保するのが難しいためだ。Intel G33 Express 同G35 Express、同じくGM965 Exressでこの要件を満たすためには、いずれもデュアルチャネル構成にして、メモリを2枚1組で用意する必要がある。

 それに対して、MCP73ではそもそもメモリコントローラがシングルチャネル構成のみなので、メモリは1枚単位で増設できる。このおかげで1Gバイトのメモリを実装する場合でも、1Gバイトメモリ×1という構成が可能になり、512Mバイト×2=1Gバイトに比べてVista Premiumの要件を低コストでクリアできるのだ。少しでもコストダウンをして価格競争力と利益を確保したいPCメーカーにとって、この点は大きなメリットといえるだろう。

 ただし、1000円や2000円の差であれば性能を優先したいハイエンドユーザーにとって、デュアルチャネル構成ができないという点はデメリットになる。従って、自作ユーザーでもコストに敏感な、できるだけ低コストにWindows Aero環境を実現したいと考えるユーザーにこそ意味のある仕様といえるだろう。

NVIDIA MCP製品グループ プロダクトマネージャのデビット・ラゴネス氏
NVIDIAが調査したMCP73とインテルの統合型チップセットで比較したゲームの互換性。インテルの統合型チップセットでは動作しないゲームが少なからず存在したが、MCP73ではすべてのゲームが動作したという
MCP73では、メモリがシングルチャネルでもVista Premiumの要件である1600MT/秒のビデオメモリ帯域をクリアできる

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